アナログ造形:『KILLING ROMMEL』(2014年作品)(その2)
前回(↓)の続き。
はじめに断り書き
この記事はいわゆる「模型作品づくりのテクニック紹介記事」ではありません。模型専門誌の制作テクニックを紹介する記事のように
「造形の手法のプロセスの秘密をステップ・バイ・ステップで大公開〜!」
とかはしません。
あくまでも、「作品に込めたコンセプトやメッセージを伝えたい」という意図でこれを書いています。
また、長年模型の世界を通して学んだこと、感じていた思い、感動したこと、得られた気づき、感じた違和感なども織り交ぜつつ書いてみたいと思います。
そういう感じで、テクニック記事ではなく「読み物」として読んで頂くと嬉しいです。
初期コンセプト
多くのモデラーが知りたいのは「流行りの最新テクニック紹介記事」のほうでしょう。でも、私はそれはあまり意味がないと思っています。大事なのは
「初期コンセプトを理解すること」
と考えています。
AFV模型の世界ではミグ・ヒメネス氏のテクニックが一大ブームになりました。いまや誰もがミグ。私もミグ。あなたもミグ。SNSの模型グループではあっちもこっちもミグスタイルの作品だらけです。
私もミグ氏のテクニックは素晴らしいと思いますし、実際に彼の作品も静岡ホビーショーで生で拝見させて頂きました。
しかし、「ミグ氏のような作品を作りたい」とは思いません。別にミグ氏になりたいわけではないのですから、初期コンセプトを理解した上で自分のスタイルに取り込む事が大事、と考えてます。
私がミグ氏の作品から盗んだコンセプトは一つだけです。それは彼の代名詞である「カラーモジュレーション」の
「ゲームのCGアイテムの表現からヒントを得た」
という部分です。
「異ジャンルをクロスオーバーしてヒントを得る」という点が彼から学んだ一番の注目ポイントでした。
このいわゆる「カラーモジュレーション」というスタイルですが、「カラーモジュレーションの根底にあるコンセプトを理解しないと、ただ単に面に対してグラデーションかけて派手に演出すればよい、的な誤った解釈をしてしまいます。(現に、ありえない方向から光があたっている作品も見かけます)
模型作品に光を強調するペインティング手法をやり始めたのは別にミグ氏が最初ではありません。私は、最初にこのコンセプトを取り入れたのは1980年代に一大ブームを巻き起こしたフランソワ・バーリンデン氏と思っています。
フランソワ・バーリンデン氏は「ドライブラシ」という"テクニックだけ"が強調されて初期コンセプトが理解されず「ディテールを強調するテクニック」として勝手に独り歩きしてしまったのでは、と思っています。
私が最初にバーリンデン氏の作品を観たのは12歳の時でした。その時感じたのは
「この上から光が注ぎ、暗いところは影になっている重厚感のある陰影表現はなんだ!?」
という部分でした。まるでヨーロッパのクラシック絵画作品を観ているかのような、いや、それよりも、そういう絵画的な陰影手法を模型にもたらすことが出来るんだ、という衝撃でした。
その時、「バーリンデンはドライブラシというテクニックを使っているらしい」とのが一気に広まりました。「ドライブラシ!ドライブラシ!」みたいな大ブームです。
その当時私は、幼心にも
「いや、なんかそれ、注目するポイント違うんじゃない?」
と思いました。
テクニックの宗教化は不毛
私達が学ぶべき事は、バーリンデン氏の「重厚感演出のコンセプト」であって、「ドライブラシテクニックそのもの」ではなかったはずです。
だから、「〇〇テクニック」みたいなキャッチーな名前がついたテクニックの流行ばかりを追いかけてしまうようになったのでは、と感じていました。
数年前に流行した「ブラック&ホワイト」も「カラーモジュレーション」も、もともとのコンセプトはすでに昔から存在しているものです。「ブラック&ホワイト」などは美術ですでに私達が(名前は知らずとも)無意識に学んでいたグリザイユ画法と基本コンセプトは何ら変わりません。ヒストリカルフィギュアの世界ではAFV模型よりもはるか前にからこのグリザイユ画法的な白黒陰影法を取り入れた作品がたくさん作られていました。
もちろんテクニックは大事ですし、キャッチーでそれを追いかけるのは楽しいですが、その命名した人のような作品を作りたいのですか?という話です。やたらテクニックだけが大々的にフィーチャーされ過ぎです。
特定のテクニックの宗教化は不毛
というのが、AFV模型の世界に入ったり距離を取ったりしながら長年少し離れた目で観続けている私の率直な意見です。
まとめ
大事なのは
・初期コンセプトを理解して自分の作品に取り込むこと
・テクニックの宗教化は不毛
だと私は思ったりしてます。
本題に入る前に話が横道にそれてまたつい長くなりましたので、この辺で一度切ります。
ではまた。
(続きはこちら↓)
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