500円映画劇場「エイリアン・フロム・メテオ 侵略」
前回の「デス・アイランド」と同様、この作品もまた劇場公開用なのかTVムービーなのかDVDスルーなのか配信専用なのか、いまひとつハッキリしない。
毎度お世話になっているオールシネマさんでもIMDBでもこのへんの明記がない作品が多くなっている感じだが、これも同じ。まぁ、もうそんなこと誰も気にしなくなっているのかな。いろいろ調べてみた結果、どうやらアメリカでは2018年5月に劇場公開されているが限定公開らしく、すぐにネット配信、日本では劇場などでの公開はなく2018年10月にDVDスルーで発売されているようだ。今回はアマゾンプライムの配信で観てみた。
宇宙より飛来したサッカーボール大の隕石から、大きめのナナフシみたいな生物が出現。人間の背中にとりつくとその相手をコントロールしてしまう。この生物を追うのが、あまりにも見たことのあるグレイ・スタイルの人型エイリアン(原題は「Gray Matter」) といっても本人が追うのではなく、有無を言わせず拉致してきた(アブダクションだね)地球人の女性をあやつって追わせるのだ。次々と宿主を替えて逃げ回るムシ型エイリアンを、地球の迷惑かえりみずにドカンドカンと追っかける追跡オネエサン。例によって田舎のスモールタウンを舞台に、別に人類には何の利害もない迷惑なだけの追跡劇が続く。
巨大な(といっても50センチくらいかな)のムシが背中にとりつくヴィジュアルは、なかなかの不快感で上出来だし、追っかけるのがシュワルツネガ―みたいなムキムキ男でなくどっちかといえば弱そうなオネエサン(アリーズ・クロッカー)なのが、まあ新味といえばいえるが、総じてデジャビュ感の豊富な、キツくいえばオリジナリティのないSFホラー。
そもそもをいえば、おおもとのアイデアが丸っきり「ヒドゥン」のパクリなんだよね。「ヒドゥン」は確かに面白い名作だけど、もう35年も前の映画なんだぜ(1987年作品) パクリとイタダキはヤスモノ映画の常套手段とはいえ、もうちょっと考えようぜ。
追跡オネエサンが右腕に装着するアタッチメントも「コブラ」のサイコガンか「カウボーイ&エイリアン」のダニエル・クレイグみたいだし(しかもまったく役に立たない)、そういえばラストも「エイリアン」からのイタダキだもんね。
このモヤモヤ感は、いかにもヤスモノ映画ならではで、それはそれで結構なんだが、もっと肝心な部分でのモヤモヤ感は見過ごせない。
そもそも(今回これが多いな)だが、このグレイ型エイリアンは何をしに地球にきたのか。その目的が終始判然としないのだ。大雑把にいえば、地球に飛来したムシ型エイリアンを追っかけてきたというウルトラマンと同様の地球訪問なんだろうが、いまひとつ意図不明。彼ら自身の利害があってのことなのか、それとも地球人類保護のためなのか。
まあそう底の深い話ではないだろうから、せいぜい害虫駆除くらいのつもりなんだろうなと容易に想像はつくが、それがきちんと画面から読み取れないのは、映画としてはやはり大きな欠陥だろう。なぜそんな結果になったかというと、双方のエイリアンたちが、まったく地球言語(この映画では英語)を使わないからだ。
いや意図はわかる。そもそも(ほらまた)起源も進化も文化もまったく別物のはずの異星生物が、堂々と地球言語を解し、あまつさえエイリアン同士でも地球言語で会話したりするのがおかしいのだ。ヤスモノ映画に限らず、「スターウォーズ」みたいな大作でも案外そうなんだよね(それはそれでまったく別の意図があってのことだが) そこをサイエンスフィクション的に「正確に」描こうってんなら、その意図には充分価値があるともいえる。
ただそれならば、言語でない別の何かで、そのへんをしっかり説明していただきたいところだが、自分たちの意識の高さに酔いしれた製作者たちはそのへんをすっかり忘れたのだろう。
おかげで、たとえばムシ型エイリアンは、そもそも知能のある知的生命体なのか単なる宇宙虫なのかさえわからず、追う側の追跡オネエサンも地球人の生命など気にもかけないので善玉には見えないし、観ている側としてはどっち側に感情移入すべきなのか、モヤモヤしたまま映画は終わってしまうのだよ。
というような、これまでヤスモノ映画でたっぷりと何度も味わってきたおなじみのヤスモノ映画感をたっぷり味わえるあたりが、この映画の醍醐味ってことにしときましょうか。
劇場公開もアメリカ国内でだし、アメリカ映画っぽいが、どうやらカナダ資本による映画らしい。500円映画王国、健在なのかね。
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