『大失恋、からの6億年後』ヒスイの短編・800字の恋愛小説

 今は22××年、人類はスリープカプセルを使って、長期冬眠できる時代だ。
 そんな時代でも、人は恋をして、フラれる。
 最愛のカノジョに捨てられた僕はやけになり、別れ話から1時間後には、全財産を持ってカプセルステーションへ向かった。

「最長冬眠でお願いします!」
「最長ですと、6億年になりますが……」
「それでお願いします!」

 書類にサインしてカプセルに飛び込む。電子音が聞こえはじめた。これで安心。6億年もたてば、失恋の痛みは消えるはずだ。
 失恋よ、さらば!
 
 
 
 6億年後。僕はめざめた。すごいな、6億年と言っても眠っている本人にとっては10分も経っていない感覚だ。
 カプセルが開いた。
 あたりを見回すが、ステーションには人の気配がない。人工音声が言う。

『お早うございます。誠に残念ですが、人類は大戦争で滅びてしまいました。あなたが最後のひとりです。
おひとりですが、ステーション内では食事もでますし、温度管理も完璧です』
「うげげ……一人っきりか。こんなときこそ、彼女がいればいいのに……ん? 胸が痛い……失恋のショックは変わらないぞ?」
 
 よく考えたら、身体は6億年を超えたのかもしれないが、僕の感情はまだ10分前のままなんだ。
 脳内時計は、最愛のカノジョに振られてから1時間しかたっていない。失恋の痛みは、ちっとも軽くなっていなかった……。
 
 僕は仕方なく、カプセルから立ち上がった。
「生き延びた人類は、僕だけ?」
『そうです』
 つまり、失恋の痛みには、ひとりで立ち向かわなきゃダメってことか……。
 僕は人工音声に向かって言った。

「仕方ない! 失恋時に効果のあることリストを作ってよ。順番にやる!」
『お待ちください……リストアップ完了。①”大声で歌いながら、全速力で走りまわる”です……』
 
 僕は失恋ソングを歌いながら、ステーションの中を走りはじめた。
 うん、わるくない。いい気分転換になる!
 ただ、6億年もかけてやることじゃ、ない気がするけどね……。


【了】


ヒスイの鍛錬・100本ノック㊾
#NN師匠の企画
#ヒスイの鍛錬100本ノック
#お題・6億年後

最後に、ヒスイおススメの失恋ランニングソングをご紹介しておきますねー(笑) オリジナルじゃないんで、期間限定で はっておきます💛

また明日、小さなヒスイ日記でお会いしましょう。
おやすみなさい💛

今後のお題リスト
的中←アナログレコード←ミッション・インポッシブル←スキャンダル←←ポップコー←←舌先三寸←春告げ鳥←ポーカー←タイムスリップ←蜘蛛←メタバース←鳥獣戯画←枯れ木←鬼

【83】一夜干し(ヒスイ)
【84】天気予報
【85】湖底
【86】豆電球
【88】ペンギン(kochibiさん)
【89】みなとさん
【90】高級路線(ヒスイ)
【91】体重(rusty milk)
【92】ダリア(私)
【94】はらごしらえ(永山さん)
【95】ロングヘア(こっちゃん)
【96】遅配(ヒスイ)
【97】rusty milk
【98】みたことがない(へいちゃん)
【99】船(こっちゃん)
【100】カブト(永山さん)


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ヒスイ~強運女子・小粋でポップな恋愛小説家
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