『時を駆け……すぎた、令和のハードワーカー』ヒスイの短編・コメディSF
俺は令和のハードワーカー。働くのが好きで、仕事にも趣味にも全力投球だ。周りのやつらはもっとネガティブだが、これが性格なんだ。
逆に、おとなしく流されるのは性に合わない。
その日も、俺は営業先へ向かって点滅信号を駆け抜けていた。もうすぐ渡りきる!と言うところで右折車がやってきた。
目の前に車が迫る。
あっ! と思った時、右足をすべらせた。
アスファルトに頭をぶつけ、気が遠くなった。
目がさめると、奇妙な世界にいた。
まわりには金属の鎧を着たやつらがいる。鎧? 鎖かたびら? ゲームの世界みたいだ……。
しかし、そこはリアルな中世ヨーロッパだった。どうも、事故の瞬間にタイムスリップしたらしい。
右も左も、言葉も習慣もわからない世界。だが俺は令和のハードワーカーだ。すぐに順応し、戦士として結果を出していった。楽しいぞ。
友人もでき、すっかり世界になじんだころ。
俺は石造りの階段で、すべった。
つるん。
アッと思った時には、また別の時代にタイムスリップしていた。
何度か同じ経験をした結果、俺はある共通点に気が付いた。
右足ですべると、過去に行く。
左足ですべると、未来に行く。
どちらの世界にも楽しさがあり、不幸があり、悲惨があって希望があった。どの世界にもなじめたのは、俺が令和のハードワーカーだからだ。
そして近未来の日本にいた時、ローラースケート中に、うっかり両足ですべってしまった。
つるるるるっ!
えっ、両足だぞ。どの時代に跳んでいくんだろう……。
気がつくと。
俺は海の中にいた。
びっくりするほど透明な海で、空の青さがまっすぐに差し込んでくるみたいだった。
まわりではポコポコと何かが湧いている。
ん? 酸素が湧いているのか? いったい、どの時代だ?
そして向こうからゆるゆると泳いでくるのは――恐竜か!?
史上最強の海棲爬虫類、モササウルスっぽいぞ!
……どうも。今度は古代に来てしまったようだ。
しかも、人間として移動したわけじゃない。
俺は、透明な古代の海で揺れる一本のウミユリになっていた。
ゆらゆらゆら。
ひゆひゆひゆ。
海水の動きとともに、俺はゆれる。
流されるがままに、動いていく。こんなの、はじめてだ……。
あれ。
悪くないぞ、これも。
ひゆひゆひゆ。
ゆらゆらゆら……。
俺は令和のハードワーカー。いつでも走っていないと気が済まない男だ。
だが今は、古代の海でウミユリとなって、生きている。
案外たのしいぞ。
きみもなってみないか?
コツは、両足で滑ることだ。
つるん。
【了】(1100字)
はあああ。
何とか収まりました(笑)
今日は、へいちゃんと一緒にだしています。
これはもう、ほんとにおもしろい!! 社畜ってところは、同じだったね!
どっちもハードでした(笑)
明日は1日、ヒスイ日記をお休みしますね。
また月曜日に~💛
NNさまの企画68
#ヒスイの鍛錬100本ノック
#お題・タイムスリップ
今後のお題
【4】水 【7】歩道橋 【8】終幕 【10】マトリョーシカ
【12】落書き 【14】エレベーター 【16】忍者
【20】歌 24】お茶 【32】昔話 【43】鬼
【46】枯れ木 【54】蜘蛛 【57】ポーカー
【58】春告げ鳥 【61】舌先三寸
【66】ポップコーン 【70】スキャンダル
【73】アナログレコード 【80】まちぶせ 【81】ゆうびんやさん 【82】★みなとさん3★ 【84】天気予報
【86】豆電球 【88】ペンギン
【89】★みなとさん4★ 【91】体重
【92】ダリア 【94】はらごしらえ 【95】ロングヘア
【96】遅配 【99】船 【100】カブト
消えているけど、鳥獣戯画、書いてないです。ぜったいに(笑)