【服部奨学生紹介】第15期奨学生/大河 龍之介(京都大学)
服部国際奨学財団に在籍する、京都大学博士課程アジア・アフリカ地域研究研究科の大河 龍之介さんが以下の学会で受賞したことを紹介します。
(1)第34回日本熱帯生態学会年次大会(日本熱帯生態学会)
・学会URL:https://www.jaste.website/
・受賞URL:https://sites.google.com/view/jaste34
・研究題目:マダガスカルの熱帯乾燥林における齧歯類による貯食型種子散布
・発表概要:
森林生態系において、ネズミなどの齧歯類は植物の種子散布者として機能することが広く知られています。彼らは植物種子を入手後、親木から離れた場所の地中へ埋め、将来利用する資源として貯蓄する、貯食行動を行います。埋められた種子のうち、いくつかは掘り返されずに地中に残存し、発芽へと至ります。この齧歯類による貯食行動は世界中で観察され、知見が蓄積されてきましたが、マダガスカルではこれまで観察記録がありませんでした。本発表は、マダガスカルで初となる、齧歯類による貯食行動を報告したものです。この発見により、マダガスカルの森を作るプレイヤーとなる動物が新たに明らかとなり、基礎及び保全生態学的研究の新たな展開が期待できます。
(2)第30回日本生態学会近畿地区会(日本生態学会)
・学会URL:https://www.esj.ne.jp/esj/
・受賞URL:https://sites.google.com/esj.ne.jp/kinki-branch-of-esj/
・研究題目:熱帯林生態系の種子散布における貯食型散布の重要性評価
・発表概要:
マダガスカルの齧歯類が貯食行動を行うことが明らかになりましたが、他の動物と比べて齧歯類は植物にとってどの程度重要なのでしょうか?本発表では、マダガスカル熱帯乾燥林に生育する植物と、その種子を運ぶ動物たちとの相互作用を調べ、齧歯類の相対的な重要度を評価しました。調査の結果、森では大型の霊長類と齧歯類が、他の動物に比べてより多くの植物種と相互作用し、散布者として重要な役割を担うことが明らかになりました。マダガスカルでは霊長類の大部分が絶滅危惧種に指定されており、これまで散布者の絶滅による森林衰退が懸念されていました。多くの齧歯類は森林環境に高い密度で生息しているため、霊長類が減少、または絶滅した環境下で、代替的な役割を担うことができるかもしれません。
大河さんは現在マダガスカルに再び渡航して研究を継続しています。帰国していた半年間には、上記の学会だけではなく当財団の2024年度第1回服部奨学生研究発表会にて発表を行いました。
学会発表は同じ分野の専門家・学生の質疑応答となりますが、この研究発表会では他分野の服部奨学生及び服部国際奨学財団の理事等から多くの質疑応答があり、大河さんにとっては違った視点を知る良い機会となり、服部奨学生にとっては学業や研究への良い刺激になりました。
このように服部国際奨学財団では、国籍・専門分野を問わず、社会的課題に強い関心と問題意識を持ち、その解決を目指した学修・研究に取り組む学生、また、経済的理由により修学が困難な学生に対して、月額10万円の給付奨学金による支援を行っています。また、行事等を通して奨学生同士が分野を超えて刺激を与え合い成長につながる機会を提供しています。