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ジャッキー・チェンと勝負する・追撃戦(21)

前回「ジャッキー・チェン/マイ・ストーリー」を見ていたら、そこで主に登場する撮影風景が、シルヴェスター・スタローン、ウーピー・ゴールドバーグと共演した「アラン・スミシー・フィルム」のものだった。

史上最低映画呼ばわりされることもある異色作だが、ああそうかジャッキーこれに出ていたんだったなと思い出した。そういえば、本欄でもまだ取り上げていなかったっけ。サイテー映画好きとしては、やはり見逃せない。

ご存知のとおり、この映画はジャッキー映画ではない。ジャッキーはほんのゲスト出演に過ぎず(それはスタローンもウーピーも同じ)出番もほんのわずか。まぁカメオ出演に毛の生えた程度のもの。

でも考えてみたら、スタローンやウーピーとの「共演」はこれ一本だけの貴重品だし、ほんのチョイ役とはいえ、ちゃんと役を演じている(大スターのジャッキー・チェンという役だが)のだから、やはり無視するわけにもいくまい。

ということでDVDを入手。

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「アラン・スミシー・フィルム」は日本では劇場未公開で、ソフト発売のみ。入手したのはご覧のようにDVDだが、たしかVHSでも発売されていたはず。

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ちなみに、これもよく知られているように、このジャケットデザインは誇大広告そのもの

このデザインは、映画のなかで製作される「トリオ(Trio)」という刑事アクション映画のポスターデザインなのだ。NYPDの刑事三人組を主人公にしたものって設定。「アラン・スミシー・フィルム」そのもののデザインはこんなの。

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いちおう説明しておくと、この映画は三大スター共演の大作ハリウッド映画の製作をめぐるトラブルを描いたフェイク・ドキュメンタリー。アラン・スミシ―(Alan Smithe)とは何らかのトラブルがあった映画監督が、自らの関与を隠すために用いることを認められていた架空名義で、実際に全米監督協会の承認のもとで使用されていた。

製作会社とのトラブルで失踪した監督が映画のマスターネガを持ち逃げしたことから起こった騒動を関係者の証言で再現してゆくという仕組みで、持ち逃げされた映画に出演していたのが、スタローン、ウーピー、そしてわれらがジャッキーというわけだ。なので、彼らは撮影現場のシーンとインタビューシーンだけのゲスト出演に過ぎない。

実際の主演は、製作側を演じるライアン・オニールリチャード・ジェニ、監督(本名もアラン・スミシ―という設定)を演じた「モンティ・パイソン」のエリック・アイドル

で、いろいろあって映画そのものの出来上がりは非常に芳しくなく、おかげで実際にこの映画を監督したアーサー・ヒラーが製作側と揉めて、ほんとうに「アラン・スミシ―」とクレジットされるというシャレにならないのかシャレなのかわからないような事態にもなっている。

とまあ、いろいろ面白い裏話があり、そっちのほうが映画よりも面白いような映画なのだが、そのへんはいずれ別の機会に。

本欄としては、そのいわくつきの映画におけるジャッキー・チェンに触れなければならないのだが、まああまり語るべきこともないんです。

「アラン・スミシー・フィルム」は1998年の作品。ハリウッド作品でいえば同年の「ラッシュアワー」と2000年の「シャンハイ・ヌーン」の間くらい。1995年に「レッド・ブロンクス」のヒットで本格的にアメリカに進出したジャッキーのハリウッド初期の作品なのだが、ここですでにスタローン、ウーピーと並ぶくらいのステータスを獲得しているのは指摘しておきたい。こんな映画だけど。

正直、映画のなかでのあつかいは、まだまだステロタイプのカンフースターで、英語がうまくないこととかにフォーカスされていて、アクションスターとしての魅力はほとんど発揮されていない。だから期待して見るとがっかりすること請け合いだが、逆に、ここがハリウッドでのジャッキーのスタート地点だったことがうかがえる。

この作品のジャッキー映画としての価値は、まぁこんなもん止まりだろうね。

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「アラン・スミシー・フィルム」(An Alan Smithee Film : Burn Hollywood Burn) 監督 アラン・スミシー(アーサー・ヒラー)/脚本ジョー・エスターハス/製作ベン・マイロン&ジョー・エスターハス/主演エリック・アイドル、ライアン・オニール、リチャード・ジェニほか/アメリカ公開1998年2月20日/日本劇場未公開/86分

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