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ジャッキー・チェンと勝負する・追撃戦(27)

ついにこういう日が来てしまった。

「ドランクモンキー」の日本公開以来44年、とうとうジャッキ-・チェンの新作が劇場公開されない時代になったのだ。近年の公開状況を見ていると、遠からずこんな事態が起きるものと思ってはいたが、いざ現実となるとやはり重たいものがある。

とはいえ、今回はコロナ禍でアメリカ本国での劇場公開が出来なかった事情もあってのことのようだから、そう嘆息することではないか。それに、これはジャッキー映画に限った事象でもないし、日本だけのことでもない。

というわけで、いまのところの最新公開作「プロジェクトX/トラクション」は、Netflixでの配信のみということになった(おかげでネトフリと視聴契約しちゃったじゃないか)

くどいようだが、ジャッキーの主演作(ゲスト出演や旧作はのぞく)が劇場で公開されないのは、ちょっと記憶にないくらいの椿事。

まあこれも時代の流れだし、私自身もここ数年は必ずしも劇場で観ていたわけではないのだから仕方ない。ただ、コレクターとしてはDVDなりブルーレイなりで手元に作品を所有できないのは、やっぱり忸怩たるものがある。じつは配信開始(2023年7月)から日が経っての本欄紹介になったのも、このへんが引っかかったから。前回の「プロジェクトS」に続いてネット視聴のみになっちゃったからねえ。

当たり前だが、ポスターもジャケット写真もなし

とはいえこの作品、じつは2018年ごろには撮影が終了していたのが、前述したようにコロナ禍(だけでもないらしいが)による公開見合わせもあって、一時はオクラ入りの危惧もあったのだから、いちおうちゃんと観られたのは慶賀の至りではある。

ずいぶん待ったもんな。

というのも、この作品の最大の売りである、ジャッキーの相棒をつとめる二枚看板がジョン・シナだから。当然ながら私はニュースが流れた時から期待していたのだ。

映画ファンの間でも少々顔が売れてきていると思うが、ジョン・シナといえばプロレスのスーパースター。WWEでデビューし、ゼロ年代から主役級、多くのタイトルを獲得し、いまでもトップを張っている大物だ。

数年前に「トランスフォーマー」シリーズのスピンオフ「バンブルビー」で悪役っぽい役を演じていたのを観たことがあるが、これほど大きな映画での主役は初めてかも。これから、同じ道を歩んでいる先輩のザ・ロック(ドウェイン・ジョンソン)の後を追うことになるのか(「ワイルド・スピード/ファイヤーブースト」〔2023年〕で共演している)

名コンビ誕生、かな?

さて肝心の映画の出来だが、まず文句なしのジャッキー映画になっている。

中東の砂漠で石油プラントがテロリストの襲撃を受ける。孤立した従業員たちの脱出のため送りこまれた傭兵部隊はバス隊列による陸路の脱出を図るが、その途上でプラントの所長が拉致されてしまう。救出のために傭兵部隊の隊長は、成り行きから手を組むことになった元特殊部隊員とともに、敵に占拠された石油プラントに殴りこむ。

傭兵部隊長がジャッキー、元特殊部隊員がジョン・シナという組み合わせ。当初ジャッキーの相棒役はシルヴェスター・スタローンが予定されていたというが諸事情で降板し、ジョン・シナの起用となったらしいのだが、この2人、けっこう手が合ったのか、セリフの掛け合いやアクションの呼吸がなかなかテンポがいい。結果的にはスタローンよりもよかったのではないか。

ハリウッドでのジャッキーは「ラッシュアワー」「シャンハイヌーン」などのバディもので良い結果を出しているが、今回のこのコンビも悪くない。ちょっと続編を期待したくなるぞ。

きわめてシンプルでストレートなストーリーなので余計な頭を使わずに楽しめるし、舞台はすべて砂漠地帯(ロケは中国で行なわれたという)なので、邪魔者なしのカーチェイスや、周囲になんの遠慮もなくぶっ放される爆破シーンはちょっとした見せ場。

もちろんジャッキー映画なので、銃撃戦やカーアクションもさることながら、カンフーをバックボーンにした肉弾戦が前面に出てきている。

この点でも、プロの格闘技者だったジョン・シナには説得力がある。パンチ一発でも重そうだもんね。前半に組まれているジャッキーとの格闘シーンも見応え充分な名勝負になっている。

周囲が砂漠ばかりのロケーションなので、舞台となる場所の間の距離感がいまひとつ掴みづらいとか、いくつかのツッコミどころはある。灼熱のはずの砂漠であれだけのアクションをしてるのに、水分も栄養も補給しなくてよく平気だなとかね。まあジャッキーもジョン・シナの超人だからいいのか。

日本語版でもこういうポスターが見たかったな

というわけで、ジャッキー映画としては満足のいく出来栄えだった。

総じて批評もよかったようだし、公開から28日間に全世界で5,680万回視聴される大ヒットになったので、前記したように続編も期待できると思う。今度は劇場のスクリーンで見たいね。

なお中文タイトルは「狂怒沙暴」なのだが、英語タイトルは撮影中から何度も変更されたようで「Ex-Baghdad」「Project X」「Project X-Traction」「SNAFU」などが広報された。最終的に「Hidden Strike」に落ち着いたようだ。

ジャッキーの映画は、すでに中国やアメリカで公開されたのに日本では見らない作品がまだ数作あり、また撮影中のものも含めて複数の予定作品が流布されている。

まだまだジャッキー・チェンは健在、本欄もジャッキーとの勝負を続けることになりそうだね。

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