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「スイートスイート・グランマ」毎週ショートショート⑩


扉を開けると、病室の空気はいつだってにがい。
「おばあちゃん?」

眠る祖母はよく練った水アメのように白っぽかった。アメ細工みたいだ。

子供の頃、あたしは祖母によく叱られた。
学校の池に墨汁を流し込んだ時。
ウサギ小屋の鍵穴に、枯れ枝を詰めた時。

忙しい母の代わりに祖母が学校に来る。帰宅後に叱り終えると、アメ細工の時間だった。アメを温め、柔らかくなったら練りあげる。
星、ハート、丸型。竹串にさして出来あがり。

『おばあちゃん、おいしい』
祖母はキラキラと笑った。その時だけは、古い家を背負い続けてきた女ではなく、ただの祖母に見えた。



あたしは病室で言う。
「またアメ作ってよ」
動かないはずの手がヒョイと動いた。

星、ハート、楕円形。祖母が差し出す架空のアメを受け取る。たまらなく甘かった。
「おいしいよ」

祖母はもう、ぜんぜん関係ない、みたいな顔で眠っていた。

おばあちゃん。
あなたはいつだって、あたしの棒アイドルだった。
ありがとう。

ありがとう。

【了】(410字)


えーと。ヒスイ。コロナになりました。
しばらくお休みになります。
お返事、遅くなってごめんなさい。

また、治ったら、です。
コロナの熱、たかいですねー。

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ヒスイ~強運女子・小粋でポップな恋愛小説家
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