「今度は100本ノックだ―(笑)! 終わらぬヒスイの短編チャレンジ!」
『ヒスイの鍛錬・100本ノック 600字のアオハル』
①お題「ハリネズミ」(NNさま)
『香り、先立ちて』
あたしは高校一年生、高野 澄。今のところ高校生活に不満がないが、気になる男子がいる。
同じクラスの玻璃(はり)くんだ。
玻璃くんはとても静かで、みんなが騒いでいるときもひとり本を読んでいる。邪魔されたくないらしい。あたしは話しかけたくてうずうずしているが、距離をとっている。
おくびょうなハリネズミみたいに。
あたしは玻璃くんの目につくべく、あらゆる手を尽くした。
同じ委員会になるよう画策し、下校タイミングをあわせて同じ時間に昇降口にいた。
授業中、休み時間、部活、ホームルーム。あたしは視線を細い矢のようにして投げつづけた。
課題をしているとき、お風呂に入っているとき、週末に友達と遊んでいるとき、玻璃くんの影がどこかから出てこないか、探していた。
でも。玻璃くんは全然気づいていない。今日もあたしはしょんぼりと、ひとりで昇降口に向かう。
玻璃くんが、いた。あたしはもう会いたくなくて、柱の陰に隠れた。玻璃くんが帰ってから、出ていこう。
そのとき、なぜか玻璃くんが鼻をクンクンとさせた。
「――高野、そこにいる?」
「……いるよ。なんでわかったの」
「いいにおいが、する」
玻璃くんの鼻がひくひくした。まるで笑っているように。
秋の風が吹く。
あたしの放った視線が、ようやく彼に届いたみたい。
いま玻璃くんの全身は視線の針でおおわれて、ハリネズミみたいになっているはずだ。
こうしてあたしは、幸せな「ハリ飼い」になった。
610字
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はい、ヒスイの新しいチャレンジです(笑)。
みなさまご存じのようにnoteの公募「2000字チャレンジ」で玉砕し(笑)、「410字のショートショートnote杯」11作を経て、今度はNNおやぴんの修行道場へ(笑)。
現在、NNおやぴん・永山浩士さま・rusty milkさまがお題を出し合って、それぞれ描いたり、書いたりなさっているものに。
ヒスイがこっそり、参加させていただきます。
今回のチャレンジは長いです。トータル100本。
明日よりヒスイ、3日間のお休みをいただくので、
来週から、本格的にチャレンジいたします!
100本、というと。春ごろまで続くのかなあ? ちょっと想像もつきませんが。
想像もつかないことをやるのが、大好きなヒスイです(笑)。
では!
来週の月曜日、11/15のお昼に、ヒスイ日記でお会いしましょう!
みなさま。よい週末を!!