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投資判断可能なカスタマーサクセスとは

皆さんこんにちは、山田ひさのりです。私は自身のミッションに「カスタマーサクセスを世に広めること」を課していますが、すでにカスタマーサクセスを学び、有効に活用している事業者まだ多くはありません。この理由について私なりに熟考した結果、「カスタマーサクセスは極めて投資判断がしづらい活動である」という結論に達しました。

これを受けて本noteでは以下について考察していきたいと思います。

  • なぜカスタマーサクセスは投資判断がしづらいのか?

  • どうすれば投資判断できるようになるのか?

カスタマーサクセスのムーブメントはまだ発生していない

私はSaaS(Software as a Service)の世界で活動しており、その界隈においてカスタマーサクセスはもはや常識になっています。リカーリングの収益モデルを有している事業は、顧客に継続して選ばれ続けることが重要であり、そこに責任を持つ組織が必要なことは言うまでもありません。

このような社会・経済背景から誕生したカスタマーサクセスですが、実はすべての業種業態にフィットするものでもありません。カスタマーサクセスは文字通り、顧客にアウトカムを与えて顧客を「サクセス」状態にすることを目指します。この際に重要なのは「アウトカムとは何か?」という問いです。

アウトカムの説明は上の記事に譲りますが、あるビジネスにスタマーサクセスが適用可能かどうかは以下の2つを満たしているかによって判断できます。

  1. 顧客に与える「アウトカム」を定義(特定)できる

  2. そのアウトカムを顧客への付与量を(疑似的に)計測できる

SaaSにカスタマーサクセスがフィットするのは、この2条件を満たしているからです。逆に小売りなどの場合は、購買後の顧客の行動を追跡できず(2.が不可能)、かつ顧客に与えるアウトカムもあいまい(1.が未特定)であるため、カスタマーサクセスが適用しづらいのです。

裏を返すと上記の1,2が成立しているビジネスの場合、ビジネスコンセプトとしてのカスタマーサクセスはフィットします。そのようなビジネスはSaaS以外にもたくさんありますが、そのカテゴリーの事業者がカスタマーサクセスを高い関心を持ち、取り入れようとしているかというと、まだそうでもありません。

その大きな原因の一つは、カスタマーサクセス自体の認知度でしょう。バーチャレスク・コンサルティングの調査によると、カスタマーサクセスの認知は5パーセント程度とのことで、まだまだニッチな概念ではあります。

カスタマーサクセスの効果はどこに現れるのか?

しかし、カスタマーサクセスが扱いにくい理由はこれ以外にもあります。バーチャレスク・コンサルティングの調査によると、サブスクリプション型の商材があるビジネスであっても3割以上が「効果があるとはいえない」と回答しています。非サブスクリプション型だと5割以上です。

出典:2024年カスタマーサクセスに関する実態調査

カスタマーサクセスは、そのプラクティスを正しく実行するとその効果を実感できます。

例えば、これまでカスタマーサクセスを実行していなかった事業者が、そこに着手し始めたとします。サブスクリプションビジネスの場合、まずその効果は解約率の低下として現れ始めます。この事実はこれまで「解約を止めるのは難しい」と感じていた事業者からすると大きな前進です。(第一の効果)

次に現れてくるのは、エクスパンションと呼ばれる追加受注です。カスタマーサクセスは顧客にアウトカムを与えるビジネスアプローチであることはすでに述べたとおりです。一般的にお客様は、契約しているサービスが事業成果をもたらすことを実感すると、そのサービスに対する追加投資を検討します。これが第二の効果です。

ここにまで至った事業者は「カスタマーサクセスは事業にとって必須である」と考えるようになりますが、一方で時間が経過すると第一の効果が薄れ始めます。これは離反顧客の削減率が上限に達し始めるからです。ただ、これ自体では問題ではなく、むしろやるべきことをやり切った結果と前向きに捉えることができます。では第二の効果はどうかというと、ここにも問題が発生し始めます。それはエクスパンションの再現率がわからないということです。これは事業を推進する上では特に深刻です。

一般に、カスタマーサクセス活動は以下のステップを踏みます。

  1. 顧客への支援(オンボーディング、アダプション)

  2. 自社製品の解約率の低下

  3. 自社製品の追加受注の拡大

これは直感的に理解できるでしょう。しかし、ここに人的リソースを割り当てる立場からすると、「どれだけの投資をすればどれだけのリターンがあるのかを極めて読みづらい」という問題に気づきます。

カスタマーサクセスはプロフィットセンターなのか?

この投資コストの読みづらさはそのまま「カスタマーサクセスはプロフィットセンターなのかコストセンターなのか?」という議論へと発展します。これは長らく議論されているにもかかわらず、まだ回答が出ていない問いの一つです。

カスタマーサクセスは事業のトップラインを上げる活動なので、その意味ではプロフィットセンターと捉えるのが妥当な気がします。しかし、カスタマーサクセスの業務の6~7割を占める1.の活動は純粋に利益を生み出していません。この観点から考えると、カスタマーサクセスはコストセンターと考えたくなります。

「カスタマーサクセスの業務の6~7割を占める1.の活動~」は私の定性感覚です。

メモ

これは決めの問題のようにも見えますが、実はそれを受け持つ組織のミッションや目標設定、評価などとも関係する奥深い話です。そして私は、この論争に結論を出せていないことこそが、カスタマーサクセスに事業内投資が集まらない理由だと考えています。

ここでプロフィットセンターについて少し掘り下げてみましょう。プロフィットセンターの解釈は一般的に「利益を生み出す部門」とされています。そしてプロフィットセンターと位置付けられた組織のミッションは自然と利益の最大化にポイントされます。

そしてここからが重要なのですが、実はある組織をプロフィットセンターと判断する際には、利益を最大化するための計算式が存在していなければならないという暗黙の了解があります。例えばセールス組織であれば、

  • インバウンド・アウトバウンドの有効商談数

  • 戦力化した営業マンの人数

  • 商品の受注単価

  • 受注までのリードタイム

などの変数によって、どれだけ人数を投下すればどれだけの利益が生まれるかを計算することができます。マーケティング組織にしても(営業ほどシンプルではありませんが)発想は同じです。

ではカスタマーサクセスはどうでしょうか?実はカスタマーサクセスはその活動がどれだけの利益を生み出すかの計算式を持っていないのです。これこそが、カスタマーサクセスをプロフィット or コストエンターと位置付けるかの判断を難しくしていると私は見ています。そしてこれを計算できない場合、経営はカスタマーサクセスをコストセンターと位置付けたくなります。このように判断されてしまったが最後、カスタマーサクセスに攻めの投資が集まることはないでしょう。

カスタマーサクセスの利益算出式に対する考察

カスタマーサクセスは利益算出式を持つことはできないのでしょうか?実はそうでもないと私は思っています。前述したカスタマーサクセスの活動ステップに立ち返ってみましょう。

  1. 顧客への支援(オンボーディング、アダプション)

  2. 自社製品の解約率の低下

  3. 自社製品の追加受注の拡大

このフローをもう少し細かく紐解いてみると以下の図のようになります。

図表1

当然ですが、「1.顧客の支援」はすべてのCS活動の基本です。1はより厳密に説明すると以下の段階を経ます。

 1-1. サービスの活用促進による業務効率化(ライトサクセス)
 1-2. アウトカムの創出(ディープサクセス)

これ以降は話を簡単にするために、1-1,1-2を合わせて「1.顧客の支援」と総称します。

メモ

そしてその結果として「2.解約率の低下」「3.追加受注」へと繋がります。では、どの程度1を行えばどのぐらいの2,3が発生するのでしょうか?この問いに対して「わからない」と回答する方も多いかもしれませんが、実は3~4年以上サービスを継続できており、3桁程度の顧客数を持つ事業者であれば、過去の実績データからある程度の数値を算出することができます。

利益算出のプロセスを Step by Step で考える

過去実績を振り返る前に、2,3がどのようなプロセスで創出されるかを考えてみましょう。上記で「1.はすべてのCS活動の基本」と書きましたが、これは本質的には、顧客を十分にサービス利用している状態に導くことを意味します。ここで重要なのは「十分なサービス利用とは何か?」という問いです。考え方としては、「この程度までサービスを活用できていればふつう解約は起こりにくい/追加受注を検討するはず」というラインです。

読者によっては、「解約が発生しにくい活用ラインと追加受注の検討ラインは異なるのでは?」と思う方もいるかもしれません。厳密にいえばそのとおりなのですが、私のコンサル経験ではこの2つのラインを同じに扱ってもそこまで不都合は出ませんでした。ただし、より厳密性を追求する方は分けて定義してもいいと思います。

メモ

「2.解約率の低下」「3.追加受注」を目指すのであれば、まずは「1.顧客の支援」によって、この状態(=十分なサービス利用)にある顧客を増やすことが重要です。ではこの「十分なサービス利用」はどのように定義すればいいのでしょうか?これは一見難しそうに感じますが実はそうでもなく、

  •  定性的に製品を活用できていると判断できる顧客群(from CSMインタビュー)

  • それらの顧客のプロダクト利用実態(from プロダクト活用ログ)

を両面からつぶさに観察することで、「この程度使えていれば、十分な活用といえる」というラインを発見することができます。

図表2

この定義は提供しているサービスによってさまざまであり、その閾値も一意に決まることはありません。あくまで自身の感覚を信じて考えてみてください。ちなみに私はこの指標を「CSメトリック」と呼称しています。CSメトリックはヘルススコアの一部かつ最重要指標となります。詳細は以下の記事をご参照ください。

これが定まったら、次は解約予防・追加受注の観点から、顧客をそのラインに導くまでに必要なCSリソースを考えます。

解約予防に必要なリソース

例えば今現在、10名のカスタマーサクセスマネージャー(CSM)と320社の顧客が存在しており、解約率を年15%にできているとします。その解約率を維持するために、1CSMあたり何社の顧客数(もしくはARR)を保持すればいいのかはダイレクトに計算可能です。(320÷10=32)
これは「1CSM当たりの担当顧客数」という数値で表現され、SaaS界隈では保持することが常識となっています。1CSMあたり、最大で何社の顧客を保持できるかはサービスの特性によって異なります。顧客保持可能数はサービス単価(≒サービスの課題解決規模と複雑度)と相関するといわれており、単価の低いサービスほど多くの顧客を保持することが一般的です。ネットにもさまざまな情報が基準値として公開されているので参考にされてみてください。

解約率の下限は「ARR100億円規模に到達したSaaSでは年10%以下が理想」といわれています。これはサービスの性質やターゲットインダストリー、取扱単価などによるので絶対的な正解はありませんが、私が見聞きした範囲では国内外合わせておおむねこのパーセンテージ内に収まれば優秀とされています。そしてこの数値は(上記で定義した)十分なサービス利用状態にある顧客数を増やしていけば、そこに少しずつ近づいていきます。

このように、解約予防に関してはリターンを見積る式(≒参考値)が存在しています。経営からすれば、解約率がこれ以上減らない(もしくは減らすのに著しくコストがかかる)というところまで、CSMの人数を増やしていけばいいだけです。その際にリンク先の人数目安感を参考にすればよいでしょう。

追加受注に必要なリソース

これは算出が難しいように感じますがそうでもありません。実は、十分なサービス利用に達した顧客が追加受注に至った金額とリードタイムの過去データを集計することで算出できます。ここで重要なのが追加受注の定義です。つまりは「何をもって追加受注とするのか?」を考えなければなりません。例えばIDベースの課金体系をもつサービスの場合、1IDの追加であっても追加受注とみなすかは議論の分かれるところです。これは完全に事業者側の判断で決定してしまってかまいません。とにかく「自身にとって有効な追加受注」と判断できる金額や条件を探しましょう。

ここに至るまでに、「a.十分なサービス利用」の定義は完成しています。そしてここで「b.追加受注の範囲」も定義できました。これらが決まれば、a に至った顧客の何パーセントがどれぐらいの期間を経て b に至るのかを集計することができます。そしてそれは利益の最大化を計算式となるのです。

図表3

一般的にオンボーディングと呼ばれる支援は、顧客をこの「十分なサービス利用」に導くための前提条件を整える行為を指します。サービスによりますが、オンボーディングのみで顧客を「十分なサービス利用」に導くには期間が足りないことが多く、その後のアダプションフェーズまでかかることが通常です。

メモ

例えば、
a. 十分なサービスの利用:一日の契約ユーザーあたりのPOST数が7以上
b. 追加受注の範囲:上位プランへの移行 or 50以上のID追加(約20万円)
→ a に至った38%の顧客は、3.4カ月以内に b に至る

などの式が出てきます。

この確からしさを証明するために、a に至っていない顧客が b に至る確率も求めてみてください。おそらくはかなり低く出ると思います。また、a に至った顧客とそうでない顧客の過去の解約率も求めてみてください。おそらくかなりの差分が出るはずです。

a とそうでない顧客の「解約率」「追加受注率」はこれまで数回クライアントワークの中で比較したことがありますが、感覚的に両者で20~40ポイント程度差があることが多かったです。

メモ

aに至るまでの工数を見積る

ここまできたらあとは顧客が a 達するのに必要な工数を見積もればいいだけです。これは実績ベースで算出可能です。(もちろん支援および商談記録が残っている必要があります)

例えばですが、

  •  a に至るのに必要な期間は、オンボーディング成功後3.2カ月

  • オンボーディングで掛かる工数:CSM 2人月(顧客規模に依存)

  • アダプションで掛かる工数:CSM 0.4人月(顧客規模に依存)

などの数値が出てきます。オンボーディングやアダプションでかかる工数は、顧客規模などの支援の複雑性に依存するが普通なので、その軸で場合を分けてもかまいません。

上記の例からわかるのは、オンボーディング~アダプションに3.2カ月間、2.4人月かければ、38%の顧客が約20万円の追加受注をするということです。これは立派なプロフィット最大化の計算式になりえないでしょうか?

追加受注までの期間でなく、追加受注商談までの期間を算出してもかまいません。これでも立派に算出式として機能します。

メモ

「解約予防」「追加受注」の計算式を組織区分に接合する

ここまで算出できれば、これらの式を実際の組織に当てはめるだけです。カスタマーサクセスのミッションパータンは主に以下の2つです。

① カスタマーサクセスは解約予防にのみ責任を負い、追加受注はポストセールスのミッションとする
② カスタマーサクセスは解約と追加受注の両方に責任を負う

①、②のどちらにせよ、カスタマーサクセスは解約予防に責任を負うので、まずは「解約予防に必要なリソース」で説明したとおり、CSM一人当たりの顧客数(or ARR額)を見積ります。その後は単純に顧客増に伴いCSMの人数を増やせばいいので、どの程度の追加投資をすればいいのかの判断は簡単です。一般的に「a の状態」が正しく定義されていれば、解約率は自然と下がってきます。現場のCSMには以下の目標をセットします。

  • 現在の1CSMあたりの顧客数を維持、もしくは微増(市場水準を意識)

  • 現在の解約率を維持、もしくは微減(市場水準を意識)

  • a の「十分なサービス利用」に達した顧客を増やす(最注力)

次に「追加受注」ですが、これは a 状態にあるの顧客数がわかれば、そのうち何パーセントがいくらで追加受注に至るかはすでに算出されています。よって、①のケースではCSMから供給される a 状態の顧客数に応じて、ポストセールスが追加受注金額を負います。しかし、②のケースでもあっても、同じCSMが2つのミッションを担っているにすぎません。よってCSMは自分の中で2つのKPI「a 顧客の数」と「追加受注額」を意識し、その達成までを管理することになります。

個人的な見解ですが、私は①のパターンを推奨しています。なぜなら a 顧客の数を増やすだけでもかなりの労力を必要とするためです。特にオプションやプロダクト数が多い場合、その労力はかなり肥大化します。
一人の担当が両方のKPI持つメリットとしては、a に至る間に構築した顧客との関係を有効に活用できたり、商談機会に目を光らせやすいということがあげられますが、それを差し引いたとしても a に掛かる労力は甚大でしょう。

メモ

サクセス活動は商談パイプライン管理と(たぶん)同じ

では、仮にあなたが既存顧客からの利益最大化に責任を持つ組織の長で、経営から大きなストレッチ目標を設定されたとします。あなたはこれまで算出した計算式のどの変数を最大化に行くでしょうか?操作可能な変数としては、

  1. 「a. 十分なサービス利用」に達する期間の短縮

  2. 解約金額の着地見込みの低減

  3. a →「b. 追加受注」のコンバージョンアップ

  4. a →「b. 追加受注」までのリードタイムの短縮

程度でしょうか。参考までにこれ以外にも以下のアイデアもあります。

 5. 商品ラインナップの充実による提案機会の増加
 6. 価格改編による実質値上げ

もちろん、1~4と5~6のハイブリットでもかまいません。しかし、5, 6は自組織だけでできることでもありませんし、短期間で現実的にできることといえば、3,4に留まってしまうのではないでしょうか。上記のメモにも書いていますが、1は(取り扱うサービスに依存しますが)それを著しく短くすることは簡単ではありません。また、2~4の実行可能性は a が前提になっていることはすでに説明したとおりです。

このように考察していくと、私はカスタマーサクセスにおける解約予防および追加受注に特効薬はなく、むしろ、過去実績から正しく計算された算術式に基づいて事業計画を着々と進行することが、その真のミッションに見えてきます。

これはセールスのフェーズ管理の考え方と同じで、商談フェーズがまだ初期段階にある顧客に強引に商品の購入を促してもその顧客は簡単には動いてくれません。腕の良いセールスはこのような事態を避けるため、自身の商談パイプラインの管理をしっかりと行い、未成熟な商談を無理に動かすことを避けるとともに、パイプラインの各フェーズにある商談が極端に欠損しないように配慮します。

これをカスタマーサクセスに当てはめてみるとどうでしょうか?CSMはまずサービス利用率のパイプライン管理を行います。つまりは、

  • 顧客はサービス利用をテイクオフできているのか?

  • 社内の利用拡大は順調か?

  • アウトカムは創出されつつあるのか?

  • a の「十分なサービス利用」に達しているのか?

などの管理です。

そしてこれまでに作った計算式によって、a の状態に達した顧客がどの程度の確率で解約を予防でき、どの程度の額の追加受注が生まれるかはわかっています。そうなるとCSMは四半期~半期末で自身の目標数値がどのあたりに着地しそうかを見積ることができます。

個人的な意見ではありますが、カスタマーサクセスの次期の目標数値は本来的にはこのようなロジックによって決定されるべきでしょう。特に上場企業は四半期ごとに着地見込みを正確に見積ることが求められます。事業成長の観点から強気の目標を設定したくなる気持ちはわかりますが、リスクヘッジとしてきちんと筋の通った計算式を保持することをお勧めします。

社内外の目標をどのように設定すべきかは、また別の話だと思っています。

メモ

カスタマーサクセスの組織長は収益算出式を保持しよう

スタートアップSaaSの支援のよくある相談の一つに、「達成できる見込みのない目標を経営にコミットさせられたがどうすればいいのか?」というものがあります。これは回避不能な災難に見舞われたようにも見えますが、私からすると、この記事で説明してきたような収益計算式を保持する努力を怠ってきたからこそ発生しているのだとも見てとれます。

経営層は事業計画を達成するためにストレッチした目標を下してくるのはよくあることですが、現場はそれに対して正当なロジックでそれを押し返し、現実感を持った着地点に落とすことも時に求められます。その時に今回説明したような収益計算式ががないと、経営がストレッチ目標をそのままフィックスしてしまうのは無理からぬことでしょう。

一方でロジックの通った収益計算式を持っていたとしても、あえてストレッチ目標を狙いに行くという事業成長戦略もあり得ます。この場合、カスタマーサクセスの収益計算式は「現実からどの程度乖離がある目標を設定しているのか?」の確認に使われます。

カスタマーサクセスはまだ誕生して歴史が浅い分野ですが、その活動エッセンスの一部はセールス分野に存在しています。現在はセールスが科学されており学ぶべきロジックやプラクティスが多く存在します。カスタマーサクセスはその考え方を拡張し、自社の事業にマッチするものに組みなおすことを求められます。カスタマーサクセスを暗に「特別な存在」と考えずに、一つひとつ丁寧にロジックを積み上げていきましょう。僭越ながら、私もそのためのお手伝いをさせていただきます。

おわりに

本記事で紹介した利益算出式は、私のカスタマーサクセスのコンサル経験からはじき出したものです。その際に特に「カスタマーサクセスの収益効果を算出してほしい」とお願いされたわけではなく、私が勝手に「こういう式があれば、着地見込みをより正確に出せるな」と考え、クライアントと協力して出してみました。算出の結果、「ARRを積み増すためにどのような観点で努力すればいいのか?」を算出式の因数分解から考えられるようになったことが大きな成果でした。

とはいえ、まだパブリックに公開できるような確立されたプラクティスに仕上がっているわけではありません。なので、この記事をご覧になられた企業の方で、

  • 自分たちもこのような利益算出式を持ちたい → 一緒に算出してみませんか?

  • すでに似たような考え方で収益予想をしている → インタビューさせてください

というケースに当てはまる方は是非 @hisyamada にDMください。この問題を解消できれば、世の中にカスタマーサクセスが広がる起爆剤になると思っているので私も非常に前向きです。


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