ジャッキー・チェンと勝負する(40)
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「ジャッキー・チェンの醒拳」の登場。そろそろ怪しげなものも登場するようになってきたな。
この「ジャッキー・チェンDVDコレクション」の発売が決まったときに発表されたラインナップでは、全74本の予定。でも、そこに記載されていた収録予定作品数は50本余。当然、何本かのタイトルがラインナップに見当たらなかった。そうした作品をつらつら思い浮かべるにつけ、「ああ、あれやあれは出ないんだろうな」と勝手に予想したのが何本かあるのだが、この「醒拳」はそのうちの1本。これをきちんと収録したことには、拍手を贈ろう(笑)
その理由は、ご存知のかたも多いだろう。この「醒拳」は、1983年の香港公開作品なのだが、そこにさまざまな紆余曲折、イワク因縁があり、じつは正確な意味でのジャッキー映画とはとても呼べないシロモノなのだ。なにしろ「醒拳」という映画そのものに、ジャッキー・チェンは直接かかわっていないのだから。
ジャッキーがロー・ウェイ傘下からゴールデンハーベストに移籍した際、置き去りにされた未完成映画を素材にして、逃げられた側のロー・ウェイが、ジャッキーには無断で、無理やり別個の作品に仕立て上げたものなのだ。
ケースとしては、ブルース・リーの死後に、残されたフィルムから強引に作られた「死亡遊戯」と同じようなものと思えばいいかも。ジャッキーは死んでないけど。
1970年代後半、「ドランクモンキー」などの後の時期に、ジャッキーが途中まで参加しながらも、ジャッキーとロー・ウェイの確執のせいで企画中止となったカンフー映画の撮影済みフィルムを使い、「クレージーモンキー/笑拳」(1978年)のボツフィルムや同年の「龍拳」の一部を流用し、さらにはソックリさん俳優に替え玉までさせて、強引にまとめ上げたものだ。だから当初ジャッキーが参加していたカンフー映画とはまったくの別モノになっている。つまりジャッキー・チェンは「醒拳」という映画にはまったくかかわっていないことになる。
というわけで、出来上がった映画は、みごとなツギハギ。
シーンごとにジャッキーの衣装や髪形ばかりか、顔つきや動作までコロコロ変わるし、そもそもジャッキーが出てこないシーンも妙に多い。これまで見たほとんどのジャッキー映画では、当たり前だが、主演スターのジャッキーはほとんど出ずっぱり。だがこの「醒拳」では、ジャッキー登場時間はすくなめ。そりゃそうか。
世界の映画史を見れば、こんなことはそう珍事でもないし、じつはこの後のジャッキー映画にも、似たようなシロモノがあったりする。
で、肝心の「醒拳」の出来栄えはというと、まあ言うまでもないだろう。
でも、こんな作品でも香港ではそこそこヒットし、日本でもきちんと劇場公開された(ただしずっと遅れて1986年の公開だったが)のだから、これぞジャッキー人気の証明であるとも言えよう。
というわけで、現在となってはマニア好みの珍品か、ジャッキー移籍事件の証拠物件、あるいは香港映画史の歴史的資料という程度の価値しかない映画なんである。
それにしても、なんでよりにもよって、こんなイワクつきの作品をキリ番の「40巻」に持ってきたのか? ディアゴスティーニ社の編集方針には、ちょっと疑問を感じますがねえ(笑)
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