社会人が国語を学び直すのにおすすめの書籍たち(現代日本語編)
ひすれば能面です。
私は、以前、予備校で国語を少しばかり教えておりました。
国語と言っても、大きい予備校は現代文、古文、漢文、(小論文も国語に含めるならば小論文も)と、専門性ごとに独立しております。一部、兼務することもありますが。私は古文をメインに漢文少々を担当していました(場合によっては現代文と小論文を担うこともありました)。
その時から、大学受験国語の学びは、社会人にとっても有益であろうと思っていましたし、実際、ビジネスの場に飛び込んでみて、その思いはより強く確実なものとなってきました。
教養として知っておくといいということもありますし、コミュニケーションや思考に有益だということもあります。本記事では、どう有益なので、なぜ社会人が学ぶ必要があるのかということについては踏み込みません。ただ、社会人になって国語を改めて学ぶなら、こんな本を使ってみてはどうですか?というご提案を、ごくごく簡単にさせて頂きたいと思っているわけです。今回はその第一弾で、「現代日本編」です。
なお、特にアフィリエイトなどやっておりませんので、各書籍の入手先へのリンクなどは貼りません。もし興味を持たれたならば、みなさん思い思いの入手方法で入手していただければ幸いです。シンプルに語彙について、読解・表現についての2カテゴリーで紹介したいと思います。
【まずは語彙力!!】
「言語化」や「教養」の大切さが叫ばれています。いずれにしても、礎となるのは「語彙力」だと思っています。社会人になってから、日本語の語彙力増強に取り組む機会はあまりないのでは? 知っている語彙が増えれば、その分世界が広がります。語彙については、ただ意味を知っているというよりは、重要な概念語の類について、背景も含めて理解しているということがまず第一に重要だと感じています。その意味で、おすすめしたいのが↓
◆小池陽慈『基本用語から最新概念まで 現代評論キーワード講義』三省堂
各語彙や概念の説明が丁寧で分かりやすいだけではなく、関連書籍も豊富に紹介されているため、この一冊から学びが広がる意欲作です。まさに教養が身に着く骨太の一冊と言えます。
重要概念やキーワードを押さえるのはもちろん重要ですが、もう少し基礎的な、足腰の部分となる「漢字・熟語」もしっかりと学び直しておきたいですよね。漢字学習はただ読める書けるだけではなく、意味を用例と共にしっかり押さえているか?が重要です。そこで、この一冊。
◆土井 諭『高校の漢字・語彙が1冊でしっかり身につく本』かんき出版
全ての漢字に意味と例文があり、覚える工夫、間違った覚え方を正してくれる利点があります。また、単なる漢字が読める・書けるということに留まらず、しっかりと文章読解や表現に活かせる作りになっています。
【読解・表現】
当然語彙の知識だけがあってもダメで、それを運用していく訓練や、運用方法の学習が必要不可欠になります。一番の学習は、「読む」「書く」というアウトプットを自分自身で行うことだと思っています。興味のある分野の親書や選書を読んでみる。それを自分で要約したり、人に説明するつもりでまとめてみる。自分の意見を書いてみるなどの繰り返しです。とはいえ、指針というか、ある程度の方法論を身に着けて置いたほうが、この辺りもスムーズに学習が進む可能性が高まります。
◆野矢 茂樹 『大人のための国語ゼミ』山川出版社
少し難解な文章を読んでも理解がおぼつかない、うまく自分の伝えたいことを表現できないという人が「論理」を学ぶのに最適な一冊だと思います。(この倫理という言葉・概念は結構曲者なのですが、ここでは深くは触れません)。読解力・論理力の基本や姿勢を身に着けることができるのではないでしょうか。
◆竹國友康、前中昭、牧野剛 『現代文と格闘する (河合塾シリーズ)』河合出版
こちら、受験生時代に取り組んだという方も少なくない一冊ではないでしょうか。抽象度が高く難解と思われる文章に立ち向か筋力・姿勢を養うのに最適な一冊です。問題数はそこまで多くはないですが、一つ一つに対しての開設が丁寧です。問題と解説の厚さを比べてみると、それがよくわかります。本書にある程度取り組んだら、後は自分の興味に応じて、評論と呼ばれる類の文章をどんどん読んでいくのが良いのではないかと思います。
◆代々木ゼミナール講師陣『2025新小論文ノート』(代々木ライブラリー)
毎年出ています。上記は2025年版。「読解力」「思考力」「表現力」の三つの力を養うことができます。まず、選定されている問題・テーマが多肢に渡っているため、読むだけで勉強になります。一人の講師ではなく、複数の講師がそれぞれパートごとに分担して書いており、様々な書き手の良質な解答から学ぶことができる点が有益です。
◆阿部幸大『まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書』(光文社)
社会人の学び直しという文脈からは少し外れる一冊かもしれません。今話題の一冊なので、ご存じの方も多いかもしれません。基本的には人文系の論文を書く上での基本姿勢、論文の在り方についてまとめたものだと感じます。本書の文章そのものが、知的な興味を刺激してくれます。基本的な論文の書き方・まとめ方について言及したものではありませんが、「問」に向き合う必要性がある人すべてにとって有益だと思います。
「社会人が国語を学び直すのにおすすめの書籍たち(現代日本語編)」でした。もちろん、ここで紹介しきれなかった本・思入れのある本がたくさんありますが、絞って紹介をしてみました。もし、興味を持ってくださったなら、お手に取ってみてください。
今回は「現代日本語編」でしたが、「古文編」「漢文編」もご紹介できれば(重要があれば……)と思っております。お読みいただきありがとうございました。
ひすれば能面