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英国ぶらり(3) 英国交通事情
今回の旅程は、東京・羽田空港からロンドンのヒースロー空港、乗り継いで空路グラスゴーへ。グラスゴー4泊の後で国内便でロンドンへ戻りロンドン3泊のあと帰国便。そのあいだイギリスの交通機関をけっこう使いました。
重宝したのは、グラスゴーの空港から市内のホテルまでの足。たしか前回の訪問まではタクシーで移動していたと思うのですが、今回は空港のターミナルを出たところにこんなバスが。
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グラスゴーはコンパクトな町なので、空港から市内へはハイウェイを通って、所要約15分。近い、早い、便利。市の中央部数カ所のバスストップから乗り降りできますし、空港への往復専用なので、デカいスーツケースも置くスペースがちゃんとあるなど、使い勝手もよし。もちろん有料ですが、利用価値は高いですね。
グラスゴーでは、もっぱら鉄道移動。
市内をぐるりと環状に結ぶ地下鉄は、スコットランド唯一の地下鉄。1896年の開業で、ロンドン、イスタンブール、ブダペストに次いで、世界で4番目に古い地下鉄だそうで、そうか日本最初である東京の地下鉄(上野~浅草間)よりも30年ほど先輩なんだ(地下鉄銀座線は1927年開業)
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ただしこの地下鉄、市内をぐるりと結んでいるものの、使い勝手はそうよろしくない。ターミナル駅であるセントラル、クイーンズ・ストリートの両駅とは直結しておらず、乗り降りに利用できる範囲も意外と狭い。このへんは網の目のように市内を結んでいるロンドンや東京の地下鉄とは違う。
市内の各所と、スコットランドの各地を結んでいる主力鉄道は、SF大会会場やエジンバラに行くときに多用した、スコットレイル。
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スコットレイルというのは、1983年にイギリス国鉄のスコットランド地方のブロックに名づけられ、1997年に民営化されたもの。その後運営会社は数回変わっているようですが、2008年からは現在のデザインになったそうです。だから以前に来たときの記憶にはなかったわけだ。
場所をロンドンに移すと、もう交通の足は圧倒的に地下鉄。なにしろ網の目のように路線が張り巡らされているので、便利な半面、非常にややこしい。目的地へ行くのに複数のルートがあるのが普通で、じゃあどっちが早いのか、どっちが乗り換えが楽なのか、非常に考えさせられます。そのうえ同一の線路を走る電車が違う目的地に向かうケースもしばしば。
じつは、帰国時にヒースロー空港へ向かう地下鉄を2回ほど乗り間違えたのが、その証拠。まあちゃんと調べないこっちが悪いんだがね。
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ロンドンの地下鉄は非常に古いので(1863年開業)仕方ないのだが、じつはけっこうバリアフリーではない。エレベーター、あちらでいうリフトが設備されている駅のほうが少ないくらいだし、エスカレーターすらない駅が多数。なので、ガラガラとキャリーつきの重いスーツケースを引っ張って歩くときには案外と不便ですね。駅や車内に掲示されている路線図には、いちおうバリアフリーな駅には特別な表示がされていますが、要するにそれくらい不便だってことです。
いっぽうで圧倒的に便利なのは、自動改札。30年前にロンドンを訪れたときにはいちいちチケットを買わないと乗れなかったのが、10年前の再訪時にはプリペイド式の、オイスターというカード(東京でいうスイカやパスモ)があって重宝しました。今回出発前に調べたら、オイスターは使用期限なしとのことなので、まだ使えるぞと、わが家のどこかに埋もれていたものを発掘して持参したのですが、これがなんとまったく無用。
ここ数年、イギリスでは圧倒的にキャッシュレス化が進み、もはや現金なんか使わない、というか使えない場面がほとんど。レストランなどの商店はもちろん、コンビニでも売店でも「CARD ONLY」の表示がされているところばかり。
じつのところ、今回の滞在中、とうとう一度も現金を使いませんでした。即位したばかりの国王の肖像がついた紙幣にあえるかと思ってたんですがね。
それは地下鉄も(今回は使わなかったけどバスも)同様で、駅の自動改札機に非接触式のクレジットカードをピッとかざせばそれでOK。これは便利でした。日本でも遠からずこうしたキャッシュレスが普通になるんですかね。
ついでにいえば、コンビニやスーパーのほとんどが、セルフレジ。日本のやつと少々システムが違うので最初はモタつきましたが、手順がわかればじつに簡単。外国で買い物するときにいつもレジカウンターで小銭を判別するのにモタモタしていたのも、もはや過去の風物となりそうですね。
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というように便利になったイギリスの交通事情ですが、こと航空機に関しては、およそダメですねぇ。
そもそも私たち一家はヒースロー空港とは相性が悪いらしくて、いままで何度もトラブルに見舞われています。預けたスーツケースが到着しなかったり(ヒースローで積み忘れられた)、登場予定の帰国便が理不尽にもキャンセルされたり、おかげで半日空港で足止めされたり。
今回も入国時のパスポートチェックでひと悶着。日本でも導入されている自動ゲート(パスポートをスキャンするだけで終わるやつ)がヒースローにも設置されています。とはいえ全部ではなくて、まだ係員の座ったブースがほとんどで、端のほうに自動ゲートが何台かあるだけ。自動化に対応したパスポートはまだ10か国ほどのようで、混雑具合いを見た係員が該当する国のパスポートを持った人々を自動ゲートに誘導します。ところがところが、その肝心の自動ゲートが不調。いっこうに稼働せず、ゲート脇のスペースで係員が必死にコンピュータ操作に取り組んでいますが、どうも上手くいってない模様。そのうちに乗り継ぎ便が迫った客を呼び出しては有人ゲートへと引っこ抜き。われわれはこんなこともあろうかと乗り継ぎ時間をタップリ目に取っていたのでよかったですが、けっこう焦った様子の人も多かったですよ。
保安検査でもモタモタしてて時間がかかること。以前は手荷物からPCやタブレットはいったん出すようにアナウンスしていたのが、最近は必要なくなったとかで、羽田ではそれでスンナリ通過していました。ヒースローでも「出さなくていいよ」というので荷物の中にタブレット入れたままコンベアに乗せたら、あらら、出てきた荷物からタブレットを出させられて再チェック。それがあちこちで何度も繰り返されているので、チェックが大渋滞してます。そんなら、最初から出せっていえよな。
帰国時のヒースローでも、またまたトラブル。チェックインから荷物預けまでがセルフ化されているのですが、そのうちスーツケースを預けるマシンが大不調。最初の1個は無事に行ったのに、2個目はダメ。荷物を運ぶコンベアがビクとも進みません。と、隣りの老夫婦の荷物も同じ目に。係りの人(そもそも人数が少ない)を呼んでも対処できず、そのうちに周囲のマシンで次々と同じ事態が! あっというまにチェックインコーナーは大混雑。
いかにもイギリスっぽかったのは、トラブル渦中に悠然と現われた口髭の老紳士。ステッキを突きながら悠々とやってくると、なにやらマシンのコンソールをカチャカチャやっただけで、あっというまにすべて解決。ならば最初から出てらっしゃいよ。このへん、むかし007ジェイムズ・ボンドが言っていた「イギリス熊は遅いけど、必ず追いつくんだ」というセリフを思い出させられましたね。
教訓としては「イギリスで飛行機に乗る時には、時間にタップリ余裕を持ちましょう」ですね。