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闇の城と悪魔の鏡 ②

1            わいせつ

 それから首だけになったアシルには、事あるごとにあの耐え難き性的な触感が訪れ、更には、毎日アシルの首の目の前で、デイモスと自らの胴体のくねりのある交わりを、これが夜の儀式のシメと言わんばかりに定例行事として毎夜毎夜見せつけられた。

ディモスはアシルの目の前で首なし胴体を引き寄せ、何も載っていない首の切断部に舌を落とし、桃色の断面に濡れた唾液をのせながら骨を丁寧になぞり、肉のあらわになっている丸見えの箇所を唾まみれにしながら舐める。
骨と肉の隙間の盛り上がっている部分も舌でなぞり何周もする。


女の性器を弄ぶようなこのいやらしい舌使いを首の断面に受けるのが既に、得てはいけないゾクゾクとする気持ちのよい快さとなり、アシルの首の欲情までをも動かすのだった。

アシルの目の前で、彼の胴体の乳首を摘まみ、転がし、白い肌にキスマークを、己が口を使い吸い付いて丹念に模様を刻み込んでいくデイモス。

これは扇情を掻き立てるには充分過ぎる。


更には自分の胴体が、長いデイモスの性器を深々と飲み込んでいく様子さえ、分かりやすく毎日視覚教育してくれる。

「ゼクスの味わいはどうだ?#ジョカットイオ__おもちゃ__#さん」


そういってズブズブと目の前でゆっくりと加えさせていくのだから、初めは見るのを拒んでいても段々と視線を縛り付けられるようになった。


人差し指と親指で刷毛でなぞるように胴体の片方の乳首をさわさわと摘まみ動かしながら、デイモスはいう。


「街から来たセックス・トイ・マシーネ……の体は、#ポワーント__先端__#を少し中に飲み込ませただけで、俺の大きな#ル ぺニス__男性器__#を楽々飲み込める空洞が、体にすぐ空くようになった」

体をソドミエ向きに慣れさせたとの旨を自慢げにいう。

「ほーら見てごらん。#ポイント__先っぽ__#を6㎝ばかり入れるだけで」


20㎝はあろうかという血のみなぎったぺニスを、肉のひずみは菊のような弁を開いて、易々と自ら招くように苦なく全部を飲み込んでいく。
まるで自発的にしゃぶりくわえているよう。

「#グゥホース ビット__大きな男性器__#を中にすべて納める、動かさずに……。
たったこれだけで、#マシーネ__機械__#の#ル ジジ__幼い男性器__#はビクビクと快感の反応を示すように立ち上がる……」

愉しそうにデイモスは笑いながらアシルの目を見て説明する。

けっして小さくはない、熱が集まれば15㎝ほどはあるかというアシルの男性器を指で軽くつかみ、赤ちゃんの男性器とそしるデイモス。


「いやらしい#アフター__肛門__#に#カシュカシュ__隠れんぼ__#……

まあ#ミャムミャム__おいしそう__#


#デュロロ__赤ちゃんの飲み物__#を早く欲しがってる」

と母親のように赤ちゃん扱いする言葉を、長くて太いぺニスを動かしながらポンポンと投げ掛けてくる。

「アフターが#ルミャン__赤ちゃんの食べもの__#をねだって#ラ キュ__男性器__#に吸い付いている……」

自身をくわえこみ盛り上がる肛門の周辺を、カリカリと長い爪で優しく引っかきながらアシルに語り聞かせ、最後には必ず激しく貫いた。

「セックス・マシーネ……。叫んでごらん、快楽を!」


まるで本当に、アシルが性交専用のからくり人形になったように、時にはモノを扱うように乱暴に手荒く無頓着に貫いた。


アシルの首もたまにキャビネットから取り出され、自身の性器を慰めるのに、デイモスによく用いられた。


デイモスの寝所に首を持っていかれ
「もし噛んだら硫酸の桶に首を沈めてしまうか、それとも首の切り口の表面に魔法の筆で硫酸を塗ってそのまんま床に放置してやるからな」
と酷く脅され、仕方なく道具のようにデイモス自身を舐め初め、慰めた。

用が終わると口を軽く洗われた後キャビネットにまた戻される。


これでは本当に寸分の間違いなく、アシルは性的道具になっている。


ただの淫具と成り果てたアシルの首。

2           情陵

その日もデイモスは、アシルの顔に向かい、アシルのうつ伏せにした胴体の尻を向けさせ、中を拡げて見せた。


「ほら、ここが、いつも俺の#グロッサー・ペイニス__巨根__#を飲み込んでくれている#ル ポポタン ダンジュ__天使のおしり__#だ」

そういって会陰から肛門の表面を長指でなぞりあげる。


アシルはぞわぞわとする。


「すでにこんなに拡げられている」

そういって指でかなり入口を広げ、ずいぶんと奥まで見せた。
たしかに、柔軟すぎるほど異様に広がっている。


「俺のペイニスを飲み込ませた後、更に#グローサー__巨大__#なディックの模造品を再度埋め込んで、必ず二段階1セットにしている。昨日今日は終わった後もずっと開きっぱなしになっている」


「そんな…………」

勝手になんてそんなヒドいことを。

何でこんな城が焼き払われちまわないのか!
アシルは心の中で汚く罵った。


すると心を読めるデイモスが

「今まで何人の#エクソルティスムス__悪魔払い__#や牧師連中、そして騎士や傭兵が城に攻めてきたと思ってるんだ?
その度に#イルズィオン__幻影__#や、#アンヴォカシオン__召喚__#を使って、発狂させて返してやった。もしくは行方不明に………ふっふっ。ふふ。
焼き討ちなんて、この城に、簡単に火を放てるはずないのさ」


デイモスは愉しそうに思い出して笑うと、一転不機嫌そうに顔色が変わった。

「おまえの体はいやらしく、お気に入りだが、おまえの首は気に入らない。どうも、反抗的で、生意気で……。いっそ胴体だけを残し、首は消し飛ばしてしまおうか」

と脅してくるのだった。


「それが嫌なら今日は首にも従順を覚えて貰おう」

そういって、キャビネットを開け、両手で首を持ち上げ取り出すと、自分の顔のすぐそばに持っていき

「さあルジュエ、舌を出すように」

と命じるのだった。

仕方なくおずおずとアシルが自らの舌を差し出すと

「俺の舌にルジュエの舌を自ら絡ませるよう」
と命じる。


アシルは怯えながらデイモスの長い舌に自分の舌を絡ませてたどたどしく動かしていった。
デイモスの唾液の味がし、自分の口の中にも入ってくる。

「もう少し情熱的に絡ませろ」

躊躇したが結局は言われた通りに自分の舌を激しく動かし、デイモスの舌に進んで絡み付かせるアシル。

満足したのかデイモスは顔を離すと、アシルの額に自分の額を寄せてこう話してくる。

「ルジュエ……。おまえがこの城にずっといると自分の口から自ら誓えば、あの薬をルジュエの弟の元に鴉を遣わせ届けさせてもいいよ」


アシルの目が希望の光を映して輝く。

「セックス・トイ・マシーネ。
おまえのアフターは俺だけのもの。
おまえとゼクスできるのは俺だけ。
誓えるなら、あの薬瓶はルジュエにやる」

デイモスはアシルの頬に自分の唇をすり寄せてきた。

アシルは怯えながらたどたどしく言った。

「おれは……おれは、機械じゃ……、ないから……あんたの……………」


それを聞いて目の色を変え激しく怒ったデイモスは、コレクションケースのキャビネットの前のソファに胴体を置きっぱなしにし、アシルの首だけを寝室に連れ込んで、
ベッドの枕の上に首を寝かせると、一日中、朝まで、キスだけを長く繰り返し、唇を奪い続けるのだった。
わけもわからず、アシルは途方もなく唇を好きにされ続けた。

3    大鏡の向こう

そろそろと辿々しく雨が降り始めたと、心許ない大自然の音により城内へとついさっき報されたかと思ったら、雨脚は時間をそんなにかけずに、あっという間にこの夜を包む光る雷を伴う大雨となり果てていた。

大粒の雨は、樹皮を湿らせ、草葉を濡れそぼらせ、枝先をしなだれさせ、恐ろしい音を叫びながら森中を巻き上げ吹き鳴らす強風を呼び寄せた。


#森閑__しんかん__#とした普段の姿は何処かに消えてしまい、暮れた闇の中、古城だけを唯一のただ静かに佇む存在として、この嵐は浮き彫りにさせた。


◆◆◆▼▼▼▼▼◆▼◆▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼◆◆▼◆─────

外の雷雨の激しい音だけが唯一の音響となったこの城の中で、アシルの首は思い悩んでいた。

もうそろそろ一ヶ月に辿り着いてしまう。

自分は弟の視力のために何も出来なかったどころか、こうしてこのまま囚われ、淫具としての空しい終生を送ることになってしまうのか。


あのデイモスの問いに、ハイと受け答えすればあれで違う道が開けていたのかと自問するも、あの誘いは本当に効力のある魔の契約のように、あの瞬間のアシルにはヒシヒシと迫って感じられたのだ。
きっと契約破棄には強い代償が伴う。


デイモスは如何にも優しげに、尋ねるような口ぶりで聞いて来たが、きっと了承したら今以上おれを縛る堪え難い困難な鎖となるに違いない。

そうこう想いを巡らせている内に、デイモスがまたアシルの首なしの胴体を引き連れ目の前にやってきた。

「アシル、首だけの体はいいものだ。そうだろう?」


何を期待した言葉の投げかけなのかサッパリ窺い知れぬ。

デイモスは鍵を差し込み、アシルの首が飾られているガラスの蓋を開けて、自分の声をよく聞かせた。

「アシル、こうして俺の#グローサーペイニス__巨根__#を呑み込むためだけに存在している胴だけの体はよいものだ」

そうして胴体を脱がし始めた。
またおれの前でおっぱじめるつもりだ、とアシルは歯痒んだ。

一通りの忌まわしい光景が終わると、デイモスは半裸状態の胴体を目の前にポツンと置いてその場を離れてしまった。


何と嘆かわしいおれの胴体だろう。
あちこちには白いものが飛び散り、赤く腫れあがった痕をつけられ、乳首も腫れて前と大きさが違うようだ。


アシルの首が念じても指一本すら動かせない、繋がらない胴体が、不思議にピクリと動いた。

アシルは目を疑ったが、もしかしたら……と思い

動け……!動け……!

と念じてみると、紛れもなくギギギとぎくしゃくした人形のような動きを取り始めた。

そのままキャビネットの、自分の首の前まで動いてくるように念じると、胴体は一人でに、確かにこちらまで歩いて、その指先でアシルの首を取った。


「いいぞ……おれの胴体。さあ首を持ち上げて自分に接着しろ」

首を両手で挟み、胴体にピタリとくっつけた。


「ああ……やった」


ケースの中にあったデイモスの#マジ__魔術__#の薬瓶を手に掴むと履いているズボンのポケットに入れ、アシルはクルリと向き直って走り出そうとするのだが、ダメだ、首が落ちてしまう!とアシルは泣いた。

気を抜いたら胴体から転がり落ちてしまいそうになる。

仕方なく胴体が着ていた上着をスカーフのように首に巻きつけて止めることにした。


入り口を探して城の中を迷いながら走り回っているが、どこにも入り口なんて見当たらない。
おかしな迷路、異空間のようだ。

その内に、一つの異様に豪華な黒い観音開きの扉の前を通り過ぎた。

何かに誘われるように扉を開けてみると、中には、鎧や兜、そして壺のような骨董品がいっぱいと、奥に大きく、人の姿がまるまる一人分は映る、よく磨かれた、美しい装飾の、黒い縁の鏡が奥に飾られていた。

引き寄せられるようにアシルは鏡の前まできた。

「駄目だ!触るな、アシル!!」


デイモスの声が大きく響き渡った。


振り向くと、デイモスが睨んでこちらに足音を大きく立て歩いてこようとしていた。

「その鏡に触れてはいけない。その鏡は城と俺の心臓なのだ」

魔力で300年生きながらえているデイモスは、城の全ての魔力が解除されてしまうと自身も事切れてしまうと思っている。

「こっちに来るな!」

アシルは側にあった甲冑に刺さっていた飾りの剣を抜き、鏡に差し向けた。

「鏡を壊すぞ!」

切れない模造の剣だが叩き壊す真似をした。


「ああ!アシル……鏡に、鏡に触れるな!!」

手を差し伸べ、今にも鏡を守りたいが、どうすることも出来ず、その場に固まるデイモス。

「おれを返せ!弟の元へと!!返せ!!」


「そんなに……そんなに戻りたいか……」


一瞬切なげな色を顔に浮かべて問いかけてくる。

「戻りたい!!」

デイモスは目を伏せて
「分かった。目の前の鏡に「どうかアシルを元来た自分の家へと連れて行ってください」と呼びかけ、鏡をくぐり抜けて見よ。うちに帰れるよ」


「あ、ありがとう……デイモス……」


アシルは教えられた通りに鏡に唱えると、美しい鏡面は更に輝いて発光し、そして一瞬、黒くて美しい女悪魔の姿が映ってすぐ消えた。

アシルはびっくりしたが、足を鏡に突っ込んでみると、ズブとすり抜け鏡の中に入った。

振り返って見ると、デイモスが腕を組み、不服そうな睨み方で黙ってこちらをジッと見ている。

しばし10秒ほど、アシルもデイモスの顔を見てお互いに見つめあい、アシルは瞬きもしなかったが、意を決して鏡の中へと飛び込んでいった───。

◆◆◆▼▼▼▼▼◆▼◆▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼◆◆▼◆─────

ティモテは病床の床で驚いた。

どこからともなく、一瞬で兄のアシルの姿が自分達の家の中に現れたからだ。

どこから入ってきたのか全然わからない。

「ティモテ!ティモテ……薬だよ。これを……飲んで」

兄に押し当てられる薬瓶を分けながら直飲みすると、ティモテはさっきまでの苦しみが嘘のように一瞬で引いて、体が楽になってしまった。

「兄さん、兄さん、どこから入ってきたの?」


「それはいいんだよ!よかった!治って……よかった!」

兄弟は抱き合って喜びあった。

「兄さん、なんで上の服は着てないの?それじゃ風邪を引いてしまうよ」


「へへへ……よかった、おまえの目が駄目にならないで……」

アシルは泣いて笑った。

………………アシルは街に出て、お医者さんの扉を叩き、首を縫合してもらった。

お医者さんは不器用な人だったので
ガチャガチャの、ジグザグの縫い目跡が、大きく目立つようになってしまった。


アシル・ルロワとティモテ・ルロワは誰もが見間違うような似た外見をした双子の兄弟だったので
「真白い首を持つほうがティモテ
ガチャガチャの黒い縫い目がある首をしてるほうがアシルだよ」
と村でも街でも、すぐに区別されるようになってしまった───。


◆◆◆▼▼▼▼▼◆▼◆▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼◆◆▼◆─────

その頃、闇の城ではデイモスが書庫の中で、魔術書と睨めっこしていた。

「口の中の感触を肛門の感触と入れ替えてしまう魔術」「ある日突然ペイニスが二本に増える魔術」「動物の声が聞こえ出す魔術」「100メートルを越す巨人になってしまう魔術」

一体どれをかけたら、アシルが真っ赤な顔をして慌ててこの城に乗り込んでくるだろうか?

乗り込んでくれば捕獲をする。

それとも、弟のティモテをこの城に誘い込んでアシルを呼び込み、いっそ兄弟二人とも俺のセックス・トイ・マシーネにしてしまおうか……。


デイモスは良からぬ考えを巡らせてニヤリと笑った。


喋る鴉はデイモスの周りをパタパタと旋回し
「我が主人!我が主人!口と肛門を替えたらアシルは絶対怒って飛び込んで来る!!」

と悪しき主人の邪悪な考えを煽っていた。


~闇の城と悪魔の鏡~    完


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