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WHO IS 衛斯理 ?
前回触れたように、一時期香港映画にハマっていたんだが、その中で忘れ得ぬ映画がいくつかある。おいおいここで書いていくつもりだが、今回は未だにその全貌を見ることができていないキャラクターについて語ってみよう。
事の起こりは「セブンス・カース」という映画だった。1990年代初頭だったか、当時流行っていた香港ファンタスティック映画の1作として映画祭で「七番目の呪い」というタイトルで上映され、のちに「セブンス・カース」というタイトルで劇場公開された。DVDにもなっている。
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この映画の主人公で、当時人気絶頂だったチョウ・ユンファ(周潤發)が演じたのが、衛斯理だった。「ウェスリー」と読んでいたと思う。インディ・ジョーンズの影響下にあった感じの映画で、タイに出かけた男が、現地で謎の呪いをかけられ、そのために邪教集団と闘うという話で、けっこうえぐい描写があった。香港ホラーの伝統ジャンルのひとつ「南方邪教もの」だなという印象だったが、これが衛斯理との出会いだった。ちなみにこの映画の本当の主人公(呪いをかけられる男)は、チン・シュウホウ(銭小豪)演じる原振俠という冒険家で、衛斯理は彼を助ける先輩役。この二人は、同じ著者・ニー・クワン(倪匡)が書いた別々のシリーズのヒーロー・キャラで、いわば夢の競演だったのだが、知らんわそんなこと。そういえば、著者自身も映画の冒頭に出ていたっけ。だから原題は「原振侠興衛斯理」
当時調べてみたら、この衛斯理、1963年の第1作以来、小説では実に70冊くらいの作品に登場している人気キャラだった(さっき調べたら、今はその数が150冊以上に増えていた)「へえ!」の一言で、のちに香港の書店でずらーっと並んだ原作に圧倒された覚えもある。
で、ラジオやテレビのドラマにも何度もなっているこの人気シリーズ、この「セブンス・カース」が初の劇場用映画で、その後何度か映画になっている。そう聞くと、全部知りたくなるのが悪いクセ。以前にも調べてみたことがあるのだが、それからもう15年以上が過ぎているので、今回改めて調べ上げてみた。
まずは前記の「セブンス・カース(七番目の呪い)」原題:原振侠興衛斯理(1986)原作題:『血咒』(これは衛斯理シリーズではなく原振侠シリーズ) 1991年3月に日本公開。
同じ時期に日本でも見られたのが「飛龍伝説 オメガクエスト」原題:衛斯理傳奇(1987)原作題:『天外金球』 これはビデオ発売のみ。衛斯理を演じたのは「Mr.Boo!」や「悪漢探偵」のサミュエル・ホイ(許冠傑)。秘宝ドラゴン・パールをめぐる壮大なスケールの争奪戦。
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もう1作、日本でも見られたのが、1991年にビデオ発売された「妖獣大戦」(映画祭で上映時のタイトルは「猫 NINE LIVES」)日本製で、羽仁未央が監督・脚本、主演は赤井英和。ヒロイン役で香港からグロリア・イップ(葉蘊儀)が出演。原作小説の『老貓』を基にしているが、大胆に改変され、衛斯理も登場しない。
この映画(あんまり成功作ではなかった)を、製作にも噛んでいたラン・ナイチョイ(藍乃才・「セブンス・カース」の監督)が香港向けに改編してちゃんとした(?)映画に仕上げた。「老貓」は1992年製作。ストーリーは原作通りに戻っており、衛斯理には「男たちの挽歌」のリー・チーホン(李子雄)が扮している。日本ではまったくの未公開。特撮場面は「妖獣大戦」と共通だが、作品全体は、こちらのほうがはるかによく出来ていた。いや、ひょっとすると、こっちが先に出来ていて、日本版はあとから作られたのかもしれない。
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ちなみに「妖獣大戦」が映画祭でお披露目されるときにあわせて、原作小説も徳間文庫から翻訳刊行された。タイトルは『猫 NINE LIVES』。今のところ、これが原作シリーズの唯一の邦訳だ。
ついに日本に入ってこなかった作品に「衛斯理之霸王卸甲」(1990)がある。風水のビッグポイントをめぐる話で、クライマックスに本物の人民解放軍が登場する。原作は『風水』。私はLDを持っているが、ちょっとした大作ですよ、これ。衛斯理を演じたのはチン・ガーロウ(錢嘉樂)。
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もうひとつ、「少年衛斯理」というのがある。2作あって、1993年の「少年衛斯理之天魔之子」と翌年の「少年衛斯理II之聖女轉生」。アメリカ生まれの台湾人俳優で「さらば、わが愛/覇王別姫』などに出ているデヴィッド・ウー(吳大維)が少年時代の衛斯理を演じているんだが、これは確かTVドラマだったはず。今のネット資料だと映画とされていることも多いが、どっちなんだろうか。タイトル通り、学園生活を送る衛斯理の若き日の活躍が描かれているのだが、どうやら同名の原作小説とは別物らしい。
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と、ここまでが15年ほど前に調べたときの衛斯理の映画化全作品だった。ところが今回調べ直してみると、他にも数作品が浮かんできたのだ。
より謎が深まるそれらについては、続きで。