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自称・主従ファンタジーの最高傑作 ①
前編・これが前世だ!
ある日学校終わりの下校中道端で、突然、目の前に煙のように現れたそいつはとんでもなく美青年だった。
多分日本の芸能人にはラクショーでなれるっていうか、そこらの芸能人よりは全然格段に美形だと思う。
ほどよく筋肉はついていそうだが厳つくない、均整の取れた引き締まったスタイルに、丁度中性的な麗しい顔立ちは、同じ男でも見惚れる人が続出しそうな。
178はあろうかの高過ぎもしない身長だ。ちょっとそこらへんに簡単には、歩いていないタイプだ。
こっちを見てツンとした表情をしているから、んえ?喧嘩売られる?と身構えていたら、そいつはツカツカと靴を鳴らし俺の目の前まで迫ってきて、突然跪くとこう言いました。
「会いたかったです、ご主人様」
「……………誰?」
「お会いしたかったです、私のご主人様」
「……………誰?」
知らないこんな人。二度首をひねった。
「転生したあなた様を探し求めて、人間の体を捨て、130年の時を生きて参りました、あなたの下僕です。三佐崎 鴻一朗です」
俺の名前は大佛 明人。どこにでもいる極めてありふれた高校一年生だよ。
「夜惣さま……」
そして目の前に、変な人がいる。
あろうことか、このかなりキテる人を自宅の一軒家まで連れ帰ってしまった。
親は海外に両方赴任中のたった一人住まいの家で、何かあったらかなり危ないと思うんだけど、なぜか目の前の人物に冷蔵庫のお茶を出し、質問をしてみた。
「最近流行りの転生もの夢想から抜け切れない人ですか?」
「夜惣さま、何ですか?それは」
男はゆったりした笑みを浮かべ、俺の淹れたお茶のカップに手をかける。
「あなたの前世は間違いなく、私の主人です」
三佐崎鴻一朗と名乗る男が説明するには、こんな過去がこいつと俺の前世との間にはあったらしい。
~~~~~~~130年前、明治。
男は生まれてまもなく、とある家に売られた。
そこは広大な地域に権力を持つ名家の家で、西洋諸国と貿易し、明治の世に経済的にも大成功を治めた政財界にも通ずる巨大な家だ。
そこの次期当主の息子に付き従う世話係となるよう貧しい家から身柄を買われたのだ。
息子の名前は十七夜月 夜惣という。
息子と鴻一朗の年齢はさほど変わらないが、そこで徹底的に主人を敬うよう教育がなされ、絶対服従の精神を体に叩きこまれた。
身の回りのお世話から、雑用から、護衛から、夜の相手まで。
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「えっ、ちょっと聞き捨てならない」
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いつしか鴻一朗も年頃になって久しいが、いっこうに女性と接点を持とうとも、嫁取りをしようともしない。
夜想は何度か鴻一朗に美女をあてがおうとしたが、良い結果は報告されない。
鴻一朗は夜惣にある夜呼ばれ、なぜ女と関わりを持とうとしないのだと聞かれた。
鴻一朗は夜惣に計り知れない忠誠を超えて、いつしか愛にも似た自分を捨ててもいいくらいの気持ちを抱いていた。
女と関わりどうこうなんて考えられない。
私にはあなた様が全てなのです、この身は全て捧げております、と答えた。
夜惣はそうか、と一言頷くと、鴻一朗に衣服を脱ぐように命じた。
わからぬまま命に従うと、夜惣は奥の間から日本刀を取り出し、いきなり鴻一朗の男性器を切り落とした!
血にのたうつ鴻一朗。夜惣は笑う。「では必要ないな」と。
鴻一朗はその日からより夜惣を受け入れるだけの体になった。
鴻一朗はだが嬉しかった。自分の体は夜惣に必要とされる機能を果たすだけで何よりだと、自分が夜惣のためだけに存在してる体になれたようで嬉しかった。
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「待って待って待って!それ界隈でいうとこのリョナじゃん!狂気だよ狂気狂気キョーキ、ちょっと待ってよ、それ俺なの?!本当!?」
思わず股関を押さえる。
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年月が経ち、またある日鴻一朗は夜惣に呼ばれた。
「お前はもう俺から離れて自由になれ。誰にも仕えず、誰にも縛られず、誰にも支配されず。利口なお前ならどこへ行っても一人でやれる」
「何故急にそんなことを……!?いっ、嫌です!私の体は…俺の体はもう、ご主人さまなしでは…………」
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「そりゃそうでしょ!?アンタ、
チ◯コ切ったよね!!自分で切ったよね!?」
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「私は誰よりご主人様が大切です、あなたさまが死ぬまでついていきます。永遠におそばに置かせてください、どうか、どうか……」
「………お前のそれは、幼い時分から自我すらあやふやな内に周りによって刷り込まされた思い込みだ。本当の愛情や友情、ではない。偽物の感情だ。鴻一郎、お遊びは終わった。俺の前に紛い物を持ち寄るな」
「にせ……もの……」
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「洗脳ってやつ?」
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夜惣はほぼ強制的に自分に仕える人間全てを解き放った。
広大な屋敷には、夜惣ただ一人だけが残った。
鴻一朗はショックだった。偽物の、周りから作られた人為的な感情、そんなものに自分を捧げるなと。
それでも自分が感じている気持ちは誤魔化せない、ここに確かにある気持ちだけを俺は信じる、と、夜惣のいる屋敷に一人舞い戻った。
屋敷に戻ると夜惣が死んでいた。
どうやら自らの死期を感じとっていたらしい。口から血が一筋流れていた。
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「猫かよっ!」
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嘆き悲しみ、後を追おうとする鴻一朗の前にどこからか声が聞こえた。
「死んで生まれ変わろうとも記憶は忘れる。新しい世では二人ともまっさらの記憶、離ればなれで、重なりあうことはない。ならば生きて、転生した主を探しにいかないか」
声は誘うように深い色をたたえている。
「お前にワシの不死の魂をやろう。代わりにワシは死ぬ。長く生き疲れた……。お前はこの不死の魂を持ってして、主が何度生まれ変わろうとも、どんな新しい人間になろうとも、必ず探し、出会い、仕え、つき従えばいい」
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「えっ それ迷惑だから!」
テーブルからお茶を転倒させそうになった。
「ていうか、ひどいでしょ、前世の俺!好きにやるだけやってはいリリースって人間性疑うわ!
チ◯コどうなったのそれ、ねえチ◯コどうなったのそれ!チ◯コどうなったの、ねえ!」
チ◯コが気になって仕方ない。
「不死の魂を貰い受けると不思議に体のあちこちの不調も全て無くなり、その……そこも元に戻った……」
鴻一朗は俺の勢いにちょっと照れたようにいう。
「確かに、夜惣さまは人間的に誉められる人格者などではけっしてなかった。むしろ悪鬼のごときお人柄ではあった……」
「何で好きだったの?」
素朴な疑問だ。
「不死の魂が体に入ると人間が持つ魂の色が視える。夜惣さまの命は既に体の中にはなかったが、まだ体には魂の色の残りが十分に漂いまとわっていた。とても、特別な、二つとない色の持ち主。金と銀と七色とが幾重にも重なりあう、それを黒い色が外周を包む、とても大きい。とても広い。それをずっと探して、ようやく130年の今日、同じ色を見つけたんです」
「んー、不死ねえ」
鴻一朗は信じてなさそうな俺にニヤリと意味ありげに笑って、そばにあるキッチンシンクから包丁を取り出した。
「!?」
「お借りします」
ザシュッ
そしてためらわずに、自分の手首を切ったのだ。
ヤダ─────────!!!俺ん家で何してんのオオォ─────────────────!!!???
顔色変えずに切った鴻一朗は
「夜惣さま、見てください」と己が手首を俺の目の前に差し向ける。
傷が見る見る内に閉じて接着し元通りの皮膚へと、CGのように逆再生していく。
「信じて、いただけましたでしょうか?」
「い、痛くないの?それ」
「痛いですけどね、すぐ治っちゃうんで、この程度なら慣れっこです」
どうやら目の前の出来事は嘘偽りない事実かもしれなかった。
「私を、もう一度あなたさまの足元にお仕えさせてください」
「…………仕えるって何すんの?」
「何でも!たとえば……料理も出来ますし、掃除も出来ますし、買い物も、洗濯も!」
「それ嫁じゃん」
「危害を加えてくる人間も難なく倒せます。勉強も教えられます。遊び相手にもなれます」
「便利だな……。じゃあちょっとお試し期間のクーリングオフありなら」
何を血迷ったかひとまず仕えさせてみることにした。
。
。
。
「うわ、すごい」
衝撃的な出会いから数時間後、今日の夕飯のテーブルの上に並ぶのは豪華ディナーのような彩り鮮やかなフレンチフルコースだ。
「130年生きてたらこれくらいは……」
男がこちらを見て満足そうに笑む。
家政婦さんロボットみたいだな。
食事をしながら色々話した。
「話を聞く限りだとストックホルムなんとかとかシンドロームなんとかがつきそうな心理状態にあるようだから、カウンセリングにでもかかってみて、一回自分自身を取り戻してみるようにしたらいいんじゃないですか。聞いてても、そんな130年もこだわるような人じゃないですよ、その人」
俺は良識的なアドバイスをしてみた。
だがあっさりと、良識より130年の重みに比重が傾いた。
「夜惣さま、私は正常ですよ」
何を説得されてもニッコリと表情を変えない。
「俺は夜惣じゃなくて、明人だってば」
「明人、さま」
自分に覚えさせるようにゆっくり、言い直して男は続ける。
「私は、明人さまのお側にいたいのです。明人さまがご結婚されようと、お子様がお生まれようと、私は明人さまのお家も、明人さまも守り続けます」
そう言って満足そうに俺を見つめ微笑むので、もう何も言えなかった。
中編・さぁ同居だ!
とりあえず客間と客用布団貸してやるかってことで、一階の部屋を一室空けてやった。
泥棒ったって、家の中には大した現金も貴重品も無いしね。
お風呂もご自由に使っていーよと告げた。
2階の自分の部屋のベッドでダラダラ漫画読んでいると、しばらくして部屋のノックが鳴った。
「明人さま、失礼してよろしいでしょうか?」
「ハハハ……ん?」
現れた鴻一朗は、白装束姿だった。
「え……なにそれ」
「明人さま」
鴻一朗は白装束姿で、俺に向かって座り直した。
「こんなことを、主のほうから申し使わされるならともかく、従の立場から乞おうとするのは、本来ありはしないことなのですが…」
言いにくそうだが、覚悟を決めたようにキッと放つ。
「自分から申さねば、明人さまからは一生何も無い気がいたします。
主の、ご寵愛をいただきたく存じ上げます」
「は…………?」
漫画を持つ手が止まる。
「ごチョウアイって何?」
「私をお慰みになってください」
「おなぐさみって何?」
「おたわむれを……」
「おたわむれって何?」
「お嬲りになってください……」
「おなぶりって何?」
とうとうしびれを切らしたように鴻一朗がベッドまで迫ってきた。
「つまり、こういうことです」
そう言って俺の上にのしかかる。
そのまま顔を寄せてきたので
「えええ!ちょっと!ちょっと!」
鴻一朗の顎に手をやり、必死で押し退ける。
流石に鴻一朗の顔もムキになる顔になっている。
「130年、私は誰にも身を任さず、ご主人さまだけの体を守ってきました……!」
!!!
おいおいおいおいおいおい!!?
130年溜まったものを今ここで発散させちゃらめええええええ!!!!!!
今この場で発散させようとしちゃらめ────────────────!!!!!!
俺は心の中でまるでアニメの美少女になったつもりで叫んだ。
「ちょ、ちょ!!無理無理」
「ご主人さま!」
「他の人とやれって!」
ピタっと動きが止む。
「……ご主人さまが命じるなら……、ご主人さまが見たいのなら、他の男とでも出来ます……。ご主人さまはそんなのが見たいのですか?」
自分が無さすぎだ─────!
「男じゃ立たねえもん!」
確かにこいつは類を見ない美男子だけど、男相手にムラムラしたことなんかないもん!一切。
しかも顔は美しいといって差し支えないが、体躯は下手したら俺より身長高くてガッチリしてるような気もする。
けしてマッチョとかじゃない綺麗な線の体だが、俺よりちゃんと鍛えてる感じがする。
同じ男として、わかる、わかるよ。
130年は辛いよ!気が遠くなるよ!
俺なら死ぬよ!逆腹上死する自信あるよ!きっと精液溜まりすぎ死とかするよ!
───でもノンケ襲っちゃらめえええええええええええええ!!!!!!!!!!!
「だめだ、だめだ、それはクーリングオフ案件だぞ、鴻一朗」
名前を呼ばれて鴻一朗の顔がピタっと止まった。
なんかこう、緩む顔を口元を引き結んで堪えているような表情。
これは……、これは……、………じんわりと喜んでる?
「鴻一朗、手を引くんだ。そして自室に帰れ。これは命令だ」
「くっ!………はい、ご主人さま……!」
鴻一朗は佇まい綺麗に俺の部屋から去っていった。
あ~~……。凄いの家に入れちゃったな……。
次の日は日曜日だった。
「おお……すごい……家がピカピカに片付いている……」
朝起きてびっくりした。
どうやら鴻一朗は朝の4時5時には既に起床し、家の家事に手をつけているらしかった。
昭和の人みたいだ…。いや、戦前の人みたい?明治の人みたい?
よく考えたら中身じいさんもいいとこなんだよな……。そう考えると微妙だな。
なんにせよ高校生独り暮しの散らかしきりの家は見違えるように綺麗になっていた。
風呂場なんか手抜き掃除しすぎてちょこちょこカビがあったのにな。
「おはようございます、明人さま」
「おはよーおはよー」
機嫌良く挨拶する。
「今日はご予定なぞ、ありますか?」
「いやー特には。ゲームでもしよかな」
「どこかお買い物に行かれるなら荷物をお持ちします」
「外出予定はないんだなこれが」
ふと気になる疑問があった。
「夜惣サンの顔って俺と似てんの?」
「全然違いますね!夜惣さまのお顔はもっと眼光鋭く険しくて、端正な威厳のあるお顔立ちでした。そこにいるだけで空間を震わせ威圧させていました。
明人さまはなんだか、ぬいぐるみのような顔をしています。雰囲気もほわりとして全然違います」
へっ なんだよそれ。ゆるキャラ扱いかよ。
「でも、私は今の夜惣さま、明人さまのお顔立ちも、とっても好きですよ」
「…………」
鴻一朗はとびきり美しい顔で誇らしげに微笑んだ。
。
。
。
気付いたら昼寝をしていて、口元が涎で濡れていたので、俺は風呂に行くことにした。
体を洗っていると、突如後ろからドアの開閉の音がする。
ふりかえると裸の鴻一朗がいた。
「お背中、流させていただきます」
ぺこりとお辞儀をする。
流させていただきます……じゃねえよ!
「え………昨日みたいに変なことしようとしないでよ、バスルームで」
「昨夜は……その……、大変失礼をいたしました……」
鴻一朗は怯んだような弱った顔を見せた。
そう言ってタオルを取り俺の背中を洗う。
「…………」
「…………」
「あの、明人さま」
「ん?」
「私の、その……体を見て、何も思いにはなりませんか?夜惣さまだったらいつもその、……何かしらおっしゃってきていました……」
「何かしらって?」
確かに男から見ても綺麗なスタイルの体をしているとは感心する。無駄肉が一切なく、あちこちの体の線は引き締まり美しい。
骨からして綺麗だろうなと思わせる体型だ。
瑞々しく肌は湯気を絡ませ、血色良く水分をはじけさせている。
「こう、羞恥を煽るようなことを言われてきたりとか、思わず顔が赤らむような発言をおっしゃられたりだとか……」
「うん」
「屈辱を受けるようなことをおっしゃってきたり、嘲るようなことをおっしゃってきたり、意地の悪いことをおっしゃったりと、とにかく辱しめようとしてきました」
「ねえどんなやつなの俺の前世?本当どんなやつなの」
どんなサイテー野郎なの一体。
「お願いがあります。もう一度私に投げかけてくださいませんか。また……」
「お、お言葉を?」
「はい」
はい、じゃねえよ!
「どうかお願いいたします」
「ん、んー、綺麗な体してるよ」
「…………」
「こんなかんじ?」
「あの、もっと煽るような、責めるようなお言葉をいただきたいのです」
「へえっ!!」
「もっと屈辱を感じるような………馬鹿にされるような」
こ、言葉責めってやつですか?
「そんなの言ったことな「お願いいたします」
………。
コホン
「っ!ヒョロっ、ヒョロガリが!」
俺はとにかく唯一頭に浮かんだ悪口を、大してヒョロガリでもない相手に使ってみた。
「…………」
「な、なんでお前の体はそんなに!!無駄な贅肉が無いんだよ!ヒョロガリがっ。ダイエットのしすぎか!??ヒョロガリ、年代的に育ち盛りの肉体のはずだろ!?そんなんじゃ、最後までスタミナが持たないだろ!!!もっと「肉食え!!!!」」
「…………」
「…………」
「…………」
「どう?これ……」言葉責められた?
「……うん……その、違うんですよねぇ、違うんですよねぇ、その……」
鴻一朗は困惑している。
「もっと悪のカリスマみたいな言動をよく取られてるお方なんですよね」
「カリスマじゃないもんゲーマーだもん」
コホンッ
仕切り直して俺は再度言葉責める。
「………なんなんだその肌は。シミひとつない、女より綺麗な肌をしやがって!!
女より綺麗な肌をしやがって!恥ずかしくないのか!?もしかして女の化粧品使ってんのか!!?何使ってんだ!??資生堂か!?資生堂を使ってんのか?!!
それともニベアか!??何使ってんだおい、美肌の維持は何使ってんだ!?まさかおいっ!ニベア全身に塗りたくってんのか!!??おいっ!ニベア全身に塗りたくってんジャねーよ「もういいです…。もう上がりましょう明人さま、そろそろ」
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