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エリアF -ハレーションホワイト- 11

 ぼくは昨晩、ディスクの未使用領域を利用して、システム管理者にもわからない、もちろんWeb内からは絶対に見えない、異次元空間とでも言える別の新しいWeb空間を作ろうとしていたのだ。それをするためにディスクの構造を探っていたら、突然、瞬間移動してしまっていたのだ。ぼくは驚いた。最初何がおこったかさっぱりわからなかったからだ。同時に恐怖も感じた。もしかしたら、この仮想空間で迷子になってしまい、二度と出る事ができなくなってしまったのかと思ったからだ。

 実際にはあり得ることではないが、もしWeb内で迷子になってしまったらどうなるか。あるいはぼくが「カバ」にしてやったように、Webから出られなくなったらどうなるか。

 もし自力でWebから出られなくなれば、それはもう「自力では」二度と出られないということに他ならない。Web内に意識が行っている状態では、現実世界でのヘッドセットを外したり、あるいはパソコンの電源を落としたりすることができないからだ。家族か誰かが見つけて、Webとの接続を切断してくれるまで、Web内をさまよう事になる。もし誰も発見してくれなければ、数日で衰弱死することになるだろう。もちろん現在のヘッドセットには安全装置がついているので、最大48時間で、自動的にWebとの接続は解除される。

 Webとの接続が解除されたとき、当たり前だけれども、接続解除の情報が、Web管理者に送られる。もし、万が一ハッキンングしている最中に、Webとの接続が自動切断されたなら、ぼくの不法行為が全てシステム管理者にばれてしまうことになるということだ。だからぼくは、自分のヘッドセットを改造して、安全装置が作動しないようにしている。安全装置が作動しないということは、もし、Webから出る、つまりWeb内で自力で接続を解除することができなくなれば、ぼくは永遠にWebから出ることができなくなるということ。Webから出られなければ、現実世界ではヘッドセットをつけた状態が永遠に続くということ。だから、ぼくにとってWebで迷子になる事は、現実世界での死を意味している

続く


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