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銀行破綻は連鎖するのか?世間をにぎわす「ベイルイン」という株式市場の新テーマ
今回のテーマのご説明
昨今のシリコンバレー銀行・シグネチャー銀行・クレディスイスなどの大手銀行の信用不安で相場は大きく荒れています。その中でよく出てくる言葉の解説と、この金融不安の注目点を確認していきたいと思います。
まず今日のテーマの「ベイルイン」と「ベイルアウト」という言葉を聞いて説明できる人は多くはいないと思います。
何せ「ベイルイン」の歴史は浅く、リーマンショック以降にできた言葉です。
その反対語のベイルアウトはリーマンショックで実際大手銀行に米政府は行いました。
「ベイルアウト」という言葉で語るからややこしいですが、日本語に簡単に一言で説明すれば「公的資金注入」です。
日本でもかつてバブル崩壊したときに、巨額の不良債権を抱えた銀行15行に公的資金が注入されました。
最近この言葉がニュースでもよく聞かれます。
「too big to fail」「でかすぎてつぶせない。」
俗にいう「G-SIBs」と言われる(Global Systemically Important Banks)銀行はつぶしてしまえばその他の経済活動にネガティブに与える影響が多すぎるため、つぶせないのです。
日本で言えば、三菱UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行になります。
英語表記「Global Systemically Important Banks」の略で「グローバルなシステム上重要な銀行」のこと。
金融安定理事会(FSB)が世界的な金融システムの安定に欠かせないと認定した銀行を指します。国際合意に基づき、金融機関ごとにシステム上の重要性を評価し、リスク・アセット対比で一定水準の追加的な資本の積み立てを求めるなど、TLACの対象となる金融機関です。FSBは2011年からG-SIBsの認定を行っており、まず29行を指定し、その後、適宜入れ替えを実施しています。
つぶせないから公的資金注入をして銀行を助けるわけですが、ここにモラルハザードが発生してしまいます。
モラルハザードとは、起こりうる最悪な事態から免れる為の対応策を備えた事で、かえって注意する意識が軽薄化し、結果として危険な事態をまねく事に繋がり、倫理感の欠如、規律が失われる状態のことを言います。例えば、車の運転時に保険に加入していなかったら、事故が生じた時の責任義務の大きさから必要以上に注意を払うものですが、保険に加入している安心感から注意を払う事を怠り、かえって事故を起こす確立が増す結果になる事です。
簡単に言えば、「別にリスク取って危ない経営や運用してもいいんじゃね?儲かったら万々歳!なんかあったらどうせ助けてくれるし!」となってしまうということです。そうすれば破綻リスク高くなるし、リスク資産を買いまくってバブルになる。
そしてリーマンショックでも公的資金注入されました。
その金はどこから出てくるか?
国民の税金から出てきます。
金融機関に努めている人たちに対する批判は当然あります。
「リーマンブラザーズなんて今までリスク取って儲けまくってたくさん給料もらっていたホワイトカラーたちだろ!俺たちより裕福だ!そんな奴らをなぜ国民の税金で助けなければならんのだ!」と。
至極当然です。
かくして、「ドッド・フランク法」が成立します。
「Dodd Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act:ウォール街改革、および消費者保護に関する法律」の略称で2010年7月に成立した米国の金融規制改革法。
2008年、リーマン・ブラザーズの破たんを契機として発生した世界的な金融危機を教訓として、金融取引の規制を強化し、金融機関の肥大化を防止するためにオバマ大統領が提唱し、制定された。
これも簡単に言えば、リーマンショックは銀行がリスク取って調子乗って儲けようと何も考えずに経営、運用したから起こったんだ。お前らがモラルハザードにならないように、思いっきり規制を厳しくして、二度とつぶれないようにしてやる!という規制のための法律です。
とはいえ、締め付けたからと言って銀行が絶対潰れないとは言えません。
かつ、答えだけ言えば今回クレディスイスもシリコンバレー銀行もシグネチャー銀行もぶっ飛んだわけですから、ベイルアウトなくして大きすぎてつぶせないG-SIBsはどうやって助けるの?という話になります。
そしてドッド・フランク法もでき、2010年からはベイルアウトの反対の造語で「ベイルイン」という言葉が誕生しました。
ここからはタイトルにもした、ここからの相場の新テーマになるであろう「ベイルイン」についてお話をしていきます。
これを知らないままではここからの相場を乗り切ることができないと思います。
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