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「土曜の朝は、いまだ晴れ」第1話”車を洗おう(ヒロさん)”

うん。そうそう。それはまだ、おおかたの車がガソリンで動いていた頃の話。

土曜日の朝、僕はその頃付き合っていた女の子の車を洗車してもらいにガソリンスタンドに行くことになった。
彼女のマンションには洗車もできるスペースがあったのだけど、当時は誰もが SUV のような車高の高い車に乗りたがっていた頃。自分で洗車するなら、ずぶ濡れ覚悟だった。
そう考えると、今や昔、だよね。SUV なんていう単語も死語だし、乗っているとちょっと田舎くさく感じる。

ま、そんなこんなで、僕らは晴れた休みの午前中、1時間ほどをガソリンスタンドで過ごすことになった。

「では洗車完了まで、こちらでお待ちください」

僕らを店内の待合ソファーに案内して、スタンドの店員は出て行った。
ソファの前にはテレビが置いてあり、朝のよくわからないワイドショーのようなもの(当時はそういう番組カテゴリがあった)をやっていた。
彼女はテレビには全く興味を示さず、スマートフォンで午後の天気を調べていた。