自分の居場所
オコエ瑠偉選手の告白を読んだ。
桃仁花選手のツイートも読んだ。
子供は残酷だ、と簡単に言うけれども。大人は何もできなかったのだろうか。見方が狭すぎるのか、どうすべきか知識として持っていないのか。
世の中には様々な人がいる、とそれだけでも子供たちに教えなければならない。
子供心がどんなに傷ついたのか。心を無にして過ごさなければならないほどそれが続いたのかと思うと、ショックだったし悲しくなった。
それでも彼は野球の道に進んで、その能力を開花させた。プロ野球選手になる、という一握りの人しか叶えられない目標を叶えた。理解ある人に出会えたのだと思いたいし、今のチームメイトもファンも、彼を彼として見て、支えてくれているんだと思いたい。
彼が普通に笑えて、これからも野球に打ち込めるように願いたい。
人と違うことで、いじめられる。でも、人と違ったところがなければ生き残れないのが、プロ野球という世界だ。オコエ瑠偉には、その身に備わった能力がある。それを磨いて、幸福な人生を掴んで欲しい。
そうして、この告白を見て、もう一人の選手を思い浮かべずにいられなかった。
ヤクルトにも、ジュリアスという選手がいる。お父さんはアメリカ人。お母さんは日本人。沖縄と東京で少しは事情が違うだろうか。知らない人に英語で話しかけられたり、スポーツ紙に「外国人投手」と書かれてしまうくらいならまだいいけれど、子供のころから傷つけられてきたのかもしれない、と思うと心がとても痛くなる。
でも高校時代は、いい仲間がいたんだろうと思う。ジュリアスの写真をTwitterに載せると、たくさんの高知の人が見てくれた。
仲が良かったチームメイト、プロ入り後も応援してくれている仲間のことも知っている。
ルーキーイヤーから見た初めての世代だったジュリアス。高卒ルーキーの投手同士、いつも奎二くんと一緒にいたころを思い出してみる。笑顔がおひさまみたいに明るかった。故障でリハビリしていた頃も、腐らずトレーニングを頑張っていた。根が素直でいい人なのでファンからは好かれているし、そう思うと少しホッとする。
キャッチボールイベントや、コンディショニングのイベントに、ファンと一緒に参加してくれた。あの時には、児山くんの部屋に毎日入り浸っているという話をしていた。きっととても仲が良くて頼れる先輩だったんだろう。
トークイベントで話すのも聞いた。埼玉のことはまだよく分からないって。寮でチームメイトがエレベーターに乗ると、ジュリアスが乗った後はすぐ分かるんだって。いい匂いがするから。香水が好きなジュリアス。
上田くんは、チームのイケメンやかっこいい人を聞かれると「ジュリアス」って答える。気に入ってるんだろうな。
星野くんが寮で髪を切ってあげたり、タテさんのトミー・ジョンTシャツを着ていたり、自主トレでは近ちゃんと一緒にいる姿をよく見たりもした。
小野寺コーチの愛情溢れる叱咤激励も聞いた。
4年間は短くない。どんどん成長していくジュリアスの、いろいろな姿を見てきたと思う。明るくて幼かった笑顔は、だいぶ大人びた笑顔になった。
そうして、ジュリアスはジュリアスだって思ってる自分がいる。きっと見ているほかのファンもそうじゃないかな。
戸田はみんなが真っ黒になるせいか、肌の色とかあまり意識してない気がする。きっと肌の色が何色だって、ジュリアスはジュリアスだなっていう意識しか持たないと思う。
今、孤独だったり、心を無にしていたりはしないよね。
優しいお母さんも、お兄ちゃんに追いつこうと頑張る弟もいる。
知らない人が何かを言うことがあっても。でもたくさんの人がジュリアスを支えている。大丈夫だ。ジュリアスは大丈夫。
つらい思いをしている人は、たぶん肌の色とか人と何かが違う人だけじゃない。
人から言われることに傷ついたり、人付き合いがうまくいかなかったり、重い荷物を抱えている人はたくさんいるんだと思う。
自分で自分を否定してしまう人だって、本当は自分を否定されたくない。自分の居場所が欲しいんだと思う。
過去そうであった自分も含めて。
自分に出来ることは少ないかもしれないけど、せめて自分は相手を思いやれるようになりたい。
助ける手を求めている人がいたら、いつでも差し出せるようにしたい。
支え合える手を、心を、誰もが持てるように願って止まない。