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不安の強い患者さん

眠れないの裏には

病棟は、基本的に夜は寝てもらい、昼間に活動できるよう生活リズムを整えるという暗黙の業務がある。
軽い左麻痺が残る患者さんは、とにかく「眠れない眠れない。お通じもスッキリでない。夜の尿が多くて嫌だ」等と色々な看護師へ伝え回り、看護師の中には「またあの人言ってるよ」と煙たがる人もいた。

どこまでが事実か気になったので、夜勤帯と日勤帯のパターンを探る。

・排尿は日中3-4回、夜間4-5回。心・腎機能は良好。
・排便は1-2日に1-2回。腹部所見は異常なし。残便感あるため、浣腸希望にて施行するも出ず。
・睡眠は21時に眠前薬服用後は排尿のため、90-120分おきに起きるが、朝は寝不足だと感じない。時々0時以降まで眠れないと、どうしようもなく不安になる。

というような状況だ。抗コリン薬(おしっこの薬)や睡眠導入薬(ねつき良くする薬)を処方後も症状は変わらなかったため、患者さんの隣に座り話してみた。

私「よく電話で話しているところを見かけますが奥さんですか。」

患者さん「ぇえそうです。家内は私がいないとダメなので、他にも銀行や携帯会社にね、これからの生活を考えると色々考えてしまって。」

私「色々考えているんですね。お昼はリハビリもあって考えることも多いと休む暇ないんじゃないですか。」

患者さん「ぇえそうです。布団に入ると一気に不安が押し寄せて、気づいたら0時を回り、早く寝ないとって思うと余計眠れなくなるんです。うんちも調子悪いし、どうしたものか。」

私「どんなことが不安なんですか。」

患者さん「たくさんありすぎて、何から考えて良いかも分からなくて、また考えちゃうんです。」

私「漠然としてるんですね。1つ1つ私が紙に書いていきましょうか。重要なものから教えてください」

①自宅に取り付ける手すりをどのような配置にするか
②介護用ベッドの配置をどうするか
③冬の前に模様替えをしたいが、押し入れに閉まった衣類を取り出せるか。
④残便感について
⑤尿で目覚めることについて

が不安に思っていることだった。眠れないから不安ではなく、不安だから眠れないのだと思った。

必要な勇気づけ

①~③については、家屋調査というものを希望すると担当の理学療法士が付き添い、配置や必要な資源を提案・相談できるので、患者さん1人で悩む必要はないと伝える。

④については、下剤や浣腸処置など看護師の課題でもあるため、今後も一緒に考えようと伝える。

⑤については、心機能、泌尿器での異常所見がなく、年齢的なものが原因ではと考えている。90分~120分おきに起きるが、都度その後眠れており、朝も寝不足感がないことから睡眠障害はないと私は考えていると伝える。

「なんだかすっきりした」

そう言って、便器内の太ましい健康な便を笑顔で見せてくれました。便も悩みもすっきりしたようで良かったです。

ではまた明日。

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