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ジャッキー・チェンと勝負する(66)
今回は「ライジング・ドラゴン」(2012年)の登場。現在のところ、日本公開済みのジャッキー映画のうち、新しいほうから数えて3番目の作品(だよね?)
何度も書いてきたように、私は「21世紀のジャッキー・チェン」はほとんどを見ていなかったのだが、例外的にこの「ライジング・ドラゴン」は、コレクション開始前に見ていた。
なぜか?
いや、そんなに大上段に構える必要はない。もちろん、たまたまに過ぎないってこともある。
だが一方で、この作品が「20世紀のジャッキー・チェン」のにおいを放っていたのも確かだ。それが私の嗅覚に訴えたのだろう。たぶん。
というのも、この作品の主人公が「アジアの鷹」だからだ。
言うまでもない。1986年の「サンダーアーム/龍兄虎弟」、そしてその続編である「プロジェクト・イーグル」(1991年)の主人公だった、あのトレジャーハンターだ。
もともと「ポリス・ストーリー(警察故事)」の陳家駒・刑事くらいしか、シリーズキャラクターを持たないジャッキーが、20年余の年月を経て「アジアの鷹」を復活させたのだから、やはりこれは見逃せない。
映画の中では「アジアの鷹」というネーミングは使われていない。「JC」と呼ばれているだけなのだが、ガムだかキャンディだかをポンと口に放り込むしぐさは、前2作とまるで同じだし、貴重な考古学遺物を追跡するトレジャーハンターという職業から考えて、この「JC」が「アジアの鷹」なのは間違いない。
しかし、こいつ、トレジャーハンターなのか、本当に?
というのも、こいつが考古学遺跡から何かを発掘したりするところ、見たことないぞ。よくこのキャラはインディ・ジョーンズを意識しているとかいわれるが、少なくともインディ先輩は大学の考古学教授。
対して「アジアの鷹」は、基本、すでに発掘されて収集家の手中にある遺物を盗み出すのがほとんど。なかには、今でも信仰の対象になっている物もあったりする。
今回で言えば、かつてアヘン戦争の折に外国に持ち出された十二支の頭部をかたどった12体の像(原題の「十二生肖」〔英題「CHINESE ZODIAC」または「CZ12」〕が指すのがコレ)の争奪戦なのだが、そのほとんどはコレクターが持っていたりするので、彼らの大邸宅の警備厳重な保管場所から盗み出すのだ。
それじゃ、要するに泥棒じゃないか。インディ・ジョーンズじゃなくて、ルパン三世かよ。まあ、いいんだけど。
まあそんなこんなだが、要するにアクションを見せるためのキャラクターとしては、細かい点はどうでもいいってことだ。
それこそが、ジャッキー映画のキモだもんね。
ではそのアクションはといえば、「ライジング・ドラゴン」ではまさに全開。大げさではなく、文字通りに陸海空にアクションを展開。途中でストーリーが破綻しかかるが、そんなことはお構いなし。アクションのつるべ打ちの前に、そんなことはまったく意識できない。
だから、細かいことは気にしない。脈絡なく海賊が出てこようが、悪役がわけもなく遺物を破壊しようとしようが、「なぜ」とか「つじつまが」とか、言ったもん負けなのである。
ジャッキー映画の最大の魅力とは「アクションこそがすべて」
だから、そのジャッキーが、映画のエンドクレジットで「アクション映画はこれを最後にする」などとわざわざ「引退宣言」ともいえるメッセージを挿入しているが、私はそんなことは微塵も信用していない。
よく「プロレスラーの引退は信用できない」といわれる。いろいろな見方はあるだろうが、私はこう考えている。
プロレスラーというのは職業や肩書きではなく、生き方そのもの。だから、やめることも終えることもできない。仮に引退してリングを去っても、試合をしていなくても、プロレスラーであることには何の変わりもないのだ。
これは「アクションスター」も同じなんだろうと思う。
だからジャッキー・チェンも、映画にかかわる限り、アクションと縁を切ることはないだろう。じっさい、この後の「ポリス・ストーリー/レジェンド」でも、ちゃんとアクションしてるからね。
だから、次のアクション映画を待ってるよ、ジャッキー。