「ナオミの夢」はまだまだ続く、その③好きなことだけほり込むと決めたらこうなる作品オマージュの解説。
8月29日(日)に無事、終演しました舞台「ナオミの夢」。
「ナオミの夢」初演に関してのあれこれは👇
今回の初演は緊急事態宣言下で、お客様のご来場も通常公演の7割減となりました。出演メンバーも過去作の中でもっとも少なく、集客に関してはとにかく「厳しかった」というのが現実でした。
おかげさまで初演の「ナオミの夢」は文化庁の助成金(Art for the future!)の対象公演となり予算的には問題のない公演で、なんならたとえ無観客だとしても開催は可能だったのです。
幸いにも無事に有観客で公演できましたが、終わった瞬間、「ああ悔しい」と感じてしまいました。hishidas4年目で最高の座組を作ることができ、ベストのメンバーで「納得のいく」作品作りができたことから「いや、このメンツをもっとお客さんに見てほしい」という思いが激ツヨで沸き上がったのです。
お金も大事ですがなにより芝居は一人でも多くのお客様に見ていただかなきゃやってる甲斐ございません。
「ナオミの夢 大再演」12月10.11日 神戸三宮シアター・エートー
勢いとは怖いものです。元々は「万が一の場合」延期公演用に押さえていた12月10,11日に「ナオミの夢~大再演」を開催することにしてしまいました。
しかし再演公演に一切、助成金は下りません。
勢いだけで決めてしまいましたが―。こりゃあ場合によっちゃ、私は師走の土壇場で夜逃げかなあとちょっとビビり出しました。
9月10日(金)から予約を開始したのですが、
いやー初演終わったばっかだし、まだまだコ●ナの野郎はデカいツラしてブイブイいわせとるし。。。こんな先行き不透明な時勢でご予約なんか。。。と
週明けに予約状況の報告を受けますと
いや、ようけ
ご予約入っとうがな!!!
初動いきなりご予約下さいました皆様、本当にありがとうございます。前に進む勇気を与えていただきました。
それでもまだまだあと三か月ございます。どうか皆様さらなるご予約ポチっといただき、「ナオミの夢 大再演」に勢いをつけてくださいますようお願いいたしますm(--)m
「ナオミの夢 大再演」ご予約受付👇
予約予約とお願いしながら、まだご覧になっていない皆様に、どうこの「ナオミの夢」という作品をお伝えすれば良いのか悩んでおります。海のものとも山のものともわからない芝居に
「なんでもええよって予約しなはれ」と言い続ける「極道みたいな無理筋(「ナオミの夢」セリフでも登場)」を痛感しながら
少しでもこの芝居の雰囲気をお伝えできればと
今回は「ナオミの夢」を作るうえでネタ元にした(モチーフ、オマージュです、パクリじゃございません)ものをご紹介できればと、本章書かせていただきます。
少し長いですが一気に書いてしまいました。舞台写真はすべて松田ミネタカさん撮影です。
”「ナオミの夢」はシェイクスピアだ”と宣言した。役者は全員「はあ?」だった。
私はとにかく最初は「セリフがアホみたいに異常な量、物語も気が付いたら破綻してる、で、”ベタな笑かし”は一切なし」という内容だけイメージしていたのです。
で、最初に書いた脚本の前半部分をメンバー集めて本読みしたら、本読み終了後に全員から
「なんのつもりですか、これ」
と冷たく突き放されたのです。
岩佐好益は真顔で「キャリア捨てたんですか」と聞いてきましたし
伊勢美琴はTwitterに「おふざけが過ぎる」と書いてました。
たぶんそう思うような内容だったのです(見てない方すみません)。私は真剣でしたけど。
そもそも書き手の私が考えてることがすぐわかる、芝居勘の合う役者さんになんかこの30年間、一度たりとも会ったことございません(全部を見抜かれたのは紅壱子さんだけかなー)。
👇こちらの公演についてはまたあらためて。。。
寂しいんですがこの先もわかる人は出てこないと思います。
仕方ないんで、私はこう叫んだのです。
シェイクスピアなんだよこれは!!
すると役者は全員、ひたすら無言でした。
完全に頭おかしいと思ったらしいです。
だってシェイクスピアはだいたいが「セリフがアホみたいに異常な量、物語も気が付いたら破綻してる、で、”ベタな笑かし”は一切なし」でしょうが。
「ナオミの夢」はシェイクスピアです(無理筋)。再演はどうか「私たちはこれから高尚にもシェイクスピア演劇を観るんだ」と思いながら劇場に来てくださいませ(無理筋)。
音の使い方とか役者の叫ばせ方はいわゆる「つか芝居」がベースになってると思います。
これは私たち世代(いや、ちょっと上世代)は劇作家・つかこうへい氏の影響をなんだかんだと強く受けていますので、どうしてもそうなってしまうのです。
しかし、いわゆる「つか演劇」の根底にある「前向きのマゾヒズム」という概念は70年代という時代の空気が色濃いもの過ぎて、令和の時代においては「やる側も観る側も」が咀嚼しきれないように思えます(芝居の構造は間違いなく面白いんですけど)。なので、そこは私もあまり踏襲できてないと思います。
私的にはどちらかというと80年代末のバブル期に野田秀樹さんが手がけていた「シェイクスピア三部作」のイメージが大好きで、こっちの方を思い描いたと思います。いやめちゃくちゃおこがましいんですが。
野田版「から騒ぎ」なんかほんと豪華なキャスティングでした。いまだにあの華やかで軽やかで、言葉の流麗さ、夢みたいな詩的さ、スピーディな展開と言葉遊びが延々と続くシーンの数々を思い出します。
「野田版 真夏の夜の夢」なんか日生劇場の舞台にジェットコースター作ってたなぁ。大竹しのぶさんがそれに乗って出てきた時のマイクいらずの叫び声は今でも忘れられません。
ちなみに私が読売文学賞(第57回)もらった次の年の受賞者(第58回)は野田さんなんです、誰も知らんけど(つかこうへいさんは第42回です!!)。
オープニングは「RCサクセション 久保講堂ライブ」をパクった。
スタジアムのステージに向かうロックスター。その、バックステージ。楽屋から舞台袖に向かうスーパーロックンロールスター「キング・フレデェ」のシーンは芝居の冒頭、別撮り映像でご覧いただきましたが
これは私が中学~高校時代に最も強烈な影響を受け、その後のものの考え方まで影響された「RCサクセション」が1980年4月5日に行った伝説の「久保講堂ライブ」(アルバム「RHAPSODY」)の記録映像の冒頭、Vo.忌野清志郎さんが「よぉーこそ」のイントロが流れる中をステージに向かうシーンがやりたくて撮りました。
忌野清志郎さんが、後ろに侍従を従えガウンを羽織りながら舞台を降りていく定番「ガウン・ショー」(元祖はジェームス・ブラウン)のイメージ(「日本武道館ライブ」(1981年12月24日)もパクったつもりでしたが
私が作ったら「ガウン・ショー」と言うよりも「猪木VSアリ戦」(1976年6月26日、日本武道館)を前にして、羽田空港に降り立った「モハメド・アリと金髪鬼フレッド・ブラッシー(なぜかアリのマネージャーとして付いてきた)」みたいになってしまいました。
再演時には撮り直そうと思います。
ここまで誰にも伝ってない気がしますけど。。。
続けます。
稽古入り前、岩佐さんには「芝居なんかどうでもいいから、とにかくロックスターのステージングを完コピしてきてくれ」とオーダーしました。
やっぱりRCサクセションの動画を見倒したんでしょうか。表情やメイクも忌野清志郎さんに完全に寄せてきた感じです。
今回の舞台はライブシーンを重点的に作りました(すべて口パク)。ライブ中のボーカルの動きに関しては本職の蟹江敬子がいるので、ディテールに心配はありませんでした。
👆こういうステージングの表情や目線、空気感は「役者」では出し切れないものだと思います。
2曲目に蟹江敬子が演じる「ミス・ドンファン紀州」がフレデェのステージに飛び込む感じは「「ミック・ジャガー in 東京ドーム」(1988年3月23日)にゲスト出演した時のティナ・ターナー(「ブラウン・シュガー」)みたいなのでよろしく」とお願いしました。
「ナオミの夢」は「ボヘミアン・ラプソディ」(2018年・英米)のパロディみたいに思われるかもしれませんが、あんまりそこは深く意図してません。
意識したというか、あきらかにパクった(言うてもた)のは「タイタニック」(1997年・米)です。冒頭とエンディング、婆さんになったナオミの回想なんかは「いただき」ました。
しかし「タイタニック」の名シーンは「ナオミの夢」ではプロレスの古典技であるフルネルソン(マスターロック)の態勢にアレンジしてます。このままフレデェがナオミを後方に投げれば「ドラゴン・スープレックス」になりますので、ズバリとしたパクリではございません。
さらに、ナオミとフレデェが出会い、恋に落ちる運命の場は豪華客船ではなく「有馬兵衛の向陽閣」です。セレブの集う高級旅館(あの「SMAP」も宿泊しました)です。再演までに有名な歌のフレーズを覚えていただきたいです。
初演終了後にTwitterで「向陽閣、向陽閣」とつぶやいてたら向陽閣の公式様から「いいね」されてちょっとビビりました。
あとは「マーボと言ったら丸美屋」さんのことつぶやきましょうか。。。
なんのこっちゃかと思われますでしょうが、そこらへんについては大再演をご覧いただけましたらわかっていただけるかと。
とりあえず80年代の角川映画をほり込んだ。
「ナオミの夢」のキャラとか芝居の空気は、70年代、80年代の角川映画のイメージを抱きながら作りました。私が中学、高校時代にしつこく追いかけた、あの「メディアミックス全盛時代」の邦画黄金時代の雰囲気です。
チープさとか、ガキ臭さとか、コンプラ皆無の粗い世界観とか、よく考えて見たら雰囲気で進むムチャクチャなストーリー展開の感じとか。
今回、「ナオミの夢」を作るのに考え直したことは
「新しいと思われそうなもん作る無駄な努力はもうしない」ということでした。だって今さら新しいこと作ろうとしたって、私は無理ですから。感性古くなってるにきまってますし。
で、この春に55歳になった途端、「自分が10代の頃に好きだったことしかやらない」と感じたのです。
ドラマの仕事をやったら、まあまあ疲弊します。いや仕事は大切だしやらせてもらえばあらゆる点で充実するんですが、結局、「今の時代」を追いかけ続けるだけの作業が続くのです。「時代」だって消耗品です。作ってしまえば、もう過去のものです。
だったら、です。どうせ自腹切って芝居作るのに、無理くりに「今」をひねり出すより、「本当に純粋に好きだったものの追体験」をやってたい。
きっとその方が”自分が新しい”のです。
まあ、「じじいの追憶」と言われればそうなんですが
私はもう自分の芝居では「好きだったものしかほり込まない」と決めました。根元から腐りたくないから。
80年代の角川映画と言えば松田優作さん。
「探偵物語」(1983年)に関しては薬師丸ひろ子さん主演のこの作品が出てきそうですが、
「ナオミの夢」はズバリこちらの「探偵物語」(1979~80年・日本テレビ)です。これも大再演でご確認くださいませ。
伊勢美琴が演じた「シスター姿のプロデューサー」は
志穂美悦子さん主演の「二代目はクリスチャン」。。。いや、映画自体はそんなに好きではないので、あくまでイメージです。
どっちかというと梶芽衣子さんの「さそり」シリーズです。
vol.2から岩佐好益と二人だけ「hishidas所属」だった宇野結菜が演じた「クイーン・ジャニズ」
こちらのイメージはそのまま「ジャニス・ジョプリン」。「ドラッグ、sex、ロックンロール」の象徴。
宇野結菜が演じた「ジャニズ」がクライマックスにスタジアムで機関銃を乱射するシーンのモチーフは70年代パニック映画ブームで生まれた名作「パニック・イン・スタジアム」(1976年・米)から。
パニック映画最高傑作の「タワーリング・インフェルノ」(1974年・米)、ジェリー・ゴールドスミスのテーマ音楽が好きで一生聴いてられる「カサンドラ・クロス」(1976年・伊、英、西独、仏、米)。あと「ポセイドン・アドベンチャー」(1972年)。もう、私がガキん時にドップリとハマって小遣いからSPサントラレコード買いまくってた映画たち。全部、血肉になっております。
宇野結菜の「ジャニズ」と竹下ポップさんが演じた「バンドのリードヌンチャクスト、ポップン・ポーップ」のカップルのイメージは
「シド・アンド・ナンシー」(1986年・英)。「セックス・ピストルズ」のシド・ビシャスと恋人ナンシー。
古いところでは「俺たちに明日はない」(1967年・米)のボニー&クライド。
要するに「どうしようもないバカで無軌道ではた迷惑で非常識なくせに一途で純粋で憎めないクソガキのバカップル」をやらせたらこのhishidasのコンビは抜群だと思います。二人で並んで立たせるとガキ臭くてバカみたいで可愛いから好きなんです。
再演でお楽しみください。
全編通じてやりたかったのは「Melody」
「ナオミの夢」の登場人物の年齢はすべて10代に設定しています。初演を観られた方から「フレデェは18歳」というのは無理筋過ぎると言われたのですが、いや、そんなことはない。だってYumiが演じた「ナオミ」は16歳ですから。
なぜなら今回の作品「ナオミの夢」の大モチーフは、名作中の名作映画「小さな恋のメロディ」(原題『Melody』。1971年・英)だからです。
ビージーズの名曲『Melody Fair』はこちら👇
たぶん私が本当にやりたいのは「10代のガキの、あかん恋愛」なんだと思います。
成就なんか絶対にしない恋。夢ある結末なんかあるわけのない想い。
残念ながら私は高校が男子校でしたので、一番「あかん恋愛」を正しく実行できる大事な時期をクソイカ臭い連中の中で過ごさねばなりませんでした。
おそらくその喪失感を埋めるためにお芝居を書いているんだと思います。
「小さな恋のメロディ」で、大人たちの縛りから逃げ出した「ダニエルとメロディ」がひたすらトロッコを漕いで線路を走って去って行くラストシーン。
あんなに切なく儚い二人の未来を感じさせる一連のシークエンスが他にあるでしょうか。
そうです、初恋なんか絶対に叶わないのものなのです。
子供たちにはよく教えてあげることだ
父親たちの苦悩が ゆっくりと消えていったことを
子供たちには 君らが見た様々な夢を伝えるんだ
子供たちが何かを掴んだことを 君はきっと知ることになるよ
「ティーチ・ユア・チルドレン」 (Teach Your Children)より
「ナオミの夢」ラストシーンは「うたかたの恋」
「ナオミの夢」のラスト、80年前に亡くなったフレデェと96歳になったナオミが思い出の中で再会するシーン。これは。。。
私が宝塚歌劇の演目で一番好きかも知れない「うたかたの恋」から……。
私が舞台を見たのは遥か昔、麻実れいさんが主演を務められた初演(1983年)です。
私の姉の箙かおる(元雪組組長、2017年退団)がこの時のラストシーンで「うたかたの恋」の影歌を担当しており、観劇後はそのカセットテープを死ぬほど聞いていました。
今でもたまにカラオケ行ったら朗々と歌い上げます。
どうです一緒に行きますか。いいですか。
ざっくりと書いてきましたが
「ナオミの夢 大再演」、ご興味持っていただけましたでしょうか。
ガキの芝居なんです、これ。
まだ難しいでしょうか。
ではまた次回も
しつこくなんか書かせていただきます。
よろしくお願いいたします。