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ジャッキー・チェンと勝負する・追撃戦(16)

今回は2017年12月に日本公開された「カンフー・ヨガ」(功夫瑜伽/KUNG FU YOGA)

のっけから見慣れないカンパニー・クレジットが乱舞するが、どうやら中国、香港、インドなどの合作ということらしい(余談だが、近年は映画の「国籍」ってあんまり意味を持たなくなってるね。グローバリゼーションの時代なのか) 私はなんとなくハリウッド系の映画のような気がしてたのだけど、ちがったね。

唐の時代、インド(天竺)へと派遣された中国使節が残した、中印国境の崑崙山脈のどこかに眠るといわれる伝説のマガダ国の秘宝。そのありかをめぐり、ジャッキー演じる中国の考古学者と、インドの大富豪がくりひろげる壮絶な争奪戦の顛末を描くアクション大作だ。崑崙山脈、ドバイ、インドへと舞台を移し、大仕掛けでド派手なアクションが連発される。

監督は、ジャッキーの盟友ともいうべきスタンリー・トン(唐季禮)。ジャッキー映画を多く監督してきた人で、「ファイナル・プロジェクト」「レッド・ブロンクス」など、ここぞという作品でジャッキーにチョイスされている。たぶん、ジャッキー自身を除くと、ジャッキー・チェンがもっともその手腕を信頼している監督だろう。【こちら参照】

なので、この「カンフー・ヨガ」が、ジャッキーの並々ならぬ意欲作であることは明白。

にもかかわらず、この映画のアクション、少々アレレな出来栄えなのだ。

いや、アクションそのものはスケールも大きいしスリリングでスピード感もある、上出来なものだ。にもかかわらずいまいちな印象なのは、ひとえにアクションの処理、拾いかたがダメだから。

たとえば最初のほう、崑崙山脈の氷の洞窟内での大乱闘シーン。銃を持った盗掘団が、銃声で洞窟が崩落しそうなので銃撃できずにカンフーファイトになるという「縛り」はなかなか巧妙なのだし、多人数対多人数のファイトの演出も上出来(コレけっこう難しいのだよ)

だのに、乱闘そのものは決着せず、次のカットではジャッキー側が負けて捕らえられている。え? ファイトの勝敗はどうなった? なんでジャッキー側は負けたんだ? おかげで、なんかスッキリしない。ここはきちんと「負け」のカットがなければいけないところでしょう。

じつはこの後もこうした未処理な結末が散見する。どうした、ジャッキー&スタンリー、腕が鈍ったか

うーん、時間節約のためにはしょったのかもしれないし、編集段階でカットされたのかもしれないが……こうした瑕瑾は、むかしのジャッキー映画にはちょくちょくあったが、完成度を高めてきた近年の作品ではほとんどなくなっていたのにねえ。

もうひとつ言わんでもいい文句を言えば、このジャッキー演じる主人公は考古学教授のジャックなんだが、なんであの「アジアの鷹」ではなかったのか。

「サンダーアーム/龍兄虎弟」「プロジェクト・イーグル」「ライジング・ドラゴン」と、ジャッキーが大切に使ってきたシリーズ・キャラクターの「アジアの鷹」、ポリス・ストーリー・シリーズの陳家駒刑事とならぶジャッキー映画では貴重なキャラクターだのに。だって、同じ考古学者という設定じゃないか。

「アジアの鷹」が、実際には考古学者というよりも盗賊に近く設定されている点が、今回のジャック教授の設定と合わなかったからかな。あるいは、過去作品のイメージを払しょくしたいほどの意欲作だということか。長年ジャッキー映画を見てきた身としては、ちょっともったいないと思ったが、どうかな?

さらにもうひとつ、前半の崑崙山脈のシーンで気になったのは、あまりに寒さに無防備な点。だってさ、氷河があるような高山地帯で、低温の伏流水の中を泳ぎきり、寒風吹きすさぶなかでびしょ濡れの服のままって、ふつう間違いなく凍死するよな。でもさすがはジャッキー、次の瞬間には病院で回復していて、凍傷すら負っていないじゃないか。さすがだぜジャッキー? いやいや納得いかんぞ。

思えば、ジャッキー史上おそらく初めての寒冷地でのアクションとなった「ファイナル・プロジェクト」でも、大雪のなか半袖シャツでスキーアクションをこなしたジャッキーだけに、まあ寒さには格別に強いんだろう。香港生まれのジャッキーには、寒さや凍死ってピンと来ないのかも。

と、いろいろ文句は言ったが、映画は上出来の部類といっていいだろう。107分の間、ほぼ無駄なく進み(少々せわしないが)、うんうん、まあ安心して見られるジャッキー映画の水準作だよな……

【画像のリンク先はamazon.co.jp】

そう思っていた最後の最後に、見事にやられた。このラストはジャッキー映画史上最大の衝撃といってもいい。いやホントに(笑)

まさかそう来るとは! インドとの合作の理由もこれだったのか!

前に「奇蹟/ミラクル」の時にちょっと書いたが、リズム感覚に優れたジャッキーは、じつはミュージカル映画も作れるんじゃないか。ジャッキーの作るスペクタクルなミュージカル映画って、ちょっと見てみたいな。「カンフー・ヨガ」を見て、あらためてその意を強くした次第だ。

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