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欠月  Day11



◇◇◼️◇◇

帰らなきゃ……帰らなきゃいけないのに………「ウッ」………「うっ」…………


あれから、まだ家には帰っていない……………「あっん!」………「んヒぃ!」………………


何の連絡も、していない…………………………「ンァっ」………「っはあぁん!」…………


初めての家出になるから、母さんが大騒ぎしてなけりゃ、いいけど…………………………………「っっ!!出る…ぅ…っっ」………「きもちぃ……ぃいっ!!きもちぃいっ!!」…………「ぃくぅっ……!!ううううう!!…くはっ」



それどころか俺の方から正夜とやりたがって、自分から求めて、10代の体力と性欲の強さを遺憾無く発揮し、サルのようにずっと抱き合いまくっていた。

何かが壊されちゃったんだろう。

一回錠が砕け散ると、失った心の穴をガムシャラに塞ごうとして、塞ぐために、穴を開けた張本人の奴を求め出す矛盾に落下している。

俺の、俺の、家、は……。
まだ、三日目だから、セーフ、セーフだよな……?

まだ警察呼ぶとか、んな大事騒ぎにゃあ、なってない……ハズ………。
父さんも、母さんも、まさかすぐ誘拐と迄、一足飛びには考えない、ハズ。

手錠を解かれて、メシ食って、身体洗って、それから、戻るとベッドの上がシーツが替えられ綺麗になってて。


ベッドの上に座ると正夜がまた後ろから抱きしめてきて、イチャイチャされながら何回もキスしてきたから、またもうわけわかんなくなって俺から「しよう」ととうとう誘いかけてしまったんだ。


頭をもたれ唇と唇が合わさる。
「んっ……ふくっ……っ」

俺についた傷は俺の全体を傷でいっぱいにして、最初についた傷が何でもないことのように染めあげようとしているのだ。



「くそぅ……!!…ぅうっ……正やぁ……好きだ!!好き!!」

すき、と口にすると楽になれる。

俺の体は虐げられてるんじゃなくて、癒されてるんだ。
そんな気分になれる。



◇◇◼️◇◇



朔の頭に手をやり僕の首筋に埋める様抱き寄せた。
「ありがとう………朔。僕も好き」

ごめんねぇ、朔。これも撮ってるよ?


映像。


なんかあっても、好き好き言いながら僕に迫ってるようにしか見えない映像を、幾つか確保してしまった。

好きの応酬が嬉しかったのか、朔は僕の首筋に思い切り吸い付いて、湿る舌と唇でなぞった。
完全に発情したネコのようだ。自分を捨てている。




◇◇◼️◇◇


正夜の首に手を回して抱きついた。

「好きだ……!正夜……!好きだ!男だけど、好きだっ、ナンかお前がっ、好きだっ」

「僕も……!僕も好きだよ!」

「な………っ、なっんか、声が半笑いじゃね……?……っう……顔も……半笑い……ない?」

「イヤ……変われば変わるモンだなと思って…………つい……」

そう言いながら口に手を当てて、体を揺らし笑いを露骨に噛み締め始める。

「なんだよそれ!!おかしいのかよっ!ひどいだろっ!!バカっっ!!」

わけわかんねえー!本当、こいつ、キライ!!!!


「ゴメン………!ゴメン……!くっくっく」


「……………もう、そろそろ、帰んないとだよな………?」


「ん………?ああ、うん」


「それまで、いっぱい抱き着いていていい?」


「いいよ」


何であんな経緯からこんな妙な雰囲気に様変わりしているのか俺だってわかんない。

俺だってわかんないよ。


正夜の背中に両腕をまわし絡まると、顎に手をかけられキスをされながら、猫二匹のように戯れあい、転がった。






そんなことを言い交わしながらそれでも懲りずに次の日も俺は帰ろうとしなかった。

また同じように朝まで愛し合い、昼過ぎに起きた。

誰に言われないでも頭の中枢はもうかなり電源落とされてると、我ながら実感してる。

そういえば正夜は学校行ってないんじゃない…………?


「正夜学校行ってねーの?」

「朔が来てから続けて休んでるだけだよ」

どうやら普段は学校に行っているらしい。
自分と同じくベッドの上で寝転ぶ相手に、上体をひねり問いかける。

「学校はなぁ……!いいもんだぞ!ちゃんと行けよ……!高校留年なんて面倒臭いからな、それはそれで……!」

俺も学校はそこまでいいとは実は思ってないけど、兄貴風を吹かして、ちゃらんぽらんに見える年下に年上の威厳を照らしつけた。


「アドバイスありがとう」「てっ」乳首噛まれた!

こいつ!


暫くしたらご飯作るので買い物に行く、とどっかに出掛けられた。
俺はまたダラダラと借りたTシャツ一枚姿でぼんやり、一人取り残された倉庫内を視線を泳がして眺めていた。

高い天井。

天井まで10メートル近くはあるのか……。

吹き抜けられた天井には、照明が何個もついている。

業務用エアコンが幾つか、壁に取り付けられている。

プロペラのような大型シーリングファンが、出入り口の反対の一番奥についている。


床はコンクリートの上を、多分、塗り材などの加工をしてあるものが被せてあって、学校の廊下の様な、温度を一切感じさせない硬質の材質となっている。リノリウム的なツルツルとした。
転んで頭を打ったら絶対痛い。



こんな……こんな無機質な場所に住んでたら頭おかしくなんねーのかな?


四方灰色、石ずくめ、俺ならきっと、ずっといたら、自然のある風通しの良い場所に逃げたくなっちゃう。



そうこうしてる内に、奴はわりに早く買い物から帰ってきて、何やらキッチンで物音を立てながら何かを作り始めている。

男が作りそうな物とは…………カレーか?唐揚げか?焼肉か?



出されたのは大皿に鯛が1尾、あさりと彩り鮮やかな野菜と共に丸ごと乗っている……
あー!知ってる知ってる!これ。
母さんが作ってた。
アクアパッツァだ、確かそんな名前。


アボガドが大きくザク切りにされて和えられている料理

生ハムの水菜巻きサラダ

具なし醤油バター風味パスタ

キャベもやしコンソメスープ


シンプルかつガツンとしてなく、野菜多め的な。手がかかっているようで、そんな手がかかってない的な。

性格がよく出ているな。


それに酒!!酒だった!!ワイン!!!見てるだけで胃が熱くなりゴクリとする。


「え……正夜、お前、酒飲むの?」

「飲まないの?」

「俺は飲むよ!18だもんもぉ…。飲むけどさぁ……飲酒16歳か……お前って俺より不良だな、色々」

止まるのを恐れる必要はない背丈を正夜は確かにしているけど、それはともかくとして。
俺もかなり明るい髪に染めてるおかげで見知らぬ人にヤンキー扱いされたりするけど、こいつは綺麗めの整ったファッションをしているのに、色々やることにアクが強いし、ドギツ過ぎる。

料理は美味しかった。
そしてこの男は酔うと饒舌だった。
「今日の俺は酔っちゃったよー」

適当に丸テーブルの上にスナックやチーズが放り投げ出されて、正夜はパッケージを破って開ける。

「よく倉庫に住もうとするよな……」「周辺に人間のひしめきを出来るだけ感じなくて済む場所に住みたかった」「人間嫌いなの?」「嫌い好きじゃないって。壁一枚の向こうに多人数が朝も夜もうごめいているのを想像しただけで、暑っ苦しい」「絶対空調代かかるよな……」「お金ならめちゃめちゃかかっているよ……でもお金持ってるし」「何で持ってんだよ、そーいえば。金持ちの息子とかなの!?」「働いてるから」「就労してたの!?えっ……それで……?」「うん」「見えない……」

聞いてもいないのにうわ言のようにペラペラと一人でに喋っていた。
「朔って、ピアス似合いそうだよな、耳」「開けちゃえ、開けちゃえー」「僕が開けてしまおうか」「冬は、寒いよな。冬が暑くて、夏が寒ければ、夏におでん食べれるのにな」「飲めよ、朔。もっと飲んで、飲んで、胃で酒を因数分解してしまえー」「僕の肝臓はもうとうにヤられている……胃でアセトアルデヒドに分解してる」

うん、そんな重要でない、軽口ばかりを。
全力で酔っている人間が目の前にいると、何だかこちらの酔いは落ち着いてくるもんだ。


何で俺を狙ったのか


核心つくことをさりげに遠回しに聞こうとしたけど、はぐらかされてずっと軽口ばかりをペラッペラだったから、やはりこいつは酔ってても侮っちゃいけねー人間だなと思った。





◇◇◼️◇◇



ベッドが。沈んだ拍子にギシリ…と部品が部品と擦れあう音を鳴らした。

間接照明が鈍い光を放つ中、スプリングの上を、二人分の体重が軋ませのっかっていた。
ここに第三者がいたらきっと酒臭い息が充満していると思うだろう。
俺は正夜に抱きつきながら立ち膝座りをしていた。

「…………ふゥっっ!!!あっっ!!!」


三日前に入れられたあの細長い棒状のバイブを、また同じく入れられ、正夜の手の手動で動かされている。

正夜は俺の脇下から腕を伸ばし、俺の背後から、尻にバイブを入れ、引き抜いたり、刺したりしていた。

俺は奴の首を掴みながら、我慢しきれない生理に必死に耐えている。

乱層雲がかかるように俺の体を耐え難い生理の暗雲が覆い尽くした。


棒の細こいものは、構わず俺の中の侵入を当たり前のものとし、引き抜くのはやわく、絡め取る様な動作でもどかしくもゆっくりと抜かれ、差し込まれるのは乱暴に荒く無理矢理に、奥まで一気に刺される。

ズズズ………と入り口近くまで抜かれたと思ったら、中に1センチ程入ってる辺りで瞬時に奥まで、荒々しく今度は挿入ってくる。「ングあーっ!…………ハぁっハぁっ」

直腸の内壁全体を荒々しく押しのけながら、一気に最奥まで乱暴に。

軽い痛みと快楽が必ず併さる。

そしてバイブが通過する際の、通り抜ける、出口まで戻ろうと返る瞬間の、ある一点を擦る時、言い知れぬ気持ちの良い圧迫感が襲って来る。


滅多に触られないはずの自分でも知らない場所が、全部目覚めて、起き上がる。

もうこの刺激ばっかりを考えてしまいそうだ、常に。

それくらい強烈なものが来る。

バイブを持ってないほうの手が、俺の乳首とちんこを、交互に擦り責める。

乳首を優しくくすぐったり、ちんこをシコったりを気紛れに繰り返す。

正夜が俺のちんこを見て人差し指を伸ばし、先端を指で揺らして言う。
「可愛いね、ピンピンに勃ってて」
勃ってる俺のちんこの形を可愛いと褒める。
もうそれだけで熱くなり大きさが更に増した。

手が動かされた。

「ウッ……!ううウッ!……」

ぐっと引き抜かれたバイブと共に内側から溢れた潤滑のローションが、パタパタと、太腿を伝う様に垂れた。

自然と腰は動いてしまい、足はプルプルと力が抜けて震える。

俺は奴の首を纏う腕に力を入れて強くしがみつき、こちらを観察する様に無表情で見詰める正夜に乞う。

「もっと……もっと…いれてえ…………俺を深く刺してぇっ…………!もっとォ!……お、おねがい……」

言葉通りに、乱暴な一撃が来た。

「グッ!!」

身体が反り返る。

火花が体を飛び散りそうなくらい、衝撃的な快感だった。


また、やんわりと緩く引き抜かれる。

腸の中を異物が何回も、繰り返し永遠のように。俺の中を、下がり、上がり。

こんなのをもう二時間くらいはずっと、気がついたらしているんじゃないだろうか。
間でイキそうになったら手を止められ、小休止を挟まれるので、あくまで中を充分に弛め広げるのが目的らしい。
それと多分、もどかしいぐらいの弱火の快感を、延々俺に味合わせたいのだ。


「そろそろ、横になって、僕を誘ってみて」


俺は頷くとベッドに自らうつ伏せになった。横たわり、背後の正夜の顔を見つめ両の脚の間を開いて、片膝を曲げ「来て…………」とまた乞うた。

ブッ壊れてる。ブッ壊れてるよ。わかってるよ。言わないでくれって。だから。

まるでAVに出てくる女のセリフだなとわかってる。
記憶にある中で知らぬ間に刷り込まれたAV女優の真似を無意識にしてるんだ。


だって俺は今………。


















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