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クロスオウヴア 18
■■■ DNA 5 ■■■
「デザイナー・チャイルド? 人間が人間をデザインして作ることができる?」
佑右の思考は激しく回転していた。
「そうか、DNAのどの部分の情報がどういう体を作るか、ってことまでが分かったんだから、これをプライ人のDNAプログラムにそのまま転用すれば、おれたち『人間』をコンピュータ上に再現できることになる。」
テレビの特別番組が終わるとすぐに、佑右はDNAの情報が公開されたホームページに行ってみることにした。
「うへーっ、こりゃすごいぜ。目が回るな。」
あまりのデータの量の多さに、佑右は驚いた。DNAの端から端まで、それぞれどういう役割をはたしているのかのすべてが書いてあるのだから仕方がない。また別のページでは、もう亡くなった過去の天才、アインシュタインやベートーベンなど、遺骨や遺髪などが残されているものは、その遺伝子が解析され、データがアップロードされていた。そして、優れた才能が発揮された理由を遺伝子に求めた数々の意見が、もうすでにホームページ上で交換されていた。
「これをプライ人のデータにするには膨大な時間がかかるぞ。いや・・・」
佑右はWVDをじっと見つめながら、しかし今ひらめいたとんでもないアイデアを一つにまとめようと、心はWVDをつき抜けて遠くに飛んでいた。しばらくして、ゆっくりと彼の目が天井の方へ向かった。
「・・・いやまて、でも・・・このDNAデータは正確に解読され、その情報が詳しい解説と共にすべてホームページにアップロードされているのだから、『人間のDNA解析データ』を読み込んで『プライ人のDNAデータ』に自動変換するプログラムさえ組んでしまえば、そうたいへんな作業ではないかもしれない・・・」
ホームページにアップされている過去の偉大な人物たちの「DNA解析データ」を解析して「プライ人のDNAデータ」のどの部分に当たるのか対比させることが出来れば、そう、解析の作業さえも自動で行うようにプログラムすることができれば、ほとんど手間がかからないかもしれない。
「これは、本当にできるかもしれないな。人間をコンピュータの中に取り込むってことが。」
「プライヴィット」という「ソフトウエア」の上では、たとえば髪の毛の色や手足の長さなど、身体的特徴や能力は無視しても構わない。他にも省略してもいいDNA情報はいっぱいあるはずだ。脳の構造に関する部分さえ細密に、正確に変換することができれば、ソフト上に「人格」を持たせた存在として作り上げることは出来るだろう。どんな顔をしていようとどんな背の高さであろうと、コンピュータの中では関係ないのだ。
「問題は脳の構造だけなんだ。」
佑右の頭の中ではもう、「人間のDNA解析データ」を「プライ人のDNAデータ」に変換するソフトのアルゴリズムの作成に取りかかっていた。