「白い靴どろに汚れて夏雲のーー」ヒスイの初夏短歌
『白い靴どろに汚れて夏雲の
形に似てるおかえりなさい』ヒスイ
(しろいくつ どろによごれて なつくもの
かたちににてる おかえりなさい)
『白い靴は、買ったことがないの。あの子が小学性になってから』
生前、夫の母はこんなことを言っていた。
『白い靴ってね、泥ジミが落ちないの。ぜったいに、おちないのよ。
でね、あの子はね、新しい靴でも1日で真っ黒にするのね。
靴の外も、中も、真っ黒になるのね。
だから、白い靴はかわないのよ』
そのとき、夫はすでに大人であって、
まあ、靴を汚すのは変わりがないのだけれど(笑)、
家を出ていたし、
義母の買う靴を履いていたわけじゃない。
だけど。
義母の言葉は、
つねに現在形だった。
まるで、泥ジミを作ってくる少年が、
今日も家へ帰ってくるような、そんな口ぶりで。
また新しく靴を買わなきゃいけないんだから、白は買わないのよ、って
友人にそっと教えるような。
かすかな誇りを明かりとしてかかげて
夕暮れに帰ってくる子供を待つ人のような。
そんな風情が、ありました。
ケロリンは、
この人の息子で
幸せであったなあと
つくづく思ったものです。
義母はきっと今も、
白以外の靴を用意しているのでしょう。
白い靴は、ときおり、思わぬ慈雨として
夫の上に降り注いでいるのでしょう。
絶え間のない金色の愛情となって。
勢いよく湧き上がる夏雲と同じ形になって。
お義母さん、
こう言う男を作ってくれて
ありがとう。
『白い靴どろに汚れて夏雲の
形に似てるおかえりなさい』ヒスイ
#ひとり66日ライラン
#出戻りライラン・笑
#13日目
ヘッダーは、はそちゃんに借りっぱなし(笑)
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