エリアF -ハレーションホワイト- 17
「ほんとに、ぼく、だいじょうぶです。たぶんここ草むらだから、だいじょうぶだったんです。ほんとにだいじょうぶです。」
そしてぼくはそこから少し離れたところに横倒しになっている、ロードレーサータイプのぼくの自転車のところへゆき、それが壊れていないか確かめた。幸いに自転車も、そんなに大きな被害を受けていないようだ。少しハンドルが曲がっていたはが、そんなことより、早くこの場から立ち去りたかった。確かに事故だったのかも知れないけれども、こういう状況には慣れていなかったし、大事になるのは嫌だった。
「ほんとうにだいじょうぶですから。みなさんすいませんでした。」
ぼくは3人に代わる代わる頭を下げた。
「そうかあ、うん、じゃあ行くけどな。でも気をつけて走ってくれよ。」
特に異常がなさそうなぼくを見て、ややこしいことにはなりたくないのだろう、ダンプの運転手は、そそくさと、かつ何度も「本当にだいじょうぶだな」と念を押しながら立ち去った。
「あなた、いいの? あとで後遺症がでるってこともあるわよ」
「でもまあ、若くて身軽でよかったなあ。もし何かあったら、すぐ医者に行きなさいよ」
人の良さそうなおばさんと、真面目そうなおじいさんは、そういって心配してくれた。
「はい、ありがとうございます。ほんとにだいじょうぶですから」
ぼくは二人にお礼を言うと、自転車を押して、家へ向かった。
「ちょっと急ぎ過ぎたなあ。」
少し反省しているうちに、さらに記憶がはっきりしてきた。ぼくは急いで家へ向かっていた。そうだ。もう頭はすっかり元に戻った。こうしてはいられない。早く帰って、学校のデータベースにアクセスしなければならないのだった。ぼくには時間がなかった。
続く
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