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「『将来は仙人!』から自営業へ(笑)」ヒスイと仕事の小さなエッセイ

「こどものころ、仙人になりたかった」というお話です。


ヒスイは子供のころから
『やる気』のない子で、
さらに加えて
『根気』も『元気』もない子供で

何を聞かれても
炊きすぎた、こんにゃくみたいに
ぐんにゃりした事しか言えなくて、

なんどもなんども
知能テストをやり直された(笑)。
いやもうこれ、
ホントなんです(笑)。

この日記で何度か言いましたが、
ヒスイは発達障害グレーゾーンの子どもだったらしく、
とにかく
集団行動ができない。

他人と同じことが
絶望的に、できない(笑)。

だから、子どものころから
「なりたい職業」なんて
なかった。
自分が他の子と同じことができるなんて
夢にも思わなかったから。


だから授業参観の日、
教室の後ろにずらりと親が並ぶなか、
他の子が将来の仕事について聞かれ、
「薬剤師に」「お花屋さんに」「社長に」「看護師に」などと
答えるのを
おびえながら見ていた。

自分の番になって、仕方なく小声で、
「……パン屋さん」
と言ったのは、教室の本棚に
「からすのパンやさん」の絵本が置いてあったのを見たからだ。

まったくの、その場しのぎであって、
それをよく知る母は、うんざりした眼で、
教室の窓から、
外を眺めていた。

親子、双方ともにとって、
息苦しい時間だった。


しかし、そんなヒスイにも同じクラスに友達ができた。
ピアノが上手なケイちゃん(仮名)。
ふたりが仲良くなったのは、
ケイちゃんも多分に、
グレーゾーンの子どもであって、

ピアノはめちゃくちゃ上手だったが
ピアノしか上手な子供じゃなかったからだ。

あきらかに浮いている二人組は
休み時間になると
いつも学校の日陰にあるウサギ小屋に行って
チョコレート色のウサギを眺めていた。

あるとき、ケイちゃんが言った。
「ヒスイちゃん、この世には『仙人』というのがいて、
 空から落ちてきたものだけを食べて
 生きているんだって。
 あたしは、それになろうとおもう」

おおお、とヒスイも思ったね(笑)。

「空から落ちてくるのを、待っていればいいわけね。
 それはとっても、いいことよね」

2人でうなずきあったが。
そこから10年ちょっと過ぎて、
ヒスイはケイちゃんをテレビで見ることになるんだから
もう、信じられない。

仙人になると言っていたケイちゃんは
かなり有名なピアノのコンクールで賞を取り、
黒いドレスで
お辞儀をしていた。

ああ、ケイちゃんは
仙人にならずに済んだのねと
ぼんやりと思ったことを覚えている(笑)。



こんな状況でありますから、
会社に就職というのは
ヒスイにとっては
かなりのムリゲー(笑)。
最初からフリーで働くつもりで、
あれこれと勉強した。

最初の頃こそがんばって営業したが、
そのうちに
自分には『攻めの営業』が向いていないということに
気がついた(笑)。

それに反して、
親友のMちゃんは、
これはもう攻めに攻めまくるタイプで(笑)
最初から
ガンガン受注していたが、
ヒスイは
ぽつりぽつりと来る仕事を
こなすのが必死。

当然、収入ではMちゃんと数倍の差があり、
それが悲しかったのだけれど、
能力の差だから、どうしようもない。
それでもちょっと頑張って、
営業をかけてみたが、
結果は、はかばかしくない。

当時、バイトしていた試食販売のほうが
よっぽど売り上げになった(笑)。
試食販売を本職にして、
日本中を回ろうかと真剣に考えていたのが
このころです。

が、幸いにして、ぽつぽつと仕事をもらえるようになった。
そのときMちゃんは、

「ヒスイ、この流れに乗るのよ、ガンガン売り込むのよ!」

まあ、それなりに頑張りましたよ、営業も(笑)。
だけど、そのうちに気がついた。

これ、あたしのスタイルじゃない、って。
自分にあった営業方法とは、
わずかな人数のお客さんに対して、
誠実に
丁寧に仕事をして、
信用を作り、
細く長く、仕事を回してもらう事だって。

ヒスイの場合、仕事も遅いので
できる分量に限りがある。
だとしたら、100人のお客さんに1本ずつの仕事をおさめるより、
10人のお客さんに10本の仕事をさせてもらう方が
向いているんです。

これはもう完全に
タイプの違いであって、
Mちゃんは広く浅く、そして次第に仕事量を増やしていける人です。

ヒスイは
狭く深く、仕事量はもう今で上限いっぱい(笑)。
これ以上増やしても
パンクするだけです。

だから、これでいいんだと思います。

この先も、細く長く仕事をくださる方と
出来るかぎり丁寧に、
心を込めたものを
一本ずつおさめていきたいと思うんです。


それはちょうど、天から落ちてくるものだけを食べている
仙人のようで。
お客さんが振り分けてくれる仕事を
ひとつずつ味わって
食べているのです。

いつか、ケイちゃんに会うことがあったら
こういいたい。

「ヒスイは、仙人になったよ。
 お金はまあ、それほど沢山ないけれど、
 青い空から落ちてくるものを
 大事に食べて

 生きているよ」って。




この春から、社会人になった方も多いでしょう。
つい自分と他の人を比べてしまうこともあると思う。
働くって、つねに誰かと比較される、比較するって事だから
仕方のない部分も多いんですが、

比較がちょっと苦しくなった時には
空を見上げてほしい。

青い空から、
あなたに向かって一直線に落ちてくる仕事が、
必ずあるから。
それは、
あなたのための
あなたを選んで降ってきた
仕事なんです。

それを拾ってみがいて、
眺めてほしい。

きっと、
あしたも仕事をしようって
思えるから。


【了】


#わたしのキャリア



なんか今日、バタバタしてて
公開を忘れそうなので
先に出しますー。

えーと、明日は410字の日です。
がんばります!

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