「いつか正しく老いてゆく日に」ヒスイの毎週ショートショートnote
おばあちゃまは最近、昔のことしか話さなくなった。
「来週はなにするの?」と聞いても
「私が翠の年にはねえ……」といいだす。
へんなの。
帰り道、ママに、
「おばあちゃまは、どうして来週やその先のことを話さないの?」
ママはあたしの手を握り、
「おばあちゃまにとっては来週よりも昔の記憶が大事なの。
おじさまたちが子供のころ、ご自分が子供のころが
とても大事なの。
ひとには、そういう時期が必ず来るのよ」
あたしは夕暮れの道を歩きながら思った。
あれか、今はやりの『断捨離』だな。おばあちゃまは大事なものを残しておくために、来週を断捨離したんだ。
おばあちゃまが決めたなら、それでいいんだな。
ふと、
「ママもいつか全部、忘れちゃう?」
「わすれない。たとえばこの道が金色に見えることとか、翠の手の大きさとか、忘れない。親とはそういうものよ」
ママの爪は、きれいな真珠色だ。
いつかあたしが未来を断捨離する日が来ても、この色はきっと覚えてる。
【了】(改行含まず409字)
本日も、たらはかにさんの #毎週ショートショートnoteに参加しています 。
お題は「未来断捨離」。
相方へいちゃんは、こんなラブでキュートな断捨離でした!
なんかねえ、こういうの、いいよねえ。しみじみいいよねえ。
さて、今回かいた『おばあちゃま』については
かつて、私小説エッセイで書いております。
大好きなnoterともきちさんに、褒めていただいた短編です。
ヒスイのみぢかにあって、はじめて
人がただしく老いていく方法を教えてくれた人でした。
今でも時々、むしょうに雷おばあさまに会いたくなります。
そういうひとがいたってことは
とてもありがたいことですね。
明日はシロクマ文芸部。
がんばります!
ヘッダーはUnsplashの𝔥𝔦𝔩𝔩𝔞𝔯𝔶 𝔭𝔢𝔯𝔞𝔩𝔱𝔞が撮影
昨日までの爆弾低気圧のせいで
いまだにヒスイ、体調不良です…。
変な時間ですが、更新しちゃいますね。
なかなか皆様のところへ行けなくて、すみません。