ジャッキー・チェンと勝負する(12)

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第12弾は「レッド・ブロンクス」(1995年)。ジャッキーがアメリカ進出の足がかりとした作品だ。

香港からニューヨークのブロンクスへやって来たジャッキーが、亡父と伯父が作ったスーパーマーケットを守るため、地元の暴走族と闘うお話し。全編アメリカロケ。

最初に見た時から、なんかデジャヴ(既視感)があった。というのも、上記のあらすじで、ブロンクスをローマに、スーパーマーケットをレストランに変えれば、ほとんどブルース・リーの「ドラゴンへの道」と同じじゃん。これが、香港映画の海外ロケ作品の定番設定なのか。

もちろん、ブルース・リーとジャッキーは違うので、映画そのものはまったく違う。チャック・ノリス出てないし。

ジャッキー・アクションは全開。最初からアメリカ進出の意図があったからか、いつも以上に気合が入っている感じで、走り、跳び、闘う。カンフーアクションはベースにあるが、カースタントやバイクスタント、爆発や銃撃などの特殊効果も満載。何といってもラスト付近のホバークラフト大暴走は圧巻で、ジャッキー映画の中でも屈指のスケール感がある。

それだけに、なんとも残念なのは、肝心のストーリーに「ぶれ」が見えることだ。もともと脚本が緻密なわけではないジャッキー映画だが、「レッド・ブロンクス」は特にアレレな感じだ。

そもそも主人公たるジャッキーが「ぶれる」。

亡き父と叔父が裸一貫からブロンクスに築き上げたスーパーマーケットを地元暴走族から守ろうとする話だと思ったら、さっさとスーパーはアニタ・ムイ演じる女実業家に売られちまうし、今度は彼女といい仲になりそうに見せて、なんと暴走族の女性メンバーと仲良くなっちまう。

で、いよいよ暴走族と全面対決と思いきや、ストーリーはいつの間にか盗品のダイヤをめぐる争奪戦になり、マフィア(みたいな犯罪組織)と対決し、敵だったはずの暴走族のボスとも共闘してるし。

隣人の足の悪い少年との友情もなんか中途半端だし、ジャッキーが香港では刑事だという設定もまるで活きていない。ジャッキーよ、いったい何がしたかったんだ?

もうひとつ残念を上げると、前述したようにアクションシーンには目をみはるものがあるのだが、ジャッキーの走る姿だけが妙にカッコ悪い。なんかヒョコヒョコとリズムが悪いんだよね。ラストのNG集を見ると、撮影中に足を骨折したらしいことがわかる。ギプスつけて頑張っていたようだが、あそこまで影響が見えるのでは、やっぱり減点対象でしょう。

走るところだけでもスタントを使うとか、思い切って撮影を休むとかすべきだったと思うぞ(たぶん全米公開のスケジュールが先に決まっていて、どうにもならなかったんだろうけど)

ということで、ジャッキー・チェン史の上では重要な作品なのに、ジャッキーのベスト作品にならなかったのは、なんとも残念だ。

しかし、前述のように全米興収第1位を飾り、これを機にジャッキーのアメリカ進出が成ったのだから、結果オーライということかね。もちろん、今見ても面白い映画であることは間違いなし!

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