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ZBrush→Blenderへの移行とBPainter(その2)

前回の記事に引き続き、「ZBrush→Blenderへの移行」についてです。
1)ZBrushのペインティングとレンダリング環境
2)Blenderのペインティングとレンダリング環境
3)それぞれのメリット・デメリット
という観点から、前回書き足りなかった部分を書いてみようと思います。葉に衣を着せず思ったことをありのまま書いた超主観的意見なので、気を悪くされる方もいるかもしれません。あくまでも私個人の極私的な評価・ひとつの意見としてカジュアルに読んで頂けたら、と思います。(※前回の記事はこちら↓)

ZBrush:スカルプト100点・ペイント30点

これまで不満はありつつも根性で使ってきたZBrushでのペインティングです。バージョン2019からようやくカラーパレットプラグイン「ZColor」が標準搭載されました。↓

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このZColorが付いた時は「やっと」という思いでしたが、落とし穴がありました。あまり語られているのを見ませんが、

「Macだとフルスクリーンモードではキャンバス上に表示されず、別デスクトップに表示されてしまう」

という致命的な欠陥があります。そう、パレットなのに、キャンバス上におけないのです。このZColor自体が実行アプリになっていてZBrush外のプロセスで動くため、別デスクトップ上に表示されてしまいます。

あまり語られているのを目にしないのは

1)MacでZBrushを使うユーザーが少ない
2)フルスクリーンモードで使う人が少ない
3)私が知らないだけ

のいずれかだと思われます。それはさておき、私はZBrushもBlenderも没入感のあるフルスクリーンモードが好みです。なのでせっかくの新機能なのに出た直後から「これは使えない・・・」と思いました。なので、Macでは今までどおりペインティングは標準パレットのみで頑張ってました。↓

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はい、寂しいですね。非常にプリミティブです。

実は去年MacからWindowsにZBrushのメイン環境を移したのはCPU相性問題の他にもこの「ZColor使えない問題」も要因の一つとしてありました。

まぁでも、標準パラーパレット一つあれば様々な色を作ることは出来るので、なんとかなったりするものです。Photoshopなどのように機能が充実した2DCGツールから入った人は最初は「なんじゃこりゃ」と思うレベルのカラーパレットだと思いますが、アナログペインティングからZBrushに来た私的には最初はむしろ「絵の具のピグメント色に制限されることなく自由に色を選んで3D物体に塗れる」と感じたくらいです。

どういう感じかはこちらの動画を見れば一発です↓。とりあえず必要十分には塗れます。

また、ZBrushにはPhotoshopやGIMP、Kritaなどのように2Dお絵描きが出来る「PAINTSHOP」という2Dペイントプラグインが標準搭載されています。↓

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どういう感じかは、これまた私が言葉で説明するより公式動画を見るのが手っ取り早いでしょう。↓

この「PAINTSHOP」、タッチはとても良い感じなのです。ただ、

1)もう何年もアップデートされず放置状態
2)3Dオブジェクトを元にして最終的に2D作品を描くのが目的
3)本体とシームレスに連動出来るとはとても言い難い

という状態です。元々2.5Dというお絵描きアプリから進化したZBrushらしいプラグインなのですが・・・この「PAINTSHOP」のタッチと機能で3Dオブジェクトに直接レイヤー重ねたりテクスチャーを塗れたら最高なのに・・・という残念な思いがあります。

また、レンダリング機能もちょっと物足りません。標準のPBRはレンダリングは2D表示のみですし、プリセットを元にいじるのが基本で、あまり自由度が高くありません。その点は、ZBrushと合わせてコンビ的に扱われるKeyshotも同じです。Keyshotは比較的手軽にリアルな表現が可能ですが、

1)CPU依存設計のためパフォーマンスが良くない
2)最近実装されたGPU機能も、負荷と発熱が高い
3)細かい設定がしづらい。自由度が低い

という印象です。最初はいいのですが、突っ込んだ設定をしようとすると、とたんに不自由さを感じるようになります。私はBlenderを触るようになってから、ごくごく自然に使わなくなってしまいました。

こんな感じで、ZBrushのペインティング機能+レンダリング機能は、

その「豊富なブラシと高く突き抜けたスカルプト機能」にふさわしい機能が実装されているとは言い難い状況にある

と言っていいと思います。

Blender:スカルプト70点・ペイント70点

お絵描きツールから進化したデジタルキャンバス的な

「造形家・画家のアトリエ=ZBrush」

と比べると、Blenderは

「総合グラフィックプロダクションスタジオ」

という感じです。アナログ的要素を進化させたZBrushに比べると、素直に「ザ・デジタルDCGアプリ」なわけです。なので根本的に最初から2D・3Dグラフィックをシームレスに扱える設計になっている印象です。

テクスチャーペインティングも標準で備えられていますが、3DCGのしきたりに慣れていないと少々複雑です。その標準機能のポテンシャルを引き出すように使い安く機能拡張したのが「BPainter」というアドオンです。

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一目瞭然。機能の高さと豊富さは圧倒的です。ノードによるテクスチャリングと連動しつつ、フォトショップライクにレイヤーも重ねて塗る事が出来ます。レイヤーごとの透過調整ももちろん可能。

さらに、上の画像のように、やろうと思えばEeveeを使ったリアルタイムレンダリングをONにした状態で塗ることすら出来ます(※CPU/GPU/RAMに余裕があるマシンパワーが必要です)。8コアRyzen 3700Xでも流石に重くなりますが、造形もこのままの状態でちょいちょいと微調整するくらいなら出来ます。

この「ペインティングからレンダリングのシームレスな連動」がBlenderの強みと感じます。レンダリング機能も高く、eeveeもCyclesどちらのレンダリングエンジンも高品質です。

自分で買っておいてなんですが、ZBrushユーザーもKeyshot買うくらいならZBrushからエクスポートしてBlenderでレンダリングするほうが良いのでは?と私は思います。「メインはZBrushで、レンダラーとしてのみBlenderを使う」というのも全然アリだと思います。

KeyshotとKeyshot bridgeの値段を合わせるとそこそこな額になります。HD版は$349、Pro版は$549です。3万7000円〜5万7000円。それだけの価値を見いだせるかどうかはその人の使用目的と技量によると思いますが・・・今の私なら、「Blenderがたとえその金額の有料アプリだったしても買う。それでも安い。」「その金額をBlenderを有料アドオンに投資する方が良い」
とすら思います。(実際ちょくちょく買ってます)

リアルタイムレンダリングはパフォーマンスの問題もあり、今の所「マテリアルモード」での標準的な使い方が現実的かと思いますが、昨今進化速度が目覚ましいメニーコアCPUやGPUなどのハードウェア側の進化とBlender自体のパフォーマンス改善により、

「リアルタイムレンダリング=ONで塗れるのが当たり前の未来がある」

と感じさせるポテンシャルです。

それぞれのメリット・デメリットとまとめ

上に挙げたそれぞれのメリット・デメリットと使い心地を極めて私的な主観から評価すると、

(現時点でのスカルプト・ペイント能力評価)
ZBrush:スカルプト100点・ペイント30点=130点
Blender:スカルプト70点・ ペイント70点=140点
(ワークフロー総合評価)
ZBrush:40点
Blender:80点
(合計)
ZBrush:170点
Blender:220点

という感じです。Blenderを意外に辛口評価しているのは、今後ののびしろを含めた「ポテンシャルへの期待値」も含まれています。
スカルプト機能は正直、まだまだZBrushが上です。豊富なブラシと、スカルプトに特化して進化してきた「スペシャリスト的な強み」がまだまだあります。ただ、私の使う用途・目的・環境・フィーリングの好みなどをトータル的に見てBlenderが上回り、Blender移行を決意したわけです。
今回はこの辺でひと区切り、として続きはまた次回。


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