ジャッキー・チェンと勝負する・追撃戦(5)
なぜDVDコレクションに収録されなかったのか、どうしても納得いかないのが、これ。ジャッキー・チェンのハリウッド本格進出の最初の映画であり、最初のヒット作であるにもかかわらず、未収録。これ抜きでジャッキー史は語れないでしょうに。
「ラッシュアワー」1998年の作品。
ロサンゼルス駐在領事の娘が誘拐される。事件解決のために香港から呼び出された腕利き刑事のリーだが、FBIは彼を信用せずに地元LA市警のハミダシ刑事と組ませて厄介払いする。最初はシックリいかなかった二人だが、FBIに対して意地を見せて人質救出に邁進。やがて、事件の背後には領事とリーの香港時代の仇敵である犯罪組織の存在が……
ジャッキー得意のコメディっぽいアクションであり、ハリウッド初戦にもかかわらず手慣れた感じに見える。実際はそうでもなかったらしいが。
ただ作品自体の出来はどうかというと、1本の映画としては上出来の部類でも、ジャッキー映画としてはいささか物足りない。
その理由はわりとはっきりしている。それはこの時期直前の香港でのジャッキー映画と比べればすぐわかる。こんな顔ぶれ。
「レッド・ブロンクス」「デッドヒート」「ファイナル・プロジェクト」「ナイスガイ」
そう、この時期のジャッキーは、完全に独自のスペクタクルなアクションをモノにしていたのだ。ここまでにさまざまな試行錯誤を繰り返しながら、ようやく確立した、世界に類を見ないスタイルだ。
ところが、この「ラッシュアワー」では、そのスタイルはキレイに捨てられている。
ラストに、ダイナミックな垂直落下アクションはあるものの、見ていて「ポリス・ストーリー」のそれと比べてしまうのは止むを得ないだろう。それよりも迫力で劣るのは、まあ映画自体のスタイルの問題なんで、これもしかたのないことだろう。
とはいえ、アクションのスケールが小さいのは間違いない。ホバークラフトも巨大パチンコ店もヘリコプターアクションもジャイアントトラックもスキーチェイスも、なんもなし。
カンフーアクションを活かしたコレオシーンはさすがの見事さだが、これだけでもたせたのでは「プロジェクトA」以前に逆戻りといったら、ちょっと言いすぎか。
本人の言を見るまでもなく、香港ではワンマンで映画を作りスタイルを確立してきたジャッキーが、ハリウッドというシステムの中に呑みこまれた……そんな印象になるのは、うがちすぎだろうか。
とはいえ、映画として不出来では、まったくない。
そもそもこの映画、ざっくりいってしまえば、ジャッキーの「ポリス・ストーリー」に、エディ・マーフィの「ビバリーヒルズ・コップ」をプラスしたといったところ。
ジャッキーのフィジカルアクションに対して、相棒のクリス・タッカーのマシンガントークを配することで、コンビものの面白さを狙ったものなので、ジャッキー・チェンがいつもの半分くらいしか目立たないのは当然といえば当然だろう。
その限りでは成功したといっていいし、実際にヒットし(北米興収で1億ドルを超えた)なによりもこのあと続編まで作られたのだから、ジャッキーのハリウッド進出を大成功に導いた記念碑的作品といってかまわないだろう。
でも、長年のジャッキーファンが、この「ラッシュアワー」に物足りなさを感じるのもまた事実。
うーん、このへん複雑だよなぁ。
と思いつつ、「ラッシュアワー2」に続くのでありました。
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