小説チャレンジ4/100
★ここまでのあらすじ
遅々として進まない筆に嫌気がさした頃、
ひょんなことからストーリーのリライト作業を手掛けることに。しかーし!書いているとき、あまりにも物語的な文章表現の低下に驚いてしまう!TLで見かけた「800文字で小説を書く毎日チャレンジ」を実践すると心に誓い、noteで書いてみることにしたのであった……!!
本日のお題「セミファイナル」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
じーじじじ
じーーーい……
蝉の鳴き声は、うるさい。
寄ってたかってじゃんじゃん鳴く。たまにミンミンゼミもいるが、基本的にはアブラゼミだ。ミンミンゼミは緑色で可愛げがあるが、アブラゼミはまさに使い倒した油みたいな茶色で、鳴き声もただただ耳障りだ。
海外ドラマじゃ夏でも蝉の声は聞こえないし、きっとこんな雑音まみれの日本の夏を生きる私たちはそれはそれはたくましい耳の持ち主なんだろう。
ぼーっと床で液状化しながら「蝉」でニコ○コ動画を漁っていると、およそ「蝉」とは思えない動画がヒットした。
袴に扇を持ったスッと背の高い撫で肩の凛とした人がくるくると舞っている。 ああ、よく見ればくもんのCMやにほんごであそぼへの出演で名高いあの方だ。薄暗くてよく見えないが、後ろにずらっと一直線に並んで座っている人たちがいる。どうやら冒頭から聞こえるこの蝉にも負けない力強い声はこの人たちがうたっているようだ。
くうるりくるりくるくる……
静かなような、激しいような。音こそ大きいものの、空間を支配している静けさに、じっと息を忘れて観入った。
装束が、何となく蝉の羽のようにも見える。跳んだ?! すごい。体幹にまったくブレがない。舞い手は涼しげに舞っているが、これはものすごく体力のいる舞いに違いない。おもしろく、どこか混迷してるような。蝉をこんなにも激しく、こんなにも苦しく解釈した人がいたんだ。
さっそく検索してみると、これは室町時代に成立した伝統芸能の舞いで「小舞」というらしい。観阿弥・世阿弥が成立させたものだという。きっと当時から蝉の生態は変わらないだろう。
西の方の人だからクマゼミかもしれないが、何だかミンミンゼミのような気がする。
蝉というのは何だかあわれだ。何年も土の中で暮らしたのに、わざわざ危険な外に出て、できるかもわからない生殖のために大声で鳴いて、そして十余日で死んでいく。アスファルトにいる蝉は余計憂鬱で、車か何かのタイヤでぺしゃんこになっていたりする。ひっくり返ってしまったやつにぼうきれを近づけると、必死で表に返ろうとするが、よしよし返ったな、と思うと次の瞬間にはよろめいてひっくり返っていたりする。背を支えるバランスをとるのは、死にかけの身には大変らしい。
大きくて何年も生きる人間から見ればこんなにも滑稽であわれをもよおす蝉だが、当の蝉からしたらこの生はこういうもので、たった一度きりを死力を尽くし生き抜いたに過ぎない。蝉の当事者性……のような迫力を感じさせられるひとときだった。
まあ、人間なので冷房で涼をとり床で液状化して、これからアイスを食べるけどね。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
セミファイナル、という言葉を聞いたときは感動したなぁ。
1071字。今回も少し、エッセイのよう……だけどギリギリ小説。
※IDAHOだとアイダホ州が出てきてしまうので、IDAHOBITと略さず表記することにしました。わたしは、平等を実現するには、単にそれを支持するだけではなく、差別に抗議する必要があるな、とこの理念には共感しています。
もしフェミニズムをIDAHO風にいうなら、Against Misogyny, Patriarchy,Rapecultureでしょうか。IDAMPRみたいな。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?