ジャッキー・チェンと勝負する(21)

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第21弾は「ファイナル・プロジェクト」1996年の作品。

邦題からはわからないが、原題は「警察故事4之簡單任務」、つまり「ポリス・ストーリー(警察故事)」シリーズの第4作。なぜシリーズ名が邦題から外されたのかは、謎だ。

ジャッキー演じる刑事は、CIAから委託されて、密輸組織の女を尾行するだけという簡単な任務で、ウクライナへと赴く。だが彼女の属する組織が密輸を企てていたのは、旧ソ連の残した核弾頭だったのだ。彼女を追ううちに大規模な陰謀に巻き込まれ、今度はロシア情報部の依頼で、核弾頭を追ってオーストラリアへ。はたして、危険な核兵器の流出を食い止められるのか?

こうなると、もう刑事でもポリスでもない、ほとんど007の世界。実際、この作品でのジャッキーは、もはや香港警察の警察官である必要なんかカケラもないスーパー刑事だ。作品の舞台も、冒頭の数分をのぞいて、全部海外。シリーズのレギュラーであるトン・ピョウ演じる上司が登場するのが、かえって不自然なほどだ。前作まで出ていた恋人役のマギー・チャンも、今回は登場なし。正直言って、あえて「ポリス・ストーリー」シリーズにする必要はなかったんじゃないかな。

ただそのおかげで、香港を舞台にしていたのでは不可能に違いないアクションが実現している。ウクライナの雪山で展開する一大スノーアクションだ。スキー、スノーボードを駆使し、ヘリコプターまでからんだ、チェイスシーンは、亜熱帯で山もない香港ではとうてい無理。舞台を海外に求めたからこそ実現したシーンだ。

このシーンでのジャッキーは、おそろしく薄着。シャツ一枚にベストをはおっているだけなのだから、寒さをナメ過ぎだと思うぞ、ジャッキー。ふつう、凍死してるよ、あれじゃあ。このへんは、相変わらずの香港テイストか。いや、じっさいにスタントなしで、体を張って一連のアクションを行なっているんだから文句は言えんか……

結局のところこの映画、ジャッキーがジェイムズ・ボンドをやりたかっただけなんじゃないか。終盤の水族館での水中アクションも、考えてみたら「007/サンダーボール作戦」あたりへのオマージュなのかもしれない。そう考えると、わざわざスノーチェイスを投入したわけも、なんとなくわかるな。

ジャッキー版007は、秘密兵器こそ使わないが、そのかわりに、お得意のアクロバティック・カンフーを全開。おのれの肉体を武器に、徒手空拳で敵と対峙する。まあ充分に秘密兵器の代わりになるからな、ジャッキーのカンフーならば……

ああそうか、カンフーを秘密兵器の代わりにしたスパイアクションといえば、かの「燃えよドラゴン」がそうだったじゃないか。するとこの「ファイナル・プロジェクト」は、007とブルース・リーへの、ジャッキーからのオマージュだったのか。いや、そうでもないか(笑)

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