愛のムチ
「てぶくろって反対から読んで」
「え~・・・ろ、く、ぶ、て?」
そう言って軽く6回ぶたれたことを今もはっきりと覚えている。
※DVとかではないです
手袋を着けながら歩いていると、ふとそんな過去の記憶を思い出した。
小学生の頃、父とふざけていつもそんなことをしていた。
他にもこんなこともあった。例えば都道府県。
確か小学生の頃、都道府県のテストをすることになり、形・場所・名前を暗記しなければいけなくなったことがあった。
なぜか家族総出で暗記特訓をした。
私は大分県がなかなか覚えられなかった。形は覚えられないし、場所も住んでいるところから遠く離れていて馴染みがない。なぜ「分」が「いた」と読むのかも理解できなかった。
「ここは?」と大分県の場所を指差す父。
「わからん」と私が言うと、父が私のことを軽く叩いた。
「いたっ」
「今なんて言った?」
「え?…いたって」
「そう、ここは『お~、いた!』大分や」
無理がある。でも叩かれたくなくて私は大分県は真っ先に覚えた。まあまあ力は強めだったのと、覚え方意味わからんという笑いすぎで、泣きながら覚えた。
自分が悪さをしたときは、父は本気で殴りかかろうとしてきた。
でも私が女の子だからか、それとも私が忘れてしまっているからか、殴られたことはない。
こうやって遊んでいる時やふざけている時だけ、お遊びの愛のムチがあった気がする。
今では1週間で一言二言くらいしか父と会話しないくらい、お互いの間には壁ができた。反抗期くらいからだろう、あの頃に比べれば話している方だが。
父はこのことを覚えているのだろうか。少なくとも私は今でもはっきりと覚えている懐かしい思い出の1つとして記憶の引き出しにこっそりしまっている。
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