「ノスタルジア・モンブラン」ヒスイの毎週ショートショートnote
「ガキの頃のモンブランって、黄色だったよなあ。俺、あれが嫌いでさ」
俺がそう言うと、彼女はカフェテーブルの向こうで小さく首をかしげた。
「そうだったかしら?」
「言っただろ、あの色が漬け物みたいで、どうしても我慢できなかったって」
「…そうだったかしら?」
「なんだよお、きみは俺の言うことを全然聞いていないんだな。これから結婚めざして、1日でも早く一緒におやじの借金を返そうって約束したのに」
彼女が立ち上がった。カバンを持っている。
「おい、何なんだよ?」
「帰るのよ、そして永久にサヨウナラ」
「はあ?」
「私には黄色のモンブランが大好物だって言ってたわ。懐かしいって。一番スキなケーキだって。
あと、借金があるのはお母さんだったわよ」
彼女が遠ざかる音。
俺のスマホには借金取りからの着信音。
目の前がぐるぐる回る。
モンブランクリームの糸のよう。
黄色・茶色、嫌い・好き、おやじ・おふくろ。
どの女に、何を言ったんだっけ?
ああ、モンブラン失言よ。
【了 改行含めず 411字】
本日は たらはかにさんの #毎週ショートショートnote に参加しております。
お題は「モンブラン失言」
相方ヘイちゃんも、無事復帰!
裏お題の「タンバリン湿原」も書いてます!
こう言うテイスト、嫌いじゃないのよ♡
ほかの410字はこちらで♡
明日はシロクマ文芸部です。
がんばります(笑)
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