ヌサンタラ ~島々の間で調和と協力を~
インドネシアの首都は「ヌサンタラ」?!
そう思われましたか?
実は、インドネシア政府は
首都を「ジャカルタ」から
「ヌサンタラ」へと移転することを
2021年に閣議決定しているのです。
本記事ではインドネシアの新首都予定地、
ヌサンタラについて書いてみます。
Nusantara。
nusa(島々)とantara(~の間)が
合わさった複合語です。
「島々の間の調和の取れた協力関係」の意味。
17,000ほどある島から成る
島国インドネシアには、
ぴったりの名前かもしれません。
場所は、カリマンタン島の東部!
今のジャワ島からけっこう離れる。
ジャングルが広がる自然豊かな土地!
この島は「ボルネオ島」とも呼ばれます。
実に日本の国土の約1.9倍の広さです。
グリーンランド島、ニューギニア島の
次に広い、世界第三位の面積の島。
あまりに広いため、この島には
「三つの違う国」が存在しています。
「一つの島=一つの国に属する」という
環境に慣れている日本からすれば
違和感がありますけれども、
世界には「国境がある島」もあるんですね。
例えば、ヨーロッパのアイルランド島には
アイルランドとイギリスの国境があります。
ニューギニア島は
インドネシアとニューギニアに分かれている。
ティモール島も
インドネシアと東ティモールに分かれる…。
インドネシアでこういうケースが多いのは、
「植民地時代の宗主国が違った」からです。
特にカリマンタン島は広いため、
イギリスとオランダが分け合っていました。
第二次世界大戦中には日本が占領しましたが、
戦後、元のオランダ領において
1950年にインドネシアが独立。
元のイギリス領においては
マラヤ連邦=マレー半島の国と
カリマンタン島の一部、シンガポールが
1963年に統合してマレーシアが成立。
1984年にはイギリスの
保護国下に置かれていたブルネイが独立…。
そんな三つの国が存在する複雑な島に、
首都を移転しよう、という。
そもそも、なぜジャカルタじゃダメなのか?
…そこには現首都ジャカルタが抱える
数々の問題があります。
ジャカルタはその昔、
「バタヴィア」と呼ばれていました。
オランダの東方での貿易の中心地。
1619年に東インド会社が制圧した。
「ジャガタラ」とも呼ばれていました。
江戸時代の日本とも貿易を行い、
ジャガタライモを伝来させた街です。
これが「ジャガイモ」の由来。
元々はアンデス山脈が原産地ですが
アステカ帝国を滅ぼしたスペイン人が
東南アジアに持ち込んだ。
それをさらにオランダ人が
日本へと持ち込んだんですね!
(後に北海道などで盛んに栽培されます)
1942年、バタヴィアを制圧した日本軍は、
ジャガイモの名の由来で親しんでいた
ジャガタラの名から「ジャカルタ」へと
この街を改名させました。
元々バタヴィアは、
オランダに住んでいたゲルマン人の部族
「バタヴィ族」から取った名前なんです。
ふさわしくないと思ったんでしょう。
インドネシア独立後に首都となり、
現在、約1,000万人の人口を誇っています。
インドネシア国内の多くの人口が
この街へと集まってきている…。
世界トップテン入りの人口密度!
まさに『メガ・シティー』です。
…しかしそのため、この街では
慢性的な「渋滞」が発生しています。
とにかく人も車もめちゃめちゃ多い!
生活者が多い、ゆえに廃水も多く、
「水質汚染」が進んでいく…。
しかも「洪水」が起こりやすい。
ジャカルタでは「地盤沈下」が進んでおり、
面積の半分以上が海抜ゼロメートル以下。
1階がすべて「浸水」することも多い。
かつ、活断層も近くにあります。
インドネシアは日本と同様「地震大国」。
2004年のスマトラ島沖地震。
2018年のスラウェシ島地震。
2022年のジャワ島西部地震。
いずれも、多数の死傷者が出ました。
つまり、ジャカルタは
◆過密、渋滞、洪水、浸水、
水質汚染、地盤沈下、地震、津波…
そんなたくさんの危険性を抱えている。
あと人口の分布や政策から言えば、
現在は『ジャワ島一極集中』とも言えます。
だから首都を移転する。人口分散!
インドネシアの通信情報省の
公式サイトでは、
次の5つの理由が挙げられているそうです。
①は活断層から離れていて、
ジャカルタよりもリスクが低いとのこと。
②はまさにインドネシアの国土の
ど真ん中あたりにあるんです。
ジャカルタだと、ちょっと西に偏っている。
③はカリマンタン島の主要都市である
バリックパパンやサマリンダに近い、
ということが挙げられている。
ただ、④⑤は本当に有力な理由なのか?
…何しろ、1千万人もの人口を誇る
ジャカルタから首都を移転する事業。
とにかく、膨大な費用が必要なんです。
NHKの記事によると移転にかかる総額は…
◆日本円で約4兆4,000億円
…そんなお金、どうする?
政府によると、
2割程度をインドネシアがまかない、
8割は民間の「投資」などで
まかなうとのこと。
同じように考える国民も多く、
この首都移転に対しては「賛成/反対」で
意見が二分されているとのことです。
(調査によっては半分以上が反対)
そこに、コロナ禍も加わった。
世界各地で戦争も起こっている。
また、カリマンタン島は
多くのオランウータンなどが生息する
自然豊かな土地でもあります。
自然保護の観点から反対する人もいる。
現在の第七代ジョコ・ウィドド大統領は
首都移転には前向きです。しかし、
2019年に再選されて任期は5年ですので、
2024年10月には任期満了、となります。
さて、次の大統領は首都移転に対して
どんな方針を定めるのか…?
それによってこのビッグプロジェクトの
成否が変わってくるとも言えるでしょう。
最後にまとめます。
本記事ではインドネシアの新首都予定地、
「ヌサンタラ」について書きました。
「東京一極集中」の問題を抱える日本では
「首都移転」の論議が下火になっています。
だからこそ、インドネシアの首都移転の
推移と議論は、とても
参考になるのではないでしょうか?
読者の皆様は、どう思われますか?
※詳細はこちらの記事もぜひ↓
※こちらの記事も参考になります↓
※インドネシアの歴史と地理については
こちらの記事もぜひ↓
『インドネシアと南海の女王』
合わせてぜひどうぞ!