「どん底でこそ、顔を上げろ」ヒスイの座右の銘。

『どん底でこそ、顔を上げろ』短編小説


ミヨコ、そこに座んなさい。
おい、無視するな！
父さんの声が、聞こえないか！？

くそ。

……たしかに、リアルに顔を合わす機会はなくなった。
とはいえ、無視とは何事だ！
しかも、おまえ、母さんの言葉によれば、
カレシを連れてくるそうじゃないか。

タダのカレシじゃない、とな？
け
け
け
けけけけけ
結婚、するだと！？



ミヨコ、
父さんは以前から言っているだろう？
男は、
どん底の状況で
どう動くか見なきゃ、わからないって。

そいつは起業家で
すでに会社をひとつかふたつ、つぶしたそうだな？
今回また、会社をおこして
一儲けしようと
企んでいるそうだな？

……大丈夫なのか。
おまえ、その男に
ずいぶん金を渡しているって
母さん、おれのまえで
ぼやいていたぞ。



ミヨコ、おまえは　どん底を味わったことがあるか？
父さんは、ある。
まわり全部が敵になり、
自分の一挙手一投足が、ののしりの対象にされ、
息をするのも
罪深い、と思えるような、
そんなどん底を
体験した。

つらい時期ではあったが、
自分の信念を曲げないで戦い続けるという
得がたい経験をしたよ。

今の日本では
そんな男はレアものだろうが、
お前が選んだ男が
そういうやつだといい。

どん底を知り、そこから這い上がり、
今度の会社をつぶさぬよう
必死で努力する男なら、
それでいいと思うんだ。

結婚も許す。
ホントだぞ？

一緒に
その男に賭けてみようじゃないか。



ミヨコ。
そこに座りなさい。

なあ、たまには、
父さんに線香をあげてくれても
いいと思うんだが。
おそなえのカップ酒を
飲んじまうだけじゃなくて。
いや、飲んでもいいんだ。

おまえが幸せなら、
父さんは、成仏できると思うよ。



ミヨコ。
おれは
おまえの笑っている顔が、見たいんだ。

それだけなんだよ。



【了】（約750字）

本日は　香坂兼人さんの企画に参加しております。
「#ミヨコそこに座んなさい」企画(笑)

この企画、自分の座右の銘を
「ミヨコ」にたいして語る、という形式で
進めていくものです。

ミヨコ、は誰でもいい。
座右の銘も各人のものでいいそうです。

期間は特に決まっていないので、
のんびりとご参加ください。
なおなお、企画に参加すると
香坂さんがナイスな感想記事を
あげてくれるそうです！

ちょっとズレた視点をお持ちの香坂さん(笑)
ご自分で「斜め下から記事を読む」とおっしゃっているので
感想記事が
ひじょーーーに
楽しみであります(笑)。


さて、今回あげたヒスイの座右の銘？は
「人の本性は、どん底の状況で
どう動くか見れば、わかる」です。


モデルには、アメリカの政治家、バーバラ・リーを
イメージしています。

バーバラ・リーは、2001年の同時多発テロ直後、
アメリカ議会で、大統領に「武力行使権限を一任する」という
決議に、
唯一反対した民主党の下院議員です。

反対理由は、
戦争を開始する権限を大統領に一任することは、議員の職務に反すると
信じたから。

しかし、決議をとった当時は
ニューヨークのワールドトレードセンタービルに
飛行機が激突した9.11テロの直後。
議会での投票結果は賛成票420に対し、反対票はバーバラ・リーの1票のみ。

戦争に反対する行為は
それだけで「非国民」扱いされるものだったのです。

バーバラ・リーも　唯一、戦争に反対したというだけで
命を狙われそうになったり、
ののしられたり、
アメリカじゅうの非難の的になりました。

それでも、
彼女は信念を曲げなかった。

「自分が正しいと信じた事」を
貫いたのです。


人間は時に、
おもわぬ非難を浴びることがあります。
根拠もなく、
非難を浴びることもあります。

そんなときにこそ、
人間性が試されていると
いうことなのでしょう。

沈黙するにせよ、
撤退するにせよ、
戦うにせよ、
みずからに愧じず、顔を上げている事が
大事なのだと思います。


今日の短編は
ミヨコと
かつてのヒスイに
送ります。

あ、香坂さんにも(笑)
忘れてた(笑)
よろしくお願いいたします。

https://note.com/hisuijade/n/nbd0279bc103d

変な時間に公開してしまいました(笑)
それくらい
書くのが大変だったのです(笑)

では、
おやすみなさい、みなさま。

ヘッダーはUnsplashのOladimeji Odunsiが撮影


※香坂さんから
「下から斜め45度の鋭い感想文！」は
こちらです！

んもー。
書き手のギミックを
全部読み込んでくれちゃあ

大喜びするでしょ、ヒスイが(笑)！

複層に重ねたヒスイの手練手管を
ぜんぶ読まれてしまいました(笑)

ありがとうございました。