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エリアF -ハレーションホワイト- 1
ああ、ぼくはいつも、夢にうなされる。決して何か恐ろしい内容の夢でもないのに、冷や汗と、恐怖と、重苦しくのしかかった澱んだ空気とともに朝を迎える。
見る夢はいつも同じ。ぼくは一人。ぼくのまわりには誰もいない。誰も見えない。
ぼくの前には何もない。無限に続く空間。後ろを振り向くと、ただ真っ白な、まるで厚い霧の壁があるよう。閉ざされて見えない。
ぼくには分かる。ぼくの前は未来。未来はまだない。ぼくの後ろは過去。過去は見えない。後ろを振り向く時、ぼくは不安になる。ぼくは誰?
その答が厚い霧の壁の向こうにあるような気がして、ぼくはそこに向かって真直ぐ歩き出す。歩いても歩いても、霧の中には入れない。何もぼくの邪魔をしてはいないのに、それでも霧を越えられない。いくら歩いても、霧の壁は目の前のまま。ぼくは誰?
また頭の中で問いかけがある。ぼくは誰? 知りたくて知りたくて、ぼくは霧の壁に向かってまっしぐらに駆け出す。走っても走っても、霧の中へは入れない。霧の向こうには何があるのだろう。いや、何もないのかも知れないと、本当は思っている。そう思っている。おそらくそう思っていることを自分で分かったとき、ぼくの頭は恐怖に包まれる。真っ白な霧が灰色に変わって、ぼくを包み込む。こわい、コワイ、こわい。頭の芯がきゅっと縮まって硬くなって、そこから染み出た恐怖というエキスが脳細胞にしみ渡る。
あああああああああ
ぼくは全身冷や汗にまみれて、目をさます。