「今ここでしか言えない、水平線」ヒスイの毎週ショートショートnote

遠い水平線を見ながら、彼はつぶやいた。不安そうにタキシードの襟をなでている。

「……こんなこと、他人にいった事ないんだけどな」
「うん」
「俺の実家、おやじが酒を飲むと暴れて。家族ぜんいんが鼻が折れてて曲がってる。
　だから子どもを持つなんて、考えたことがなかったんだが……」
「そうだろうね」
「今は、家族をもつって悪くない気がするんだ……あ、ごめん。
　出会ったばかりのきみに言うことじゃないか。
　でも、きみにしか言えないし」

首を振る。

「分かるよ。告白って、こんな状況でないとできないから」

ふたりで遠い水平線を見る。あたり一面、海・海・海。
昨日の大しけ、プレジャーボートに乗っていた僕たちはかろうじて救命ボートに乗り込んだ。オーナーの彼と下働きの僕。

ようやく波がおさまってきたが、あたりは波だけ。
告白ぐらいしか、やることがない……。

「じゃあ、今度は僕が……」

昨日から、あなたに一目ぼれですっていうのは、反則かな？

【了】（改行含まず400字）



本日も　たらはかにさんの #毎週ショートショートnoteに参加しています 。
お題は「告白水平線」(笑)。どこへ行けばいいんでしょう、水平線が遠すぎて(笑)。

へいちゃんのは、これ。
いやあ、なんだかキュンキュンしますね！！

明日は　シロクマ文芸部の日です！
まだちょっとお腹が痛いけど
がんばります(笑)。

ヘッダーはUnsplashのAlex Berthaが撮影