英国ぶらり(7) 墓場めぐり
いつもの旅行では、観光名所よりもショッピングモールとかスーパーマーケットみたいな場所をめぐることが多かったのですが、今回はけっこう名所旧跡を訪ねました。なんだかんだ言ってもイギリスにはそういう場所が多いですからね。
で、そうしていたら、なんかやたらと墓地に立ち寄ってましたね。べつに旅行期間が、日本ではちょうどお盆だったこととは関係ないですけど。
グラスゴー大聖堂の裏手に広々とひろがっていたのが、こちら。
その名も魅惑的な、ネクロポリス。要するに巨大な共同墓地です。グラスゴーでもっとも標高の高い丘のほぼ全域が墓地になっています。
人口の多い町には、必然的に大きな規模の墓地が出来ます。生きてる人が多ければ、そのぶん死ぬ人も多いですからね。東京にだって、青山墓地とか多磨霊園とか、デカい墓地があるでしょ。
日本ではお墓の形態ってほぼ画一的。地域によっての差異はありますが、逆に同じ地域では同じ形に統一されてきます。だから墓地も、建売住宅地みたいになります。このへん、協調性を重んじる国民性ゆえでしょうか。
対して、ここのお墓は千差万別。日本的な墓石ポツリのものもあれば、いわゆる霊廟式、石棺剥き出しみたいなのもあれば、なかにはタワーがそびえるようなものまであって、けっこう見飽きません。デカいのはやたらにデカいし。こういうところにも国民性みたいなのが出てるんでしょうかね。
ネクロポリスには、こんなものもありました。
スコットランド史上の英雄、英国の支配に抵抗したウィリアム・ウォレスの功績をたたえた記念碑です。
1995年の映画「ブレイブハート」でメル・ギブソンが演じた、あの人物ですね。お墓ではないのに、なぜここにあるのか、それも墓地の端っこ、一般道からすぐのところという一等地とはいえない目立たない場所にあります(探すがのメンドクサイくらい) それで、いいのか?
ネクロポリスの頂上(?)からはグラスゴーの町が一望できます。死人になるともう見ないんだろうけど、やっぱり自分の生きた町を見られる場所に葬られたいもんなのですかね。
エジンバラで人気の「忠犬ハチ公」ライクなボビーくんの墓があったグレンフライヤーズ教会ですが、当然のように犬以外のお墓もたくさんあります。当たり前というか、教会ってそもそも墓所を備えているものですよね。
グレンフライヤーズはエジンバラの街中にあるんですが(教会が先にあってその周りに街が出来たんですかね)、そのせいで墓地の境界ぎりぎりまで家や商店が建っています。
ということで、こんな光景も。
墓地の霊廟が、隣接する建物に食い込んでます。建物は民家、反対側は商店だったりもします。日本ではお墓が家の中にあったりは、まずしませんよね(仏壇じゃなくてね) しかもこのお墓、葬られているのはたぶん土葬のホトケさんでしょう。つまり自分ちの地下とか隣室とかに遺体が葬られているわけで、それってどんな気分なんでしょうね。
これも文化とか国民性の違いですかねえ。
コッツウォルズのレイコック村(名前思い出した)でも小さな教会があったんですが、やっぱりそこも墓地つき。
いかにも村の共同墓地な雰囲気。あんまり観光地化してないせいか、ぐっと墓場ムードは高くなります。あの「スリラー」のMVとか「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」とか連想してしまって、夜には来たくないですね。
ネクロポリスでもグレンフライヤーズでも感じたことですが、考えてみたら、これはお墓なんですよね。なのに、葬られている人々とは縁もゆかりもないわれわれ観光客が、あたりかまわずにドカドカ歩き回っていいんですかね。
だって、歩き回っていて、ふと気づくと、すぐ横の墓石に「2023年」とかの日付のある真新しい墓誌が刻まれていたりするんですから。
ああ、ここって現役の墓地だったんだ。って、日本ではちょっと考えられない感覚ですよね。
でもこれは、死者とか先祖とかに対する民族性の違いなんでしょう。だからお墓に関する感覚や感情も、それだけ違うってことです。
グラスゴー大聖堂の中を見学していたら、普通の見学コースに、こんな表示がありました。「この下に地下礼拝堂とお墓あります」
そう、教会の中にもけっこう墓所があるものなんですね。これは本陣の下にある墓所ですが、壁際に石のベンチみたいなのがあるので座ろうと思うと、それが石棺だったりするのは、よくある話。あと教会の床下が墓場になっていたりもします。ロンドン塔内の礼拝堂にもありました。
日本のキリスト教会には、やっぱりそんなにお墓ってないですよね。仏教の寺院でも、神道の神社でも、建物内にはないよね。仏様や神様の家である神社仏閣とは、そもそも成り立ちが違うせいなのでしょうか。
こちらはエジンバラ城の一角。
マスコットとか飼い犬とか、要するに城内で死んだ犬たちの専用墓地です。日本の城でいえば天守閣のすぐ下という一等地です。
人類の最良の友に対する気持ちは、洋の東西を問わないんですね。
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