劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデンと京アニ


ヴァイオレット・エヴァーガーデン01

劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデンを観て参りました。

9月の上映から2ヶ月以上経っての鑑賞となりましたが、心の底から良かったです。もう本当に心の底から良かった。観に行って良かったです、良かった。

もうすぐ終演の劇場もあるというのに関西の某映画館は満席でした。皆の評価も良くリピーターも多数いるのだと思います。

感想


「あいしてる」


この言葉を、世界で一番掘り下げた作品だったと言えるでしょう。劇中でこの言葉は繰り返し登場しますが、毎回言葉の重みが軽くなることはなく、深々と重々しく心に響いてきました。

内容はアニメ本編のアフターストーリーであり、外伝などではなく本編から地続きとなる正編であると言えるでしょう。テイストとしてはたまこラブストーリーのような感じで、恋愛色の薄かったアニメ版を補完するような劇場版となっていました。私はたまこラブストーリーが好きすぎて公開当時7回も劇場に足を運んだのですが、本作もたまこラブストーリーに負けず劣らず、がふんだんに詰まった作品だったと言わざるを得ませんでした。

たまこラブストーリー

Fig 1. たまこラブストーリー

私は、たまこラブストーリーを鑑賞していない人は『たまこまーけっと』を観たとは言えないと思っています。同様に、劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデンを鑑賞していない人は『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』を観たとは言えないんじゃないかと、そう思ってしまうほど内容が濃く、作品の主題を決定付けるほどに重要なものとなっていました。副題を付けるとしたらヴァイオレットラブストーリーになるでしょうか。少し大人向けのたまこラブストーリーという感じでしたね。

たまこラブストーリー02

Fig 2. たまこラブストーリーキービジュアル

ヴァイオレット・エヴァーガーデン02

Fig 3. ヴァイオレット・エヴァーガーデンキービジュアル

Fig 2, 3ともにメインヒロインの一枚絵ですが、どこか共通するものを感じないでしょうか?

どちらもヒロインが本懐を遂げるというか、一皮むけるというか。両作品ともに女性脚本だけあって女性を主人公に置いた葛藤と成長の物語になっております。また、アニメ本編でのある種意図的な不足を巧妙に回収する劇場版となっているような気がします。たまこまーけっとではたまこちゃんともち蔵くんの関係性が、ヴァイオレット・エヴァーガーデンではヴァイオレットちゃんとギルベルト少佐の関係性がずっと気になっていました。否、気にならざるを得ないアニメになっていたと思います。それを劇場版できっちり回収する。本当に観てほしいのはココなんだぞ、と言わんばかりに。

なので改めて言いますが、ヴァイオレット・エヴァーガーデンが少しでも気に入った人は鑑賞必至の作品だったと言えるでしょう。

しかしまあなんというか、ヴァイオレットちゃん、美麗ですよね。

京アニと言えばその圧倒的な作画力が売りの制作会社だと思います。今回は劇場版ということもあって、作画・美術・音響のどれもが優れていました。思わず拳を握りながら感涙したものですよ、本当に。

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Fig 4. ヴァイオレット・エヴァーガーデン原画 by 私たちは、いま!!特別展

京アニの原画は本当に繊細で、細部まで隈なく描写された作画は見る者の心を打たずにはいられません。

また、脚本は吉田玲子先生となっており、同じく京アニ所属女性脚本家の山田尚子先生と双璧をなすだけあって、とても繊細な心理描写・感情表現が盛り沢山でした。

アニメで大事なのは台詞と間だと思いますが、終盤のシーンなんかこれでもかと言うくらいの台詞と間でした。

全てを語る台詞と、何も語らない間。そのコントラストが臨場感を表現していました。まるですぐそばにあるようなリアリティを醸造しておりました。心の底から、ヴァイオレットちゃんを応援している自分が、そこには居りました。


京アニ放火事件を超えて

忘れもしない2019年7月18日。京都アニメーションは令和史上最大のテロリズムの被害に遭いました。私は事件当初居ても立っても居られなくなり、事件後すぐさま現場に駆けつけましたが、現場となった第一スタジオは見るにも堪えない凄惨な有り様となっており、思わずその場に跪いてしまうほどでした。

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Fig 5. 京アニ事件当時撮影した京アニショップ

これは事件当時に私が撮影した京アニショップの写真になりますが、写真中央右にあります通り劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデンは本当は2020年1月10日を予定していたんですが、それが放火事件やコロナ禍に見舞われて随分と延期してしまったのです。

そして、本当は2019-2020年は京アニにとっては映画yearであり、世界への飛躍の年でもありました。これまで純日系ばかりのキャラクターを描いていた京アニが、ヴァイオレット・エヴァーガーデンという西洋的な作品を手掛けたことには世界進出に対する思い入れがあると思うのです。

昨今は、日本のアニメが世界中で見られるというのが当たり前となってきましたし、Youtubeのコメント欄なんかを見ても日本のコメントより海外のコメントの方が多いなんてことがざらにあります。ヴァイオレット・エヴァーガーデンなんてその筆頭であり、実に多くの地域で愛されていることが分かります。

そんなこんなで公開までに紆余曲折あった劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン。私も本作のクオリティや出来映えをとても心配していましたが、そんな心配はすべて杞憂だったと思わせるほど、凄惨な事件があったなんて思わせないほど、或いはそんな事件を強く乗り越えたからこその圧巻のクオリティでした。強く、美しい、作品の生命力が本作にはありました。

京アニ完全復活!とはまだまだいかないかもしれませんが、それでも京アニここにありという力強い意志を感じざるを得ませんでした。

事件で随分と多い若い命を失ってしまいましたが、それでも今後も石立太一先生や吉田玲子先生、山田尚子先生のような神にも近い存在が育つことを強く期待します。

期待させてください、これからも。

#PrayForKyoani



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