『見抜いてよ、俺のウソを』ヒスイの冬俳句+ほろ苦410字
「言い訳や今川焼の皮はがし」ヒスイ
(いいわけやいまがはやきのかわはがし)
三冬の季語:今川焼
『見抜いてよ、俺のウソを』
「昨日はユウジと飲んでて」
「へえ?」
浮気者の彼へ適当に答え、私はコーヒーカップに鼻を突っこんで漆黒の香りを楽しむ。
おやつは今川焼。買ってから時間がたったら、オーブントースターで温めなおすと香ばしさがよみがえる。
一口食べてから、彼が今川焼の皮をカリカリと剥いでいるのに気がつく。
黒い粒あんがのぞいていた。
ああ。嘘ついているんだ。
この男は、嘘をつくとき何かを剥がしたがる。手帳に貼ったシール、メニューのラミネート、二重になっているウェットティッシュ。
まるで、俺の嘘を見抜いてくれ、と言わんばかりに。
付き合い始めの頃は、そのサインにおびえていたけれど、
今となってはどうでもいい。
おびえる情熱もなくした。
静かに今川焼を食べていると、くしゅんと彼の顔がゆがんだ。
泣きそうになっている。
今川焼の皮だけが、猛スピードでどんどん剥ぎとられていく。でも私は香ばしさを取り戻さない。
ここで終わりにしよう。
私の気持ちが、まだ温かいうちに。
【了】 (改行含まず408字)
カリカリに焼き直した今川焼、コーヒーにも合いますねっ(笑)!
本日はちょっとほろ苦い410字でした。
明日は毎週ショートショート。
もうひとつ、ほろ苦を書こうかな(笑)
ヘッダーはUnsplashのTyler Nixが撮影した写真
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