プラント業界では前代未聞。柳井工業が「ES採用(在籍型出向)」を採用した背景を徹底解説!
先日、プレスリリースにて柳井工業が「ES(エキスパート・シェア)採用(※)」の導入が決まったことを配信しました。
※ES(エキスパート・シェア)採用は「在籍型出向」のことです。以下で詳述していきます。
思った以上に反響が大きく、多くの方に読んでいただき、たくさんのご感想をいただきました。すでに、何件かお問い合わせもいただいております。ありがとうございます!
ただ、日本ではまだ馴染みがないこともあり、度々「在籍型出向って何ですか?」と聞かれることも多いです。
そこで今回は、実際に採用に携わる柳井工業常務・柳井にインタビューをして「ES採用の深掘り」をしていきます。
「ES採用」ってなに?
━━さっそくですが、ES(エキスパート・シェア)採用ってなんですか?正直、私もまだ完全に理解しきれていなくて……。
柳井:結論から話すと、「ES採用=在籍型出向」と思っていただいて大丈夫です。頭が混乱してくると思うので、今回のnoteでは「ES採用」と呼んでいきますね。
ES採用は、分かりやすく言えば「派遣」に近い感覚ですね。
「在籍型出向(ES採用)」は、新型コロナウイルスの影響により、つい最近できた雇用方法になります。厚生労働省の内容を一部抜粋してみましょうか。
新型コロナウイルス感染症の影響を受け、事業の一時的な縮小などを行う企業が、人手不足などの企業との間で「在籍型出向」を活用して従業員の雇用維持を図る取り組みがみられています。(中略)
いわゆる出向とは、労働者が出向元企業と何らかの関係を保ちながら、出向先企業と新たな雇用契約関係を結び、一定期間継続して勤務することをいいます。(出典:在籍型出向支援)
柳井:ちょっと文字だらけで理解しづらいと思うので、仕組を図解にしてみました。
今度、柳井工業は製造業から従業員を受け入れる予定です。出向元と表記すると分かりづらいので、ここでは出向元企業を「製造会社 A社」と表記しています。
「ES採用」の仕組み
柳井:「ES採用」は出向元企業である製造会社から、一定期間、柳井工業で働いてもらいます。
ここでのポイントは人材Aさんは「製造会社に在籍した状態」で、柳井工業で働けます。
━━なるほど!雇用を保ったままなので、社会保障は受けれる。超シンプルに言えば、一定期間「勤務先が柳井工業に変わる」というイメージですね。
柳井:そうですね。
柳井工業が「ES採用」を導入したワケ
柳井:コロナ禍の影響で製造業に大きな打撃が来ており、失業者が増えています。原因は、「不況によりものが売れなくなっているから」と言われています。
普段、採用関係でお世話になっている株式会社キャスターの石倉さん(@kohide_I)から、たまたまこの現状を聞きました。
中でも興味深かったのは、製造会社の中でリストラに遭っているのは、意外にも「20代の若手社員」だそうです。(もちろん企業によって違いはあると思います)。
━━え、意外ですね……。年長者からリストラされるイメージがあったので。
柳井:私もびっくりしました。原因を考えた時に、「教育コスト」が大きいかなと思っています。若手をある程度まで育成するのに、企業は膨大なコスト(時間やお金)がかかりますよね。
不況時はお金も精神的にも余裕がなくなるので、若手の育成期間を「コストカット」しているんだと思います。
そして悲しいことに、今の若手社員は早期退職するケースが高いと言われていますよね。経営者からすれば「せっかく育てたのに……」と惜しくなる気持ちも分かります。
若手を育成するよりも、ベテランを中心に引っ張ってもらった方が、企業の生存率は上がる。つまり、リスクを極力避けられるんです。
━━なるほど、そんな背景があったんですね。柳井工業が「ES採用」を導入した理由は何ですか?
柳井:以下の図のように、シンプルに「柳井工業が求める人材」と「リストラ対象者」がマッチしていたからです。
柳井:プラント業界の現場は、ほとんどが工場です。業務内容は、主にメンテナンスや工事をしています。
そして、製造会社の出身者の多くは、工場勤務を経験しています。工場の仕組みや設備の内容に馴染みがある人も多いので、シンプルに柳井工業が求める人材と相性がいいんです。
以前こちらの記事でも書いていますが、柳井工業を退職した理由のほとんどが「想像していた業務と違うから」でした。
また、活躍しているメンバーの共通点が「工場勤務経験者」や「メンテナンス経験者」。総じて、製造会社の方々と相性がいいんです。
人材不足をきっかけに柳井工業が仕事をお願いしているだけなのに、結果的には、雇用の継続になり、製造会社も助かる。Win-Win-Winなんですよ。
「ES採用」の最大のメリットは「Win-Win-Win」
━━ちょうどES採用のメリット話が出たので、改めて「Win-Win-Win」だと感じる理由を聞きたいです。
柳井:現状をおさらいしましょう。出向元企業である製造会社は、不況により退職者が続出しているとお伝えしました。
また、柳井工業(プラント業界含む)は人手不足なので、人員確保が必要な定修工事やメンテナンスの期間中に、製造会社から派遣してもらいます。
ポイントは、柳井工業に派遣で来てくれたAさんは、製造会社との雇用契約が存続している状態で柳井工業で働けます。
━━踏み込んだ質問になりますが、給与はどちらが払うのでしょうか……?
柳井:製造会社と柳井工業です。「どちらがどれくらい払うか?」は、これから決めていきます(2021/3/15 現在)。
なのであくまでも想定になりますが、例えば、柳井工業の給与負担が「6割」だとします。
月収が22万円であれば、柳井工業が6割である”8万8千円”をお渡しするので、シンプルに製造会社の負担が減りますよね。失業者をぐんと減らせます。
「ES採用」のWin-Win-Win
もちろん、柳井工業にも大きなメリットがあります。
お仕事を2、3ヶ月共にするので、「これからも一緒にお仕事をしたいな!」と思えば、ミスマッチがほぼない状態で採用ができるんです。
「ES採用」を通して実現したいこと
━━では最後に、ES採用を通して叶えたい未来があれば教えてください。
柳井:柳井工業は「プラント業界を”より”良くする」というビジョンを掲げています。ES採用を通して、実現への第一歩に繋げたいです。
私は、プラント業界の「視野の狭さ」が大きな課題だと感じています。
業界の歴史は長いのに、まだ「機械さえ知っていれば大丈夫」「技術力さえあれば安泰」という風潮があり、未来志向が足りていません。(もちろん、技術力はプロとして大切ですよ!)
プラント業界をより良くするには、まずは業界を熟知し、時代に乗ることも大切だと感じています。
ES採用を通して色んな方と繋がり、お互い「一緒に働きたい。プラント業界をより良くしたい!」と思える方に出会えたらと思います。
ES採用がそんな接点になれたら、これ以上幸せなことはありません。
取材・文/ヌイ(@nui_nounai)
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