見出し画像

「キラキラひかる燻製の星」ヒスイの 【毎週ショートショートnote】④

愛してくれないヒトの記憶なんていらない。あたりまえだ。あたしを捨てた父なんて。
15年前、両親は離婚した。あたしが10歳の時だ。
父とはそれきり会わなかった。
本当は月に1回、父娘で会うと決まっていたのに。
父は会いたくなかったんだ。
それ以来、あたしの中から父は消えた。

ある日、弁護士から電話があった。
『お父様の遺品があります』
いちおう弁護士事務所には、行った。父との最後の縁を切るためだ。
部屋には箱がひとつ。遺品の『音声燻製箱』だという。

「音声を長期保存する箱です。燻製音声ですから、一度聴いたら消えてしまいます」
あけてみた。父の声がした。記憶にあるより若い。

『Twinkle, Twinkle, Little Star……(キラキラ光るお空の星よ……)
やっと眠ったな、ヤンチャ姫め』

25年間、燻製にされていた子守歌は、箱から湧き上がると鮮やかに香り、ふわりと消えた。

25歳になったヤンチャ姫の記憶箱へ、居場所を移して。

【了】 (改行含まず407字)


この短編は、以前にだした短編と連動しています。

さらにさらに! たらはかにさんの毎週ショートショートに参加しています。

へいちゃんのは、こちら。
しぶい……ぜひとも食べてみたいお味です。


さて。明日こそは、明日こそは『ミニチュア生花の会』活動報告をします!
短編も出しますよーん💛

いいなと思ったら応援しよう!

ヒスイ~強運女子・小粋でポップな恋愛小説家
ヒスイをサポートしよう、と思ってくださってありがとうございます。 サポートしていただいたご支援は、そのままnoteでの作品購入やサポートにまわします。 ヒスイに愛と支援をくださるなら。純粋に。うれしい💛