歯を全部抜いてインプラントにする記録(オールオン4) #001
私はそろそろ齢五十にならんとする男性です。
歯には生活が現れるなんてことを言います。幸いなことに比較的まともな生活を営めていて、氷河期世代ど真ん中としては十分に恵まれた環境に身を置いている私ですが、こと歯に関しては一昔前のバラエティ番組で歯がないとイジられる下町のおっちゃんと大差ない惨憺たる状況となっております。
私の歯が崩壊に至った経緯
子供の頃に習慣的な歯磨きをしていた記憶はあまりないうえに、アレルギー性鼻炎で万年鼻詰まりのため就寝中は常に口呼吸という虫歯まっしぐらコンボ。
それなのに歯科治療に対する恐怖心が強く、上述の通り鼻炎で鼻呼吸が苦手なので治療中に溺れそうになることもあり、なかなか歯医者に行かない生活を送っていました。
とはいえ痛みが強くなると仕方なく歯医者に行くわけですが、痛くなっては削り、詰め物が取れたと言っては削り、神経抜かないとダメですねと言われては歯髄治療と崩壊への歩みを一歩一歩着実に進めてきました。
気がつけば40歳手前にして神経が残っている歯は2本程度、1本は抜歯により欠損、ほぼ全ての歯が被せ物となっていました。
精神を蝕む歯の悩みとコンプレックス
すべて保険診療でやってきましたので、奥歯は全て銀歯、前歯の被せ物はプラスチックです。プラスチックは経年により変色し、古びた白いプラスチック外装の家電と同じ色、質感になっています。
それに改めて気がついたのが約5年前、43歳頃でした。
そこからは人前で笑うことや食事をとることに抵抗を感じるようになりましたが、そんなこんなしているうちにコロナ禍のマスク生活に突入、もともとプライベートで他人と会う機会はそう多くないこともあり、かろうじてコンプレックスを誤魔かせていました。
また、被せ物はいつか確実に取れてしまうことは経験でわかっており、もしそうなったら次は抜歯になりそうな歯が4〜5本はあります。「明日か半年後か2年後かは分からないが、確実に致命的な歯のトラブルが起こる」という事実は相当に憂鬱なものです。
「歯がきたない」というコンプレックス「近いうちに必ず致命的な歯のトラブルが起きる」という悩みは常に頭の一部分を占めるようになりました。
そもそも自分が怠惰であるせいでそのような事態に陥ったという恥ずかしさから、その悩みは妻にも明かせず、妻の前でも口元を隠す生活を送っていました。
もちろん、しっかりと歯医者で診てもらって、相談しないといけないよなぁとはずっと考えていました。しかし仕事をしている身では自由になる時間もあまりなく、きっと自分の問題を解決する治療は自由診療で多額のお金も掛かるだろうしとグダグダと先延ばしにしてきたのでした。
来てしまったその時
そうして、ついにその時が訪れます。
そう、被せ物が取れたのです。
否が応でも歯医者に行くしかない状況で、いよいよ現実と向き合わざるを得ないと腹を括った私は歯医者探しのネット検索を始めたのでした。