アナログ造形:『KILLING ROMMEL』(2014年作品)(その5)
前回(↓)の続き。
額縁のない絵画は「作品の完成形」としてはしょぼい
今回は小ジオラマの「鑑賞作品としての情景表現」について。タイトルを少々挑戦的に書いてみました。
昔、欧州最高峰の模型コンペ「ユーロミリテール」に出品した時、ずらりと並んだ沢山の作品の中で自分の作品を際立たせるにはどうするべきかを学びました。
タイトルに示したのがそこで学んだ答えです。
まぁ、かんたんに言うと、海外凄腕モデラー達の計算され作り込まれたベース群にノックアウトされたわけです。「あぁ・・・これは色々と考え直さないといかん」と身をもって痛感しました。
そのユーロミリテールに参加した時の会場写真を紹介します。このようにスケール・年代・ジャンルをクロスオーバーした作品群がズラリ並んだ中で審査が行われます↓。(奥の中央に私の作品が少し見えます。ミリタリーフィギュアは色が地味なので大きめフィギュアでも全く目立ちません。)
上の画像を見ても一目瞭然だと思いますが、
額縁(ベース)がない作品は勝負の土俵にすら立てない
雰囲気なわけですね。
どんなに作り込んだ素晴らしい作品でも、それが単にポンとテーブルに乗せられているのを想像してみて下さい。そして、そこそこの作品が立派な台座に乗って仕上げられているのを想像してみて下さい。両者を比べてみると、どっちが鑑賞作品として完成度が高いかは想像するだけで一目瞭然です。
作品を「鑑賞作品」として仕上げるには、それを飾る額縁があってこそ作品として完成する、というのが私の持論です。
ジオラマの額縁=台座ケース
この『KILLING ROMMEL』も、そのユーロでの経験とポリシーに基づいて、制作の初期段階から飾る台座とケースのプランを練りました。
作品の完成形をデザインする段階で、最終的にこういうプレゼンテーション形式にするプランが当初から完成していたわけです↓。
アクリル板のケースと台座、高さを確保した地面。そして、ここが大事なこだわり点ですが、
「決して平坦な地面にしない」
というのが私のポリシーです。平坦な地面のAFV作品は駐車場に止めてある車のようで躍動感がまったくなくつまらないからです。
戦車作品もそうですが、超絶ディテールアップしたり超絶塗装がなされた戦車が平坦なベースに乗っているだけの作品よりも、凸凹の地面をグリグリと突き進む様子を表現している作品のほうが私は好みです。
戦車がどういう用途で使われている事を前提に開発されたものか
ということを表現するにはそれが最も究極だと思うからです。
この作品も、長距離砂漠挺身隊のトラックがどういう環境でどういう用途で使われたかを表現するために地面には斜面を、手前には骨になったラクダを入れました。
それらの要素を最小限にコンパクトにまとめ、なおかつ鑑賞者が視点を誘導しやすいように少し高さを確保しました。
必然的に全体が高くなるため、アクリル透明ケースの高さも高くなります。
大きな箱型になりましたが、ケースボックスに入れて飾れるように30cm以内で収めました。
シルエットのデザイン
またこの作品は、シルエットのデザインにもこだわりました。
「シルエットだけで見てもサマになる絵」を意識して地面や構図をデザインしました。あおりの角度で見た時にトラック上部に乗る指差す兵士のシルエットがバランスよく絵になるような感じを狙って地面を造形しました。
お勧めクレイ系パテの話
ちなみに地面の造形には以下の素材を使用しました。
発泡スチロールとプラ版製のベース、そしてベース上部の地面はApoxieSculptというクレイ系エポキシパテ、地面の石はクラッシャブルストーンをタイトボンドを溶かしたものでカチカチに固定しました。
このApoxie Sculptといクレイ系パテですが、私がかれこれ10年くらい前からネット上で事あるごとに「史上最高パテ!」「究極のパテ!」と訴えて叫び続けていますが、未だに全くメジャーになっていない感のパテです。
・アレルギーを誘発しない
・水性。水で均せる
・こね合わせしやすい
・固まると非常に硬度が高い
・切削性も非常に良い
・粒子が細かく磨くとツヤツヤになる
正直、良いところしかないパテです。AFVファンには
アルパインミニチュアのあの超絶フィギュア原型達はこれで作られている
と言う方が訴求力ありますかね。アルパインの原型師テソン・ハン氏やマイク・グッド氏はこのApoxie Sculptのホワイトを愛用しています。直接本人たちからそれぞれ使っている理由まで聞いたので情報ソースは確かですね。
クレイ系パテはマジックスカルプが最もメジャーですが、私はこのApoxie Sculpt一択です。なぜもっとメジャーにならないのか不思議でしょうがないですね。イヤ、ほんと謎。アレルギー誘発するマジスカより遥かに良いですよ。
今回も長くなりましたので今回はこの辺で。
ではまた。
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