幽玄狂鬼!⑥
「よくも美女のふりをして男を襲ったな!」
怒り心頭のラウは赤ん坊を置いて妖怪に掴みかかろうとする。
「フンッ!」
目の前にいる妖怪の男は片腕を振り上げ、術を放つ。掴みかかろうとしたラウは、見えない力に寄って後ろに跳ね飛ばされた。
「見ていろ……我が先祖の虐げられた霊達よ」
地下の儀式場……。祭壇の奥に飾られた五体の木彫りの彫像が震える。
黒煙と共に五体の木彫りの像から噴き出た、五体の黒く禍々しい霊魂!
「復讐じゃ~ッ!!」 「復讐じゃ~ッ!
!」 「復讐が叶う~ッ!!」「いざ参ろう!!」「#揚__ヨン__#の家系の奴等さえ殺せれば俺はもう他には望まん~ッ!!」
悪霊は喜び跳ね踊る。
客間では妖怪がニヤリと満足げに笑っていた。
「なんだ……この……妖気は……」
思聡が横目で扉を睨んだ。
開かれた扉から黒い濛濛とした煙が入り込む!
よく見るとモヤの中に五体の黒い身体をした悪霊が、空中を喜び舞っている。
「感謝するぞ~~ーーーーッ!!」
「やっとアイツらを殺せる~~ーーーーッ!!」
「皆殺しに参る~~ーーーーッ!!」
「復讐じゃ~~ーーーーッ!!」
「#揚__ヤン__#~~ーーッ!!」
両手を伸ばし散り散りに飛んでいこうとする、5体の#大嶼山__ランタオ__#島の奴隷の祖霊達。
壁をすり抜けたちまちに消えていった。
「俺様の先祖を虐げ、酷使労働をさせる代わりに巨額の蓄財を成した、#揚家__ヤンけ__#、#黄家__ウォンけ__#、#張家__チュンけ__#の憎き子孫どもめ……今こそ向かうぞ怨祖霊が」
赤ん坊のほうを振り向きカッと目を見開く。
「そして俺様の目的にはコイツが必要だ!!」
腕を伸ばす妖怪。見えない力によって、ラウから離れた赤ん坊が宙に浮き上がり引き寄せられ、妖怪の片腕に首根の服を掴まれる。
「赤ん坊が!」
「赤ん坊は何とかする!おまえ達は悪霊を追ってやつらが狙う子孫の元へ行け!」
思聡が弟子二人に振り返り発する。
そういって鞄から八卦盤とよく似た#霊盤__れいばん__#を投げる。
悪霊を指し示せる#法具__アイテム__#である。
受け取ったラウとインは「#係呀__ハイアー__#!」と頷いて駆けた。
城の近くの#揚__ヨン__#家では。
「キャアアアアアアアアアアアアア」
一家の夫人の金切り声がこだまする。
2階の寝室に向かったら夫が血塗れになって事切れていた。
慌てて振り向き下に駆け走ろうとすると
目の前に腐食した黒い顔が現れて夫人の首を掴み赤い口を開いた。
「どうしたの?どうしたの?」
老婆が声につられて階段に向かうーーーー。
一家の祖父も後を追うーーーー。
門塀の前に黒車が駐車する。
辿り着いたラウとインは家内の惨劇を目の当たりにした。
「遅かったか!」
乾いていない血が床と壁と天井の三方にべっとりと着いている。
奥の階段に向かう程鮮血が酷く
首を叩き潰され分離された頭が、一家分、ゴロンと転がっていた。
「#哎呀__アイヤー__#……」顔を抑える二人。
悪霊は、丁度、自らの目的を成し遂げたため、光の中にあり、くるくると回りながら煙を吹き出し消え果てようとしていた。
一体の悪霊はこの世のどこからも消えた。
「次の家に急ごう!」
インがラウを車にせかせる。
もう一対の悪霊は、二体とも#黄__ウォン__#家の邸の窓に張り付き、人の歩く家の中を、白濁りする腐った眼球をギョロギョロと回し、覗き見ていた。
ラウとインの二人は無人のガソリンスタンドに立ち、車にガソリンを入れている。
「くそォ~ッ!ガソリンが足りねぇやッッッ!!」
足止めを食っていた。
「こうしてる間にも子孫の家の人々が!」
余裕なく慌てながらガソリンを入れるイン。
ラウはハッと思い出したように懐のスマホを取り出す。
指を素早く操りスマホはブルルルルと発信音を出した。
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