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我ら!オカルト映画鑑賞部!
前編 これがオカルト映画鑑賞部の面々だ!
在或学園(あるある学園)───
特に進学校でもなく、特に落ちこぼれ馬鹿高というわけでもないこの高校には
トンデモ変態達が集まるたった6人しかいない「オカルト映画鑑賞部」があった。
学校屈指の愉快なスーパークレイジー達が集まるこの部に、染まりきれない極普通の男子高校生が一人混じっていた。
これは彼の記録である。
変態FileNo.1と2 本郷と門川
変態FileNo.1 本郷 彼方 (ほんごう かなた)
水瓶座 O型 178㎝
「オカルト映画鑑賞部」の我れらが本郷部長。大の虫好き。昆虫から寄生虫まで、全ての虫を愛する男。得意技は「虫責め」。
部の中ではとっつきやすく、話しやすい雰囲気のする男だが、絢辻が入部した初日、本郷に引いて彼が凝視をじいっと向けていたのを「あいつ俺のこと絶対好き!」と部内全体に自分で言い広めてしまうようなかなりの要注意人物であるには間違いない男。
かなりの天然。かなりの変人。
その奇行から、いまや学校中の「怪奇な噂話の元」になっている。
いわく「本郷は真夜中に誰もいない学校で380の悪霊を呼び出して集会を開いている」
「初代校長は実は本郷。不老不死のまま生き続けている」「タイタニックを転覆させたのは本郷」などなど。常にろくでもない噂の中心となっている。
実家は森の中の洋館。
変態FileNo.2 門川 嶺葵 (かどかわ りょうき)
牡牛座 B型 176㎝
副部長。副部長なのに役割を放棄している、部内一、いや学内一、キレやすい男。
火が年中ついたヤカンのように本来キレキレだが、自分の中のマイルールに忠実であり、~にはキレないというのが硬くルール化されているため、結果的に絢辻にとっては部内の中でも上から数えた安心して接せられる人物となっている。
だが忘れてはならない。この男は一旦火がついたら部内一、ニを争う凶悪な男であるということを。
部の中でも性は完全ノーマル。
変態FileNo.3と4 三神と華学
変態FileNo.3 三神 眞奈 (みかみ まな)
射手座 A型 168㎝
人間性はマムシのよう。かなりの変態ワースト一位を争う女子生徒。
容姿は誰がどう見ても美貌の女子だが、ドがつく超レズビアン。そのため、自分に寄り付く男子生徒を性転換手術をさせてから交際し、短期間ですぐポイ捨てするという、他人に不可逆な取り戻せないダメージを与えて心の痛まない極悪生徒である。
変態FileNo.4 華学 桂良 (かがく かつら)
牡羊座 AB型 177㎝
見た目も態度も陰。だが実は空手を幼少期から習っており中身はとんだ武道系の、舐めたら痛い目を見る男。
ボソボソと喋るのに彼の空手パンチは最強の一撃必殺である。
性の癖はかなり歪んでおり、シコる対象が「人間の様相を留めていると抜けない」という大の肉塊好きのグロテスク愛好者。
空手パンチとともに繰り出される彼の性癖が滲み出た必殺掛け声集は必聴の出来。
例
「人間の顔を留めていたら抜けねえんだよ!!」
「ボディは人間、顔は肉塊、が最低ラインなんだよ!!」
「スカルファックは違うんだよ!!」
「ちょっとでも人間ぽさを出してくると抜けねえんだよ!!」
なお三次元の人間には全く興味がないらしいので安心の性癖である(ビデオや映画の中だけ)
オカルト映画は彼にとってポルノグラフィ。
初めてのオカズはサイレント・ヒルのナース。
変態FileNo.5と6 下松と絢辻
変態FileNo.5 下松 璃利沙 (くだまつ りりさ)
射手座 B型 170㎝
ギャル。パーマかけた肩までヘア。
目は三日月目。可愛い容姿であり気さくに気安い、人懐こく見える態度だが、実は部員全員は愚か他人を全体的にどーでもいいと思っており、部員が崖下に捕まってブラ下がっていても一人も助けない自信がある。
変態FileNo.6 絢辻 笑丞 (あやつじ しょうすけ)
天秤座 B型 167㎝
「映画研究部」に入るつもりが間違って「オカルト映画鑑賞部」に入ってしまった愚かな人。没個性の無味無臭。気弱のビビリなので、退部したら部員達に何されるかわからない、と勝手に怯えて部を辞めることが出来ないままズルズル在籍している。
可愛い女顔なので三神に目をつけられているし、本郷には妙に……。
最初は嫌でしょうがなかったが、今では部員達に対して「この人達なら地球最後の日が来ても絶対に生き残ってるんだろうな」という妙な安心感と不思議な頼りがいを抱き初めてきちゃったつくづく哀れな男子生徒。
半切れた時の口癖は
「こんなんナシナシだよおお!!
あるあるじゃないよおぉ!!!!
ナシナシ学園だよおおおぉっっっ!!!」
中編 邪悪な敵、現る。が、すぐ消える。
男はヨロヨロと歩いていた。
「ふひゅう~、今日の昼食は、大好きな「苺チーズ最中タルト」だひゅー」
花壇の縁に腰かけ歓喜に打ち震えながら袋を開ける。
どんっ
誰かとぶつかった。
「うわぁぁ!ごめんなさい!急いでますんで!……こらーっ!本郷部長ーっ!!」
「絢辻、悪い!」
手から滑り落ちた「苺チーズ最中タルト」。
グシャッ!!
「あ………あわわ………あわわ………」
フルフルと震える手で、「苺チーズ最中タルト」の亡骸をかき集める男。
「オデのッ!!!オデのッ!!!!「苺チーズ最中タルト」がああ~~~~~~~~~~!!!!????!!!!」
学内に絶叫が響き渡りこだました。
「あや、……あやつじ?あいつが、オデの、「苺チーズ最中タルト」を、「苺チーズ最中タルト」を、こんな風に……」
目は憎しみに燃えていた。
「あ………ッッ、あいつをッ、殺すしかないゾッ、あいつを、殺すしかねェーッッッ!!!よくも俺の「苺チーズ最中タルト」をーッッッ!!!ブッ殺スーッッッ!!!」
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「集まったか?みんな。我ら「オカルト映画鑑賞部」略してオカンの面々達よ」
本郷が椅子に座って並んだ部員全員の顔を見渡した。
絢辻はため息をついた。
(……今日もまた部室の扉を開けると
「小テストクソ喰らえだこのヤロウ~ーーーーッッッ!!!!」
と、壁に12点と書かれたテスト用紙を貼り付け素手で殴りまくっている副部長の門川さんが眼前にいた)
(ヒィ!コンクリートにモルタルを塗った壁を!)絢辻はいきなりオープン開会式セレモニーからの精神的ショックを受けていた。
毎日、毎日、のっけからテキーライッキのダメージ。
「では、文化祭の出し物企画を集めーる!副部長門川!」
肘まで長袖をまくった本郷部長の指名。
「なんでもいーよー!!出し物なんてさーァァアアー!!」門川は、机にドッカリと思い切り足を乗せた。
「三神!」
指名が次々に回される。
「ホラー映画上映会。
女子生徒は入場無料……男子生徒は入場300万円。お金とりましょう」
「下心が見え透いていて却下!!
次!華学!」
「……グロマネキン人形……展覧会……」
華学さんがボソボソッと喋った。
「駄目だ!!そんなのヤッたらまた教師達に廃部を迫られる!!」
本郷が頭を抱える。
「次!!下松!」
「えー、わたしー!?(どーでもいーのよねェーっ!)」
ポリポリと下松璃利沙は頬をかいている。
「んーと、飲食系はどー?野外オカルトカフェー!」
「やだ!!」「一番面倒!!」「熱い!!」
文句が次々に湧いた。
「ダメだな……よし次っ♡!#笑丞__しょうすけ__#っ♡!」
「ええと「オー!いいの思いついた!!いいの思いついたぜオレはぁー!!「人体の腸展」やろーぜー!!ゴムホースを肉色にペンキ塗ってひたすら並べとくんだよ!!手間かかんねえしオカンに相応しい出し物だろ!!」
門川さんが僕に被せてきた。
「だから廃部だって、おまえらよ……」
本郷部長が多少プルプル震えてきた。
「大体ヨォーッ!!オカルト映画鑑賞部なんてお隣の映研とは違って、なーーーーーんもやんない、ただブルーレイ流してポテトチップスやポップコーン食いながらダベってるだけーぇの部活なんだぜー!?出し物だって、なあーんもやんなくていーんだよー!なーんも!!」
頭の後ろで腕を組みふんぞり返る門川。
「クズね……門川」
腕を組んだ三神が遮る。
「おおっ俺は九頭だッッ!!九頭龍だよ!!それがどうかしたか!?」
「なんなの?ここのつのりゅうのあたま……暴走族のような当て字を」
一触即発になりかけるも本郷が間を遮る。
「はい!やめやめ!次笑丞っ♡!!案出せっ♡!!」
「ぶちょおー、さっきから何かおかしいわよ」
「本郷部長……なぜ……絢辻君を……呼ぶ時だけ語尾が……」
「エロ漫画状になんだよ!」
「……しかも……絢辻君の時……だけ腰に手を当て……人差し指を立てて……イッツショータイムのようなポーズを……」
「しかも絢辻君にだけファーストネーム呼び。それセクハラよ」
「アピールか!アピールしてんだぜェこうやって!!絢辻にヨォ~」
「ねぇー、出し物だけどー、迷路がいいんじゃなーい?」
絢辻「(無個性の僕を差し置いてなんて平凡な出し物を……(イラァッ))」
そんなこんなでまた今日もこの部活は話がまとまらなかった。
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(無個性はいいよ……無個性は)
絢辻はうっとりと、手に持つ数々のビニール袋を眺めた。
今日も商店街をただ歩いただけで、商店のおばちゃんや弁当屋のおじちゃんから次々に話しかけられ
「今日も元気だねえ!これ売れ残りだから持ってきな!」
「お!秋スイカだ!夏物だけどまだあるぞ!一つ持ってて友達と食べてくれ」
戦利品が増えていく。
それもこれも無個性だからだ、と絢辻はウットリした。
個性の無い絢辻は、癖のあるオカンのメンバーともスマートにやり取りができ、角が立った試しがない。
街を歩くだけでこうして誰もに気さくに話しかけられる。
それもこれも僕が無個性だからだ、と絢辻は信じていた。
今日は日曜日。
(スイカは明日オカンに持ってって皆んなで食べようかな……)
気分が良かったので絢辻はバスを使わず、散歩がてら歩いて帰ろうとした。
住宅街に差し掛かったところだ。
「絢辻ッ!!」
いきなり持っていたスイカが袋ごと破裂した!!!!
「へっ!?」
「ふひゅゥ~~~ッふひょゥ~~ーッ!!!」
「なっ、何!?」
振り向いてそこにいたのは、小さい小太りの少年だった。
その顔は悪意と憎悪に満ち満ちている。
「絢辻ィーーーーッ!!!おまえを殺してヤるぜェーーーーッ!!!!」
「なんで!?」
「絢辻ーーーーッ!!!!おまえを殺スーーーーーーーッ!!!!!」
「何故!?」
(理由がサッパリ分からない!)
さっきまでニコニコのハットキャレット二つ顔だった綾辻は、^ ^顔のまま汗をかき固まってしまった。
^ ^;になった絢辻!
男は憎しみに満ちた禍々しい顔つきをして、絢辻に向かって銃を向けた。
「これは改造エアガンだヒュー~!フライパンも撃ち抜けるだヒュ~!改造したために三発しか弾数込められないけど、後残りの二発でおまえを効率的に殺してやるだヒュー~~ッ!!」
長い銃身が向けられた。
絢辻は思わず手に持っていた弁当やらが入っているビニール袋群で守ったが
「馬鹿め!!そんなの撃ち抜けるだっヒューーッッッ!!」
パーン!!
「何ッ!?」
「ふぅ、よかった……」
絢辻はビニール袋の中から何かを取り出した。
ブ厚い漫画雑誌だ。
「さっきコンビニで買ったのさ……」
弾は紙雑誌の中に食い込んで止まっていた。
「クソーッ!!後一発で仕留めてやるッ!!!!」
銃口が向けられる!
「危なーーーい!!絢辻ーーーいっ!!!」
男の背中を突然走ってきたバイクが乗り上げめり込んだ!
スズキのストリートバイク「GSX-S1000F」!!
車体と同色のブルーヘルメットの下からは、本郷の声が!!!
汗とともにヘルメットが外される。
「絢辻!!」
「あーっ!!それ、外さないほうがいいですよ部長!!^ ^;」
本郷はまた被り直した。
「誰だっ!?邪魔をするなッ!!」
銃口が本郷に向けられ直すと、本郷は不敵な笑みを浮かべた。
………その時!
女子高生のキャッキャッウフフとした声が曲がり角から近づいてきた。
「だからさー、マナピー、こないだ髪切ってもらった美容室の美容師がこう言うのー!」
「珍しいわね……リリサがそこまで太鼓判押す腕前の美容師なんて」
三神と下松だ!!!!!
そこへ新たな別の声が遠くから聞こえた。
「華学、テストで何点いけた?」
「100点です…………」
「ハァーーーーッ!?あの教師ぜってぇ人見て点数変えてるよなァーーーーンッ!?」
「門川さん……そんなことはないと思いますよ………」
華学と門川だ!!
(え!?僕のピンチにこの人達集まってくれたの!?嘘!!)
「本郷部長!うちの部には部員のピンチには総勢で集まる連絡網なんてものがあるんですか!?」
「ん?そんなもん……ないよ」
何言ってんだこいつとばかりに返された。
(偶然てことですか?え…?そんなの……逆に気持ち悪い)
絢辻は青ざめた顔で身震いした。
「かッ!!門川ーーッ!!??」
男は門川の姿を見て急に震え出し、顔色が豹変した!!
どうやら過去に相当痛い目に遭ってるらしい!!
「チャンス☆!」
本郷がウィンクをしながら、男の腕を後ろから掴み、銃口を天に向かせ、拳銃を取り上げた。
「あッ!拳銃!オデの拳銃ッッ」
拳銃は遥か遠くにブン投げられた。
「これだけは使いたくなかったんだが……」
本郷は懐から何かを取り出した。
「あっあれは!?本郷のヤロウッ使うのかッ!?硫酸マンとの戦いの時に用いていた”アレ”をッッッ!?」
いつのまにか門川が隣に来て解説役を担っていた!
「硫酸マン?」
本郷は目を閉じて言う。
「そうだ……いつかのクレイジー硫酸マンとの戦いの時に使用していたこいつを使わせてもらう……」
「クレイジー硫酸マンっ!?」(そんなのと戦ってた歴史があるの!?)
懐から取り出したのは、巨大回虫の入ったBOX!!
本郷は男の耳に回虫を滑り込ませた。
「イヤ゛ーーーーーッ!!」
「いけーーーーー!右耳から左の穴へと!!」
「やっ!オデッ!こ゛んなの初メ゛デッ!!」
メ゛キキッ
「突き破れーーー!!!」
ブッと鼓膜とか色んなモノを突き破った音がした。
男は鼻血を吹いた。
「処女膜☆貫通!!!」
本郷部長はやりきった顔を見せて決めポーズを格好つけていた。
「ふっふっふ、さあて、極めつけは脳が黒ゴマセサミ状になる寄生虫の卵を耳から植え付けて」
「やり過ぎ御免っ!!」
絢辻は本郷部長が手にしだした怪しい紙包を奪い去った!
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皆と別れ、道路を、メットを被せられ、絢辻は本郷にしがみついてバイクに乗せられ、二人乗りで風を切って走っていた。
「本郷部長!本郷部長は!バイクの免許!持ってたんですね!」
「は……そんなもん持ってないよ」
「は!?」
「バイク乗り回せるけど免許は持ってない状態で………来ちゃった♡」(二月遅生まれ免許無し)
「!?」
最悪の状態できたよ!この人!
「止まれ!!押していきましょう!せめてバイク押して帰りましょう帰り道は!!止まれーーーーッ!!本郷!止まれーーーーーーッ!!」
「はっはっはっはっ」
走るバイクの背に、夕焼けがとても美しかった。
後編 本郷に妹いたんだな。
「あづい!」「いつになったら着くのかしら……まったく」「あーるーきー疲れたよぉーっ!」「……戻れるんですかね、僕たち……」
ゾロゾロと歩くいくつもの足並み。蒸している凶悪な太陽の照り付け。虫の声鳥の声の飛び交う、空高くまで生え揃った木々のアーケード。
そして……『熊注意』の看板。
そう、ここは山梨県と静岡県の県境にある、富士の樹海だ……。
オカンのメンバー勢揃いして、何故こんな場所に来ているかというと……
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「実家帰るぞー!実家に」
「帰省かよォーっ!!もう夏は過ぎ去ったぞーォォオ本郷!!」
「………まだまだ暑いですけどね…………」
「九月も夏扱いしていいんじゃないかしら」
「異常気象だよねー。あーあ!やんなっちゃうー」
「ははは……。今年はカンカン日照りでしたよね」
メンバー一同が一斉に騒ぎ立てるのに絢辻も乗っかった。
しかし本郷が口にしたのは
「オカルト鑑賞会の部員全員で家に来いってよ。俺の、親が」
本郷に親いるのかよ、と門川。
「何で僕達が!?」
「さぁ……?あの親のことだから何かあるんだろうな……思惑が」
そんなの誰も来ないはず……これを読んでいる賢明なる皆様はきっとそう思うはずでしょうが
とにかく刺激に飢えているオカルト鑑賞部の面々は、気紛れに
「じゃあいこうかー」
ってことになっちゃったのです。
もーこの人達、行動パターンがまったく読めなくてボクちんげきちーん(投げやり)。
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そして冒頭に繋がる。
木々のアーチを潜り抜けても、潜り抜けても、景色が変わらない。
どこを見渡しても、背後、全方位、天井、緑、緑。
空を仰いでも苦痛の縁門が延々と視界を占領している。
「ぜぇ………ぜぇ………あれ……部長……、これ僕達迷ってません……?」
「まぁ、樹海だからな」
「……部長ー!!!」
「本郷!!まさか俺達を計画的に殺すつもりで連れて来たんじゃネーだろうなアァああッ」
「そんな、まさか」
本郷部長に集中する部員達の狐疑と視線。
「安心しろって。この森は全部本郷家所有だから。勝手知ったるなんとやらよ」
「ーーー!!本郷さんちの持ち物なんですかここーっ!!」
「うちの家系は地主過ぎてな……」
はっはっはと笑う本郷に、絢辻は目を丸くするばかりだった。
「山って普通さ、空気が冷えるもんじゃないの?」
「……めちゃくちゃ暑いですね………」
「本郷家の呪い?結界?」
「もう帰りましょう!!だいたい、本郷部長の発言に従うとロクなことがいつも発生しないんですよ!!トラブルメーカー界の紫綬褒章なんだからっ!!」
「あー、絢辻、そんなにまで言うとやってやろっかなぁ…………「クワガタ責め」」
ビクゥッ!!
「木に裸でくくりつけ、全身にメープルシロップを塗り、クワガタとの甘いひとときを味わっていただこう……」
「それ絶対痛いヤツーッ!鬼畜!鬼畜部長!!」
「さあ、絢辻………」
怪しい笑みをニンマリと浮かべ本郷は絢辻に手を伸ばした。
「うわっ!!ウワァアアアアーーーー!!!!」
絢辻は逃げ出した!!!
「はぁ………はぁ………はぁ…………はぁ………
…えっ、どこだこれ」
我に返ると絢辻は、たった一人きり、森の中を迷子になっていた。
「?……アッァア‼︎」
自分の状態をはっきり実感した絢辻はみるみる青褪めた。
スマホの電波は勿論、立ってない。
コンパスも狂いまくる、そう、ここは樹海だ。
カァ………カァ………カァ……………
名前も知らぬ謎の鳥が空のどこかで鳴いている。
絢辻は完全に自失して立ちすくんだ。
「クスクスクスクス」
すぐそばで誰かの笑い声がする。
振り向くと着物姿の少女がいた。
「………!だっだれ」
絢辻は目の前に突然現れた白地に花柄の着物姿の少女に意表をつかれる。
腰までの髪には花飾りが挿してあり、とても美しい。
「私?……本郷 牡丹」
ほんごうぼたん?本郷家関係者か!
「本郷部長の妹さんですか?」
「クスっクス」
無邪気に笑う少女。
「あのー」
「クスクスクスクス」
「ねえ、道を教えてくれる?きみんちにはどう行けば辿り着けるのかな?」
「クスクスっ」
「案内してくれないかな?」
「クスクスっクスクスっ」
駄目だこりゃ……絢辻が振り向き、立ち去ろうとした時だった。
「……『蛾責め』」
少女が腕を振り上げると、呼ばれたように突然蛾の大量の群れが現れた!!
「!?わっ」
少女の指揮に従うように、蛾の大群は隊列を無し、絢辻に向かって激しくアタックした!!
「わあああーっ!」
ビリビリィーッ!!
蛾が過ぎ去ると、上半身の服はビリビリに切り裂かれ敗れていた。
「うっうそ!」
「クスクスクスクス」
また少女が腕を振り上げると、蛾が大量に絢辻に向かってアタックしてきた。
ビリビリィーッ
ビリビリィーッ
いつの間にか絢辻は全裸に剥かれ、大木を背に追い詰められていた。
「………ぅ……う……わ…ぁ……」
「クスクスクスクスクスクス」
蛾には毒の鱗粉があるのか。絢辻は立ったまま固まり思うように手足を動かせなくなっている。
「『蛾責め』」
少女がまた手を掲げると、蛾の大群は絢辻を襲うが、今度は服を破かず、全身をくすぐったく箒で軽く履くように、素早く撫で上げていく。
「ウヒャアッー!あひゃっ!やめてー」
シュバシュバー
「アッひゃ」
シュバシュバー
「くううう!」
絹の布切れが全身を触れる触感。
ガーゼ擦りをされるように、絢辻の各敏感な部分を撫で回していく。
やめろっ!抗え!抗え!僕の心!!
しかし絢辻の意思虚しく、絢辻の体はむくむくと特異な反応を見せ始めていた……。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
一時間後、部員達は発見された絢辻の状態を見て驚いた。
本郷「…せっセルフクワガタ責め!?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
本郷の実家は豪勢な森の中の洋館だった。
やっと到着し、一同ホッと安心の一息をつき、いつものリラックスした雑談雰囲気となる。
そう、保護された救助者絢辻を除いては………。
本郷は毛布にくるまり震える絢辻の肩を抱いている。
ソファーに座り、早速人んちでテレビゲームをしはじめる門川は、振り向き本郷に問いかける。
「おまえ本当にンナ妹なんているのかヨォー?」
本郷は深刻そうな顔をして。
「…………うちに妹はいない」
驚く一同。
「エえーッ」
あ………あれは一体………
だ
れ
だ
っ
た
ん
だ
…
。
「クスクスっ………クスクスっ………クスクス………」
恐怖はこのままでは終わらない!本郷家の七不思議①お♡し♡ま♡い
『突然ですが今まで我ら!オカルト鑑賞部を読んでいただきありがとうございました。本作はこれにて打ち切り完結となります。本当は部員一人一人にスポットをあてた回が一話ずつ進行しても良かったんですが、これにて幕引きです。
本郷と絢辻が本郷の館にて一線超えられますように祈っております。
一応BLなんで。きっと超えるでしょう!!超えてください!!お祈りエンディングでした。
これからもどこかで彼らは活躍してますので、応援していてください!!機会があれば、新・我ら!オカルト映画鑑賞部や、真・我ら!オカルト映画同好会でまたおあいしましょー』
我ら!オカルト映画鑑賞部!
~完~
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